第137話さるは、宮の御心あかぬところなく(5)斎院と中宮御所の女房の違いについて
かならず、人の立ち寄り、はかなきいらへをせむからに、にくいことをひき出でむぞあやしき。いとようさてもありぬべきことなり。これを、人の心ありがたしとは言ふにはべるめり。などかかならずしも、面にくくひき入りたらむがかしこからむ。また、などてひたたけてさまよひさし出づべきぞ。よきほどに、折々のありさまにしたがひて、用ゐむことのいとかたきなるべし。
殿上人たちが、中宮御所に来られた際に、簡単な事務的な対応をする、そんな場合に、女房たちが問題となるような恥ずかしい対応をしてしまうのは、本当に困ってしまいます。そもそも、その対応が仕事なのですから、できて当たり前なのです。
(このような実態から)(容姿や家柄は立派でも)(中宮御所の女房は)「女房としての心構えに難がある」と噂されてしまうのでしょう。
(特にお年を召した上臈女房たちのように)、上品を気取り、応対には出ないことを旨にしていることなどを、賢いとは必ずしも思えないのです。
それとは逆に、無駄に何の考えもなく、人前に出ても、ほめられることでは、ありません。
適宜適切に、時々の状況に応じて心配りをする(のが大切とは思いますが)、そうするのは、やはり(今の中宮御所の女房たちでは)難しいことなのでしょう。
要するに、上品ぶって、接客の基本を身に付けようともしなかった古くからの上臈女房の批判になる。
何の考えもなく、人前に出て、手痛い失敗をして、中宮様にも、実家にも恥をかかせたくない。
そうならないためには、何もしないのが、ベスト。(それ以外は、考えない)
最後の文の曖昧さは、紫式部の呆れと諦めが同居した、と解した。
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