第178話餅まゐらせたまふことども果てて、

餅まゐらせたまふことども果てて、御台などまかでて、廂の御簾上ぐるきはに、上の女房は御帳の西面の昼の御座に、おし重ねたるやうにて並みゐたり。三位をはじめて典侍たちもあまた参れり。

 宮の人びとは、若人は長押の下、東の廂の南の障子放ちて、御簾かけたるに、上臈はゐたり。御帳の東のはざま、ただすこしあるに、大納言の君、小少将の君ゐたまへる所に、たづねゆきて見る。


※餅まゐらせたまふこと:五十日の祝いの儀式。乳児の口に餅を含ませ、健康と長寿を祈る。この日は、一条の帝が行った。

※御台」親王の御膳。



お餅を宮様のお口に含ませ差し上げ、健康と長寿を祈る儀式が終わりましたので、御前をお下げしての祝宴の始まりとなります。

廂の御簾が巻き上げられ、内裏の女房達は御帳台の西側の昼の御座に移られ、密着して並ばれます。橘の三位をはじめとして、典侍たちも多く参上されています。

さて、中宮付の女房達は、若い人たちは長押の下座、上臈たちは東の廂、南側の障子を外して御簾をかけた場所に座ります。母屋の上、御帳台と東廂の間の実に狭い場所に、大納言と小少将の君が座っています。私(紫式部)は、その二人を探して、仲間に加えてもらい、祝宴を眺めることといたしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る