第6話

 私のアシストからの長谷部さんのゴール。

 そこを皮切りに私のプレーは光った。

 

 トーナメントを上がっていけば、相手も強くなり、当然ピンチもたくさんあったけれど、私は頭を使い、身体を張ったプレーでピンチをたくさん救った。


「あっ、田島。またエゴサーチしてる」


「えへへっ」


 長谷部にスマホを弄っているのを見つかってしまった。


「なんか・・・私のこと・・・書いてある?」


 長谷部は不安そうな顔をして私を見る。

 私の活躍と反比例して、疲れが出てきた長谷部はあのプレー以降ゴールネットを揺らしていない。


「うん、あるよ」


 私は正直に答える。


「どんな?」


「がんばれーだって」


「うう~~~っ」


 しょげる長谷部。


「まっ、長谷部は必要な存在だから。それまで守ってあげる」


「そういうのは・・・男の子に言われたいし・・・」


 照れた長谷部だったけれど、少しは出たようだ。


「いこっ、一番高いとこっ」


「ふん、田島のくせに、言うようになったじゃん」





―――決勝戦





 コートの中で、座りながら祈っていた。


 チャンスはわずかだけれど、あった。

 けれど、活かすことができなかった。


 でも、長谷部が言うように私たちはチームメイトなんだ。

 もし、集中力が切れたとしても次のプレーで頑張ればいい。

 それでも、ダメなら次の試合で頑張ればいい。

 それでも、それでも、ダメならどこかで頑張ればいい。


 私たちはたくさんあったピンチをみんなで守った。

 延長でも決着がつかず、得点は0対0。




―――最後のPK。




 相手の5球目を日本の守護神。天堂さんが防いでくれた。

 このキックを決めれば、私たちの勝ち。

 託されたのは、急に不調になってしまったエースストライカーの長谷部さん。


 ゆっくりと長谷部が助走をつけて、置いてあるボールへと向かう。

 そのボールの向かう先は――――


「ゴオオオオオオオオオオルーーーーッ!!!」


 一番輝く場所だ。


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【完結】視聴率50%のサッカー世界大会初戦で5分でオウンゴールをしてしもうた 西東友一 @sanadayoshitune

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