閑話 変な人間と希望
わたしはベリア。7歳。
わたしは3歳になる前人間に捕まった。
両親と森に出かけた時冒険者に出会ったのだ。
両親は見逃して欲しいと冒険者に願い出たが無視された。
「頼む。見逃してくれ娘はまだ2歳なんだ。頼む。」
「はぁ?見逃すわけねぇだろ、一度に3匹とは今日はついてるぜ!おい!ガキは殺すなよ。ガキがいるうちはこいつは本気で戦えねぇ!」
わたしの方に飛んでくる攻撃を全て受けて父は死んだ。
「おいおい。くたばってるじゃねぇか、こいつの討伐報酬は美味しく無いんだよな、」
「まぁ良いさっさと、そっちの雌とガキ捕らえて帰ろうぜ!」
恐怖で体が動かなかった。初めて見る人間の恐ろしさだった。これから自分の身に起こる耳障りな会話が他人行儀に聞こえる。
そんな中わたしを抱いて冒険者から庇ってくれている母親にしがみついている事しか出来なかった。
「娘だけはどうか見逃して下さい。」
「ホントしつこいねぇ、お前らが居ても誰も幸せにならない。だが、お前らを売り飛ばした金で俺たちが幸せになるんだ!人の為になる良い提案をしてやってるのに何が不満なんだよ?」
「・・・どうか、娘だけは、」
「あ〜めんどくせぇ。殺せ。」
「良いんですか?」
「あぁ。この母親は連れて行ってもどうせ使い物にならねぇ。ガキだけ連れて行く。」
そして母親は無抵抗のまま殺された。
最後に一言だけ残して。
「ごめんねベリア。生きて。生きる事を諦めないで。」
気が付いたら見知らぬ場所にいた人間の女と子供達しか居ない部屋だ。
両親を殺した人間。わたしも殺されるかもしれない。そう思うと怖くて近づけなかった。誰も話しかけて来ないのでわたしはずっと1人で居た。
そんな生活も1年程が経ち、1人でいられるこの生活が終わりを迎えた。ある日、大人達がいつものように扉から出て行った後、わたしよりも小さい少年が話しかけて来たのだ。
「ぼくはルイ。よろしく。君は何でいうの?」
「・・・」
わたしは人間と関わりたくない。だから無視してた。でもその少年は何度も何度も話しかけて来るのだ。
「ねぇ。君の名前教えてよ」
「友達になろうよ!」
「この耳と尻尾って本物なの?触って良い?」
あまりにもしつこいので名前だけ教えた。
「ねぇ。何で教えてくれないの?教えてよぉ、」
「・・・ベリア」
「ベリアちゃんかぁ宜しくね!僕はルイ!」
この時は鬱陶しくて変な奴としか思わなかった。
そして今日、わたしは仕事でミスをした。一箇所汚物の回収を忘れたのだ。隠しておいて明日一緒に処理しようと思ったが部屋長のバルトに見つかってしまった。そしてここに捨てて来るように命令されてしまったのだ。
わたしはここにスライムが幽閉されている事を知っていた。
スライムの特性として食べた物は何でも消化する事が出来ることも知っている。
だが、昔聞いた事があった。スライムは何でも消化できるが体内に取り込まなくてはいけない。そのため汚物やゴミなどの処理はしないと。
それはそうだろう誰も好き好んでゴミや汚物を体内に入れる者は居ない。その事を知っていたので今までゴミや汚物は以前のやり方で処理して来た。
だが、わたしのミスのせいでそれを頼まなくてはいけない。
重い足取りで階段を降りて行き彼女の前に立った。
頼まなければ、そう思うが言葉が出ない。
どうしようも無い感情が蠢く。
「っすん・・・ごめんね・・・・・」
やはり頼めなかった。
どうしたらいいのか分からなくなっていた。
「ごめんね。ホントは嫌だよね。ごめんね。」
「気にしないで人間に捕まった私がドジなんだから
それに私がそれ消化しないとあんたが罰受けるのよ?
私は種族の特性で大丈夫だから気にしないで。」
「でも出来ることとやりたく無い事は違うでしょ。
いくら消化出来るとしてもこんなゴミとかは食べたく無いでしょ?」
「何で、こんな最底辺で他人のために涙を流せる?何故他人を気遣うことが出来る?」
気が付かなかった。背後からいきなり声を掛けられ振り返るとそこにいたのはあの変な少年だった。
「僕は貴方達に危害を加える気もないし今見た事は他言しない。純粋に知りたいんだ。なぜこんな環境でも貴方達の心は醜くならない?」
言ってる意味が分からなかった。わたしは醜い。バルトに脅されスライムである彼女に嫌な事を頼もうとしていたのだから。だが少年は相変わらず1人で話し続ける。
「・・・僕は一度死んだ事がある。・・・。」
衝撃的だった。俄には信じられない。だがこの少年のわたし達への反応やあの部屋でわたしに構いまくって来た理由には納得がいってしまった。
その後、もっと信じられない事を少年は言い出した。
人間を滅ぼす?出来るわけがない。でも少年の話を聞いて悪くないと思ってしまった。
そう、わたしのような子が今後生まれないように、わたし達のような気持ちを誰も味合わなくて済むように。
「俺はルイ!一緒にこの理不尽な世界を変えないか?」
「私はレイよ。助かる可能性があるなら乗るわ」
「・・・ベリア。人間はお父さんとお母さんを殺した。
笑いながらトドメを刺したの。許せない。」
「そんな思いをする者がもう出ないように俺たちが変えるんだ!」
少年の言う様にここは底辺だここより下は無い。なら挑戦してみよう。そう決意した。
その後ルイはわたしの持っていたゴミと彼が持って来たゴミを食べ始めた。やっぱり変な奴だ。
レイさんも驚いている。それはそうだろう。
半分くらい食べた辺りで少年が倒れた。
人間がそんなものを食べたらそうなるのは当たり前だ。
レイさんが慌てて彼の体内に入ってお腹の中のゴミを全部処理してくれたお陰で何ともなくて済んだが焦った。
そんな彼について行っても大丈夫なんだろうか?
ふとそんな事を思ったが同時にそんなルイだから信用する気になったのかも知れないと思えた。
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