第12話

「あら。このような所に居ましたの…?」

背後から声がした。透き通った凛とした声。

その声は聞き覚えのないものだった。踊り子隊のメンバーではない。

「誰、ですか〜?」

振り向くと、一人の少女が立っていた。透き通るような白い肌。それと対象的な艷やかな黒髪。この世のものとは思えないほど美しい少女だ。最も特徴的なのは、彼女の小さな顔に鎮座する眼だった。確かにオッドアイではあった。だが、そんなことではない。右目は月のような金色、左目は無機的な銀色。

彼女の桜色の唇が開く。

「それは…秘密ですわ。」

「へ…?」

予想外の答えにたじろぐ。

「でも、敵ではない、ですわよ?あらあら、悲しいですわ―そんなに構えないでくださいまし。」

「そんなの無理ですよ〜。」

いつでも攻撃できるように構える。

「あまり、傷つけたくはないのですけれど。」

そう言って、少女は呆れたようにため息をつき、腕を高く掲げた。

「では、しましょうか。」


少女はただ眠っていた。否、眠っていた、というのは語弊があるだろうか。意識はあったのだから。少女はふわふわしたところにいた。心地がよかった。だが、それと同時にとてつもない不安が押し寄せてくる。上も下も右も左も分からない空間で、自分を見失いそうで怖かった。

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踊り娘隊出動中! るり @k197

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