目標

気が付いたらベリアとレイが覗き込んでいた。


「あっ」

「やっと目を覚ましたね、本当に驚かされたよ!」


あれ?何故ここで寝ていたんだ?

えっと

決意表明をしてその後、あっそうだ、自分達の持ってきたゴミをどう処理するかって話になって

「俺に任せておけ」

とか言っときながら食べきれずに途中リタイアしたんだ。

我ながら情け無い。



「2人が看病してくれたのか?」

「レイさんがルイの体の中に入ってゴミを取り除いてくれたの。」

「レイが?スライムってそんなことも出来るか!

ありがとう。助かった!」

「・・・貴方相当変わってるわね」


レイによると普通の人間は亜人種に助けられても感謝しないらしい。寧ろ警戒されるのだとか。

それにスライムの為にぶっ倒れるまで体を張る人間は皆無らしい。

そのぐらいの常識は分かる。この世界の人達の反応を見ていたら薄々勘づくもんだ。

でもあの時の俺は誠意を見せたかった。2人に目に見える形で誠意を示したかった。2人に僕の覚悟を理解して欲しかったのだ。


そのお陰か、倒れる前より2人の雰囲気が柔らかい気がする。


「助けて貰ったんだ。お礼を言うのは当然だろ?

それより、ごめん。結局ゴミの処理、レイにやらせちまった。」

「いいわ。気にしないで。それよりあんな無茶はもうしないで!」


相当焦らせてしまったのかベリアも隣でコクリと頷いている。


「分かった。でも、出来るだけレイの負担は減らしたい。

もちろんベリアもだ!」


これには理由がある。

もちろん人間種じゃない彼女達は迫害の対象だ。ここでの扱いも酷いものである。そんな彼女達の負担を減らしたい思いもある。

だが、それ以上にして欲しい事がある。


「2人には負担を減らし、空いた時間は修行をしてもらいたい。」


今の実力だと何も出来ない。それは分かりきっている。

そこで修行だ。昔、剣道部の友達が言っていた。剣道は3Kだと『臭い』『汚い』『キツい』と。つまり武術とは3Kなのだ!

そう考えるとここの環境は悪くないと思う。


そして2人から修行の方針を決める為彼女達の種族の特性を聞き出した。

纏めるとこうだ。


ーーーーー


ベリア〈猫人族〉


 種族特性 

  ・暗視

    暗闇でも昼間と同等の視野の確保が可能


  ・凪

    無音での移動が可能

    手練れになると気配も完全に消せる


 種族特技

  ・狂乱

    肉体能力超向上

     向上率は個人差がある

    理性を無くし動くもの全てを攻撃する

     未熟者が使うと気絶するまで戻れなくなる



レイ〈スライム〉


 種族特性

  ・消化

    体内に取り込んだ物を何でも消化する事が可能


  ・液化

    体を液状化にする事が可能

    液化し水に同化する事で水を操ることも可能

     達人は海をも動かす事も可能と言われる。


 種族特技

  ・変化

    消化した物の特徴を体に宿す事が可能

     制御を失うと宿した特徴がランダム出現する

    本人の技量により宿せる特徴の数が変わる

     数が増えるほど制御が難しくなる


ーーーーー


どうやら種族ごとに特性と特技が有り特性は生まれた時から出来ることで鍛えれば精度が上がっていくらしい。

特技はデメリットは有り、鍛えなくては使えないが強力な効果が発揮されるらしい。


そしてこれからの予定を決めていく。


「幸い俺達はまだ子供だ。だから仕事もそこまで多くない。

だから空いている時間に修行するんだ!」


その後、各々に修行内容について話した。

2人とも人間種でない為表立って行動できない。なので諜報、暗殺に特化して貰いたいと考えた。


その為ベリアには凪の強化を重点的にし、気配を完全に消せるようになって貰う事にした。

これは人間と同じ空間で生活をする彼女にとって自衛にも繋がるので最優先事項としておいた。

それとベリアに頼む事はもう一つ、レイの為の素材集めだ。

レイはこの部屋から出られないので代わりに変化のための素材を集めるものが必要なのだ。


レイには変化の制御を完璧にして貰う事を優先して貰う。

そして制御出来る種類を増やしす。それと同時に体の一部のみの変化が出来るかも練習して貰うつもりだ。

この一部のみの変化は見た事がないが面白そうだとの事だ。


基本的なスライムの戦闘は体を鉄にして防御力を上げたり、酸にして触らせないなど体全体を変化させ戦うらしい。


こうして当面の目標を設定し修行が始まった。

俺は人間種で特技も特性もないので日々の奴隷仕事でのトレーニング、それと2人の補佐が仕事だ。

そして最後に最も重要な事を伝える。


「最後にこれだけは約束して欲しい。俺たち3人の中で遠慮は無しにしよう。これから修行とかも始まるが俺には他種族の常識が判らない。その為不快な言動をするかもしれない。そういった時は教えて欲しい!これから宜しくな!」


こうして目標の為の修行が始まった。

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転生しても奴隷だったので好きに生きたいと思います 常闇 徹 @f3401670

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