第31話 緑の巨体

ダンジョンの奥へと進んでいくと、大きな門に到達した。

ここに来るまでにウォリアー達を多数倒したため、レベルが上がり、俺は16、バンは14、シヨコは15に上がっていた。

ミコブは上がらなかった、レベルが上がるとその分強いモンスターを倒さないとレベルが上がり難いようなので、俺たちの中で20レベルと一番高いミコブはその分レベルアップが遅いのだろう、ゴブリン族の特性でレベルアップが速いというのがあるので、人族の俺達と比べれば速いと言えるが。


道中、横道が2か所あったが、そちらは行き止まりで、宝箱が置いてあり

中身はHP回復ポーション2個と、解毒剤+MP回復ポーションだった。

前の階のMPポーションはシヨコが受け取っていたので、今回の物はミコブがもらい、HPポーションは俺とバン、シヨコで分け余った解毒剤はとりあえずミコブが受け取る事になった。

さて、横道に階段がなく、今までダンジョン内で見た事が無い大きな門があるという事は、つまり・・・


「ボス部屋だナ」


「まぁボスだろうな」


と、ミコブとバンが口をそろえて言う。

シヨコは無言だったが同じ考えの様で頷いていた。

門の前で少し休憩し、多少減っていたHPを回復する。

全員が回復し、準備ができた所で俺を先頭に門の中に突入する事になった。


「よし!行きましょう!」


「オウ!どんな奴がでてくっかナ!」


「何が出てこようと、ぶった切ってやるぜ!」


「回復は任せてくださいね・・・」


大きな門を押し開く、重そうな見た目に反し、力を入れずともゆっくりと開いていく。

中は広間になっていて、薄暗く、奥が見えない。

俺たち全員が広間に入ると、門がゆっくりと閉まる。

どうやら一度入ると戻れなくなるようだ。

すると広間の壁にかかっていた松明がボッボッボッと灯っていき、すべて灯り終えると広間が明るくなる、と同時に奥からモンスターが現れた!


緑色をした筋肉に包まれた巨体、盾と曲刀を手に持ち、毛皮製のような装備を纏ったそいつの名は[ビッグ・ゴブリン]

普通のゴブリンとは違い、名前の通り大きく、筋肉に包まれていて力強い印象だ。


「グギャギャギャァァ!!」


ビッグ・ゴブリンが雄叫びを上げる!


「来い!デカブツ!」


負けじと俺もアピールをし、戦闘が開始される!

ビッグ・ゴブリンがドスンドスンとこちらに向かってきて曲刀を振り下ろす!

大丈夫だ!そんなに素早くはない!

俺は余裕を持って避けると、バスタードソードで切りつける!

ヒット!

・・・・が、あまり良い手応えではない!

緑の肌が露出した腕を切りつけたのだが、さすがボスモンスター、そもそもの防御力が高いようだ。

ビッグ・ゴブリンは振り下ろした曲刀をそのまま横に凪いで俺に攻撃してくる!

これは・・・避けられないか!ビッグ・ゴブリンは巨体ゆえにリーチがある!

鉄盾でカード!

ガンッという鈍い音ともに、後ろに吹き飛ばされる!踏ん張って体勢は崩さなかったが、ガード越しにHPが削られた!そしてビッグ・ゴブリンは追撃しようと巨体を揺らしながらこちらへ向かってくる!

ダメージを受けたものの、アピールに加えて攻撃を一発当てたので、ヘイトは稼げたはずだ!ビッグ・ゴブリンの動きは鈍いので、回避に徹すれば攻撃を受ける事も無いだろう!俺は構えながらポーションホルダーからHP回復ポーションを取り出し使用してHPを回復する。

ヒーラーのシヨコが居るのにポーションを使う理由は、回復魔法を使用するとヘイトを多く稼いでしまうからだ、これは道中のウォリアー達との戦闘で判明した。

なので、事前に話し合ってヘイトを十分に稼いでいない戦闘開始序盤はヘイトが移らないように、回復魔法をできるだけ温存する事にしていた。

勿論、危険な時は俺が叫ぶなり、シヨコの判断で使用する事にはなっているが、今回は大丈夫だろう。

俺の様子を見ていた3人が一斉に攻撃に転じる。


「オラァ!くらいやがれ!」


「いきますわ!ハッ!」


「[闇打]!削レ削レ!」


3人から攻撃を受けたビッグ・ゴブリンだが、ビクともしていない!?

