幸せの醜い渡り鳥 エピローグ

 目覚めてから、長い時が経った。何度か季節は巡り、頃は4月。もうすっかり暖かくなった。

 今の私はどんな顔になっているのかと、鏡を見る。今日の私も可愛らしい。

 え?

 何故自分自身でそんなことを言うのかって?自画自賛なんじゃないかって?

 それでいいじゃないか。

 だって、私は幸せに向かって歩くんだから。

 時には振り返ることも大事。でも、後ろ向きになってどうするの?それは停滞じゃないか。だから、ちょっとでも前向きに私は進む。

 それが汚くって醜くってもいい。

 そう約束したんだから。

 今日から新学期。ずいぶんと久しぶりの学校だ。上手くやれるだろうか。

 うん! やれる!

 最初はから回っちゃうかもしれない。だけど、それでも笑っていよう。

 そう私はお父さんが見送る中、我が家を飛び出す。

 カラフルな街並み。今日もキラキラと輝いている。こんな世界でも、こうも美しく見えるものなのかと少し感心を改めて覚える。

 晴れ渡った空を見上げてみる。その眩しさに目を細めた。すると、一つ、何かが横切った。

 鳥だ。渡り鳥だ。

 真っ白で美しい……というわけでもなく、ほんの少し褪せて、灰色混じった翼。少しボロボロにも見える。

 だけど、何故だか元気が湧いて出てきた。ほんのちょっぴりだけ、胸中が明るくなる。それに、ずいぶんと切なくもなる。

 そんな懐かしさの中、私は歩き始める。

 こっからは長い道のりだ。荒れ果てた茨の道。歩くだけでも、足の裏がボロボロになってしまうかもしれない。だけど、進む

 私に幸せを分けてくれたあの人と。大好きなおにいちゃんと。

 些細な約束をした。

 私は一歩一歩苦しみながら、着実に歩いていこうと思う。




 いつか、もらった幸せを返せるように…………




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ワタリドリ @tsushimajima

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