第17話
睦さんから体を離し、顔を凝視した。
「んっ?意味が分からない?」
「うん、全く。皆無」
ホントに何も浮かばない。
「あの“羽ちゃん”ですよ」
嫌味っぽく睦さんが言った。
「、、羽美ちゃん⁈」
無言で睦さんはうなづいた。
羽美ちゃんが計算女???
睦さんと羽美ちゃん、俺、、
三つが重なるのは“あの日”の事しかない。
しかし、何が計画だと言うのか、、
「えっ?何が計算……?」
睦さんが深いため息をついた。
「『お店』はどこに行きましたか?」
「えっ、、、、」
「私が行きたかったとこね。」
「でも、それは羽美ちゃんは知らないでしょ、睦さんが行きたがってるなんて!それに偶然彼女も行きたかっただけで、何が計算⁈」
「誰かから聞いたんでしょ、私が行きたがって福良さんが断ってさーとか。あの時、みんないたし。それにあのお店、凄く分かりにくいトコにあったでしょ?あんなん偶然には見つからないし、そもそもネットで検索してもヒットしないし。食にかなり興味ある子なの?」
「いや、、そんな事ない、、」
前に“自分はお店とか調べたり苦手だし、食べれれば何でも良い”と乾達と話しているのを聞いた事がある。
「まぁ、よく調べたわ。そこは褒めよう」
睦さんは、腕を組み、うなづきながら言った。
「、、睦さんは、“当て付け”だって言いたいの?」
「そりゃそうでしょ!わざわざ“私が行く”って分かって行くんだから!」
「んっ⁈?」
次第に酔いが覚めてきた。
「もしかして、あの日電話したの、睦さん?」
「そう」
あの日、普段は出ない羽美ちゃんが電話に出た。
ディスプレイを見た上で出てる様子から、社内の人だろうと思った。「十五人です」っと彼女は返答し、電話を切った後、“誰?”と聞いたら“鶴崎さんです”と淀みなく答えた。
“何の人数だろう”とは思ったが、スッと答えたし、何か引っかかったが、すぐ仕事に戻ってしまった。
「食材買うのに、何人くらい出社してるかなーって思って。」
「その“十五人”か、、」
引っかかっていた事が解けた。
「代わってもらおうかなーって思ったけど、人数聞ければいいかなって。」
それで食事になんて誘ってきた事ないのに、急に誘ってきたのか。
何となく引っかかっていた二つ目が解けた。
「まぁ、それもだけど、、それより、、ね、、ホテルに行くとはね、、」
また深いため息を睦さんはついた。
「急な雨だったんだ‼︎ゲリラ豪雨‼︎オフィスまで距離もあったし‼︎」
俺は少しムッとしながら言った。
仕向けられたわけじゃない。
仕方なかった。
「福良君、、ゲリラ豪雨なんて天気アプリとか見れば、ピンポイントで知らせてくれるでしょ。精度も上がって、事前に知らせてくれるんだから便利なもんね」
嫌味っぽく顔を覗き込まれた。
そう言われると合点がいく、、
あの変な紅茶の飲み方。
あれは、、時間調整か、、
また引っかかっていたものが解けた。
三つ目の引っかかりが解け、計算なのかもしれないと思い始めた。
「……」
睦さんは更に詰め寄る。
「なんでホテル街に?オフィスとは逆方向でしょ?」
「それは、、お店を出たら、“女の子がみんな好きそうなお店があるから”って言われて……」
オフィスとは逆方向へ向かった。
しかし、歩いても歩いても女の子が好きそうなお店は出てこないし、むしろ真逆というくらいの薄暗い夜道になっていっていた。
そしたら雨が……
「“ホテルに行こう”ってなるためでしょ。」
「……」
全ての不自然が合致した。
しかし、新たな不思議が浮かび上がった。
「なんで睦さんは分かったの?」
これは最大の不思議だ。
その場に居たわけでもなく、羽美ちゃんと話したこともない。
行動から思考まで、、詳細に、、
なぜ分かる⁈
多様な考えが頭を巡る中で一つの考えがパッと浮かび上がった。
「まさか、、そんな、、わけないよね、、」
半信半疑ではあった。
いや、“半疑”にも満たない。
“半信微疑”くらいの気持ちで口に出してみた。
しかし、睦さんの顔を見ると“微疑”が一気に吹っ飛ばされた。
睦さんはニヤッと笑いながら手を見せてきたのだ。
「マジで⁈まさか⁈マジなの⁈」
「マ・ジ!」
得意げに手をヒラヒラさせている。
「あの時の握手⁈ブンブンしながらの⁈そんな全部??あんな短時間に⁈⁈」
「私も初めてだったよ、あんなん」
「どんな感じだったの?どんな風に??」
俺の興味は完全に彼女の“手レパシー”でいっぱいになった。
「“羽美ちゃん”とやらが、私の手をぎゅっとした瞬間に“この人が…へぇ…別に可愛いわけじゃないじゃん”って伝わってきて、なに?って思ってコッチから念をおくるみたいにギュッとしたら、思考と行動が見えたの。」
凄い、、そんな事が、、⁈
現実に、目の前に、
そんな事が出来る人がいる。
信じられないが、本当な気がしてならない。
なんだかワクワクした。
完全に酒は抜け、気付けば鳥の鳴き声が聞こえてきている。
あ、、そうだった。
ここに来たのは夜中の三時だったから、
もう朝が近いのか、、
‼︎
この件も詳しく聞きたいけど、睦さんにはまだ聞きたい事があるんだった‼︎
“何で夜中に⁈”
“何でオフィスに⁈”
“何で彼女いたんですね?”って、、??
妄想小説 Lanp @koButa87
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