第135話さるは、宮の御心あかぬところなく(3)斎院と中宮御所の女房の違いについて

今はやうやうおとなびさせたまふままに、世のあべきさま、人の心の良きも悪しきも、過ぎたるも後れたるも、みな御覧じ知りて、この宮わたりのことを、殿上人もなにも目馴れて、ことにをかしきことなしと思ひ言ふべかめりと、みな知ろしめいたり。さりとて、心にくくもありはてず、とりはづせば、いとあはつけいことも出で来るものから、情けなく引き入りたる、かうしてもあらなむとおぼしのたまはすれど、そのならひ直りがたく、また今やうの君達といふもの、たふるるかたにて、あるかぎりみなまめ人なり。


今は、中宮様も少しずつ大人びていらっしゃいますので、世間のあるべき姿、人の心の良し悪しも、出過ぎてしまうことや、不足なことも、全てご理解なされ、この中宮御所のことを、殿上人も誰も彼もが見慣れすぎてしまい、格別興味を引くようなことがない場所と、思ったり噂をしていることまで、全てご存知です。

しかし、そうだからと言って、この場所は奥ゆかしいとか風流だけでは済まされませんし、下手に習慣を緩めると、ひどく軽薄なよろしくない事も起きてしまうので、(それを考えて)風情も何もなく奥に籠もっているお嬢様方に対して、中宮様は「今少し、このように」とのお気持ちを、時には口に出しておっしゃられることもあるのですが、なかなか、今までの習慣など、変わる物ではないのです。

また、今風の若君たちも、この中宮御所の雰囲気におとなしく従うばかりで、なかなか真面目そのものなのです。


中宮御所全体に、事なかれ主義と風流が無いこと(お洒落心が無いこと)を、表現している。(そもそもが、中宮のご性格によるものではあるけれど)

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