再び俺に曲刀を振り下ろすビッグ・ゴブリン。


「ハハハッ!当たらないよ!」


「グギャギャアアア!!」


回避と同時に一閃し攻撃を加える、すぐに鉄盾を構えると予想通り薙ぎ払い攻撃が来た!


「同じ手は効かないよ![シールドチャージ]!」


ビッグ・ゴブリンの曲刀と、俺が構え体重を乗せた鉄盾がぶつかり合う!

本体にダメージ入っていなそうだが、曲刀を弾く事に成功した!

俺のダメージは先程ガードした時に比べてかなり軽減されている!

すぐに攻撃に移り、バスタードソードを一閃する!

ヒット!いや、先程よりさらに手応えが無い・・・これは!

俺の攻撃はビッグ・ゴブリンの盾に防がれていた!

ただでさえタフそうなのに、防御力も高い!


「グギャギャギャアアアア!」


「うぉ!?っと!危ない・・!」


ビッグ・ゴブリンが盾で攻撃を防いだ後、構えたままこちらに体当たりしてきた!

瞬時に横へ飛び込み攻撃を回避したが、ダメージは受けなかったものの体勢がやや崩れている!速く整えなければ、間に合うか・・!?


「せいやぁぁあ!!」


「・・・ハッ!」


そこへバンとシヨコの攻撃がヒット!

ビッグ・ゴブリンは気にもせずこちらに向かってくる!


「やらせねェ![闇縛]!」


黒い糸がビッグ・ゴブリンに絡みつくが、すぐに弾け飛んだ!

そして俺に向かって再び曲刀を振り下ろす!

体勢を整えた俺はそれを回避しようとする!


「グギャギャギャ!」


「うぉっ・・・と!」


危ない、本当にギリギリだったが上手く回避できた。

ミコブの[闇縛]が無かったら間に合わなかったぐらいだ!

構えたままバックステップで後ろに飛んで、ビッグ・ゴブリンと少し距離を取った。

無理をする必要は無い!時間はかかるかも知れないが、回避しつつヘイトを取り続けていれば勝てる!先程と同じ要領でビッグ・ゴブリンの攻撃を回避し、こちらの攻撃を当てる、ビッグゴブリンのシールドチャージも来ると分かっていれば回避できた!

俺が攻撃を当てるたびに3人の仲間が総攻撃をし、ビッグ・ゴブリンのHPを削っていく!ヘイトが移る事も、俺が大ダメージを受ける事も無く戦闘が続く。

しばらく繰り返したのち、ビッグ・ゴブリンの様子が変わった。


「グギャ・・・ギャ・・・ギャギャ!」


ゲームだとHPが減るとパワーアップする敵が良くいるが、今回はその逆で、ビッグ・ゴブリンの動きが鈍くなり、攻撃が大振りになった!

いくらタフだとはいえ、4人の攻撃を受け続ければそうなるのも当然と言えるか。


「ハハハッ!遅い!」


「オラオラ!さっさとくたばりな!」


俺がバスタードソードで切りつけ、バンが鉄刀で連撃を加える!


「グギャ・・・・ギャギャ!!!」


「うぉっしまった!ぐえっ!」


不意にヘイトがバンに移り、ビッグ・ゴブリンのシールドチャージがバンに直撃する!バンは大きく吹っ飛ばされ、倒れてしまった!が、幸い死んではおらず、起き上がろうとしている様子だ!


「な・・!バン!」


「ぐっ・・・やりすぎたかっ」


「・・・[光癒]!」


「ジン!ヘイトを頼む![闇縛]!」


ミコブが叫ぶ前に一撃を加えた俺は闇縛の一瞬の隙をついてさらにもう一撃加え、すぐに回避行動を取る!直後に俺の居た場所が曲刀で薙ぎ払われる!

よし、ヘイトは取った!ビッグ・ゴブリンはこちらへ向いている!


「グ・・・ギャギャギャアアアア!」


ドシン!ドシン!と音を立てながら、手に持った曲刀をブンブンと振り回しビッグ・ゴブリンの緑の巨体が俺に迫る!

