第16話

「クイズ、謎解き監修の福良さん入られました‼︎」

「よろしくお願いします」

拍手で出迎えられ、なんとも気恥ずかしい……。ぺこぺこしながら、スタジオに入った。

「福良!」

「あっ!健さん!」

「久しぶり!今回、よろしくねー!マジ気合い入ってるから、コレ‼︎」

「ふふふ、だと思ったー。謎解きでドラマとかって斬新だねー」


謎解きドラマ――この謎解きやクイズの監修を依頼された。

収録ではない、Liveで謎解きをしながらドラマも展開していく。奇抜でありながら、斬新且つ地上波では難しいがさすがNetflix……といった感じ。


よかった、、オフィスでの仕事がしばらくなくて。。


この撮影の為、一ヶ月はオフィスには行けない。

最初は断ろうかとも考えた。仕事もみんなに負担がかかるし、撮影も参加できないし、、、、オフィスに行けなくなるし。

しかし、健さんからの猛アピールと伊沢が監督さんと知り合いらしく『福良さん!頼む!』と懇願され、受ける事になった。

今は猛プッシュしてくれた二人に感謝だな……


毎日頭をフル回転させた。

今までとは違う雰囲気、いつもと違う仕事仲間


仕事に集中でき、他の事を考える時間なんてなかった。今の俺にはかなり好都合な仕事だった。


目まぐるしいが、刺激的で楽しい毎日だった。




「はい‼︎OK!お疲れ様でしたー‼︎」


「一ヶ月お疲れ様ー!」

俺は健さんに駆け寄った。

「お疲れ‼︎いやー終わっちゃったー。まだ全然いけるんだけどなぁ、、最後まで楽しかったーー‼︎最高!全部楽しかったわ、ありがとう福良!」

「こちらこそ!めちゃくちゃ楽しかったねー!」

心からの言葉だった。

あっという間の一ヶ月だった。

視聴者数は鰻登りで、ネットではすでに“次回決定⁈”と騒がれている。


「福良さん、お疲れ様。一ヶ月間、ありがとうね。またよろしくね!」

「こちらこそありがとうございました。“また”って、、もう次決まってるんですか?」

「こんな騒がれたらやるっきゃないでしょ!」

ご機嫌なプロデューサーさんやスタッフさんと別れを惜しみながら挨拶した。

雰囲気も最高だった。


「打ち上げ、福良も行くでしょ?」

「もちろん‼︎」

打ち上げはお互いの褒め合いから始まり、時間が経つにつれ、次回作の話になっていき、会話が止まらなかった。二次会まで参加し、さすがに三次会は断り、“また次回な‼︎”と最後まで笑顔で終わった。


喋りが忙しく、あまりお酒は飲まなかったが、久しぶりにお酒を飲んだ為、少しフラつく。


フラつきながら帰路に向かっているつもりが、気づけばオフィスビル前に着いた。


一ヶ月もオフィスに行かないなんてなかったから、体が欲していたのかもしれない。

たった一ヶ月、されど一か月。


“ただいま”

心の中でそう呟き、エントランスに入った。


オフィス入り口の暗証番号を入力した。

あれ?番号変えた??


そんなわけないないよな、、、

ドアが開かない。


おかしいな……


もう――――入力しようとすると、ドアが開いた。


「五回で警報鳴るんだから、気をつけてよ」


「……」


「入らないの?」


「……入り……ます」


睦さんだった。

夢?


今、夜中三時、、

オフィス、、

えっ?どうゆう…


睦さんの後を歩き、編集室に入った。睦さんはいつも座っているデスクに座った。




「…ねぇ、、何かしにきたんでしょ?なんでドアの前にずっと立ってるの?」


「えっ、、あぁ……――」


何しに来たんだっけ、、

いやいや、そんなんより今三時だし!

そもそも、もう来ないって……

もう会えないって思って……


「えっ?ちょっ……どうしたの⁈⁈」

睦さんが慌てて駆け寄り、俺の目から流れたものを拭いてくれた。


俺は彼女を抱きしめた。


彼女は抵抗することなく、俺の腰に手を回した。



「私の事、“無防備すぎる”って言ったけど、福良さんの方だと思う。あぁ……無防備ってか、無自覚?無頓着?無観客??」

「無観客は絶対関係ないでしょ」

思わず笑ってしまった。


「……とにかく!あんな計算女にまんまとやられてさ!」


「……んっ?」


睦さんの言ってる意味が分からなかった。

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