第16話⁂身代わり?⁂


 ギリシャ神話の狩人オリオンにちなんだ✶*。・

 冬の夜空のオリオン座。

 三つ星かがやく雄大な姿をしたオリオンが、空の東にのぼる✶*✰。

 ✶ ✶ ✶そんな1966年12月初旬の万里子お嬢様10歳の時の事。


 やっと結婚をして幸せに暮らしていた初美と娘の万里子お嬢様なのだが、ある日思いも寄らない事件に巻き込まれる事となる。

 それはやがて取り返しのつかない事態に発展していく。


 まさに天から地獄に突き落とされるとはこの事。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 バラ色の曇と*。・

 紫にかすむ朝焼けの富士山は

 神秘の世界にいざなわれるような*。 ☆*・何とも美しい。*・


 1973年5月某日、緑は希望を胸に東京駅に降り立った。


 九州公演の時に、大物アーティスト永田亮のコンサートで偶然にもスカウトされて、メジャーデビューが決まった緑(静子)なのだが、この僅か1年余りの間には想像を絶する出来事が起こっていた。


 実は永田のコンサートの常連だった、あのSS席の万里子お嬢様が、1973年5月7日のめぐみちゃん殺害事件以来、ぷっつりとコンサートに現れなくなった。


 そこには恐ろしい陰謀が隠されている。

こんな恐ろしい事件が起ころうとは誰が想像できただろうか?


 まだ仲が良かった頃の事。

 色々紆余曲折の有った3人組だが、球界一のスタ―選手木村直樹も交えての関係は深まるばかり。


 ある日、静子は万里子お嬢様に誘われて、万里子お嬢様宅に足を進めている。

 あいにくその日は、めぐみちゃんはいない。


 実は密かに万里子お嬢様とめぐみちゃんの間には、直樹を巡っての女の戦いが勃発していた。

 その為、最近はめぐみちゃんとは距離を置いている万里子お嬢様。


 そんな事が起こっているなど、全く知らない静子は少し寂しさを感じている。

 いつもの賑やかなめぐみちゃんが居ない事に不満を感じながらも、万里子お嬢様のお部屋の2階に上がって行った。


 すると万里子お嬢様の部屋に入るや否や、万里子お嬢様が慌てた様子で

「さあ入って入って」


「たつさん、私達話があるから買い物にでも出て頂戴!」


 お茶を運んで来た、お手伝いのたつさんを厄介払いするや否や、静子を奥の部屋に招き入れた万里子お嬢様。


 そして厳重に四隅を絞めて、いつもの温和なのんびりとしたお嬢様とはまるで別人のように、真剣な面持ちで話し出した。


「…あの~?あの~?・・大切な話があるのよ……あのね!・・こんなこと言っちゃ本当に失礼な話なのだけれども……?あなただって…あそこの住人だって事・・隠したいでしょう?…それから、あなただってメジャーデビューの話も来ている事だし、気分一新、全くの別人に生まれ変わるのも良いんじゃないの~?……勿論タダでっていう訳じゃない無いわよ!・・タップリ褒美も弾むわよ!……お互いの為に、申し分のない話だと思うのよ!」


「…急にそんなこと言われても……?それで‥誰と…誰と入れ替わるのよ?」


「それが日本でも有数の不動産会社のお嬢様と、入れ替わって欲しいのよ……私もあなたを見た時はびっくりしたのよ!‥余りにも瓜二つなので?」


「…そんな事言われても……私?・・ちょっと考えさせて?」


 静子もヨクヨク考えて……。

 そこで相談したのが、母親の町子ではなく父親の忠なのだ。


 何故母親に相談しなかったかって?

 それは一にも二にも自分の事で精一杯の母親で、静子の話を聞き入れてくれるような人ではないからなのだ。


 そこで相談したのが父親の忠なのだが、当然父親だという事は全く知らないが、いつもどんな時も困った時にふっと現れる命の恩人、この人を置いて誰に相談出来ましょうか。


 こうして父忠に、この話を打ち明けた静子なのだが、この決断はとんでもない結末を迎える事となる。



 こうして静子は日本有数の不動産会社社長令嬢今井小百合となった。



















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