追い詰められた末の悪あがきか?出鱈目に振るわれる曲刀をバックステップで躱し続ける。

回避する事は余裕だが、攻撃するのは危険だ!とはいえ、ここで俺が無理に攻撃する必要等無い。

なぜならお前とは違って俺には・・・仲間がいるからな!!

壁に追い詰められないようにだけ気を付けながら回避に徹して時間を稼ぐ。


「ジン!待たせた!今行くぞ!」


「アリャ大分弱ってるんだナ!一気に畳みかけるゾ!」


「ジンさん!今いきますわ!」


「みんな!・・・頼みます!」


仲間達が駆け付け、1発づつ攻撃を加えていく!

ビッグ・ゴブリンはそれでも倒れなかった、が・・・

顔を歪め、よたよたとこちらに歩いてくる様は満身創痍といった感じだ。

向かい合う俺とビッグ・ゴブリン。


「・・・グ、グギャァァァアアアアア!!!」


「ジン!」「やっちまエ!ジン!」「ジンさん!」


「ビッグ・ゴブリン・・・・これで、終わりだぁぁあああ!」


ビッグ・ゴブリンが雄叫びを上げ最後の力を振り絞り、曲刀を振り下ろす!

その攻撃を回避してカウンターを決めればそれで終わりだ。

・・・・・いや・・・!!

俺はビッグ・ゴブリンに向かって正面から突っ込んで行った!

ビッグ・ゴブリンが曲刀を振り下ろし終えるのが俺が攻撃するより速ければ、俺は大ダメージを負うだろう・・・だが!!

最後の最後で慎重さを捨て、真っ向勝負に出る!

それが、4対1で戦ったビッグ・ゴブリンへのせめてもの贐だ!

一瞬の後、勝敗が決まる!




ザンッ!




一閃の斬音が広間に響き渡る!


一瞬の間を置き


俺の肩まで迫った曲刀を持っていたビッグ・ゴブリンの巨体が、バスタードソードで切り捨てられ消滅した。


「ふう・・・よし!」


「ひゅー!やるじゃねぇカ!」「フハハハ!私達の勝利だ!」「ジンさん・・・素敵ですわ・・・」


駆け寄る仲間達と勝利の喜びを分かち合う。

初めてのボス戦は誰も死ぬ事なく、大勝利だ!

バンにヘイトが移ってしまったという反省点があるが、今は勝利の喜びを噛みしめたい!俺はミコブとハイタッチし、バンと拳をぶつけ合い、シヨコと・・・握手しようとしたら両手で手を握られた!?

ひとしきりボス戦についてみんながそれぞれ思い思いに話した後、ダンジョンの攻略はまだ終わってないと、4人そろって奥の部屋へ行く。

ダンジョンに入った後にヘルプに追加された内容によれば、初めて攻略したダンジョンでは一人一つ攻略報酬として宝箱を手に入れる事が出来るらしい。


奥の部屋の真ん中には台座があり、その上に宝箱が一つ。

台座の前に宝箱が4つ並んでいた。

台座の上の物が通常のダンジョンクリア報酬だろう。

これはダンジョンをクリアするごとに手に入り、中身はそのダンジョンに見合った品がランダムで入っているそうだ。

台座の前に並ぶ宝箱は、初攻略報酬であり、中身は少し良い品から、その人に見合った物がランダムに選ばれるらしい。

これ以外にも世界で初めてそのダンジョンをクリアした人にだけ出る特別な報酬もあるらしい。

このダンジョンはすでに別の人によって攻略済みなので、それは出なかったが。


「グギャ!オデはこれにするゾ!」


「ハハハ、ミコブ、どれを選んでも中身は変わらないんじゃない?」


「細かいことは気にすんナ!気分だヨ気分!グギャギャ」


ミコブが抜け駆けし、一番右の宝箱の前へ行く


「なら私はこれにするか!」


「ちょ、バンまで!?」


「フハハ!速いもの勝ちだぞジン!」


バンもそれに習うように進んでいき、一番左の宝箱の前へ行った。


「ジンさん、お先にどうぞ・・・」


「あ、ど、どうも?じゃあこれで・・・」


「ではわたくしはこれですね」


俺はミコブの隣の宝箱、その隣にシヨコが並ぶ、そして

4人で一斉に宝箱を開く!


さて何が入っているかな!・・・・





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シスター・マイロード 妖精狂 @fairycrazy

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