第134話さるは、宮の御心あかぬところなく(2)斎院と中宮御所の女房の違いについて

げにものの折など、なかなかなることし出でたる、後れたるには劣りたるわざなりかし。ことに深き用意なき人の、所につけてわれは顔なるが、なまひがひがしきことども、ものの折に言ひ出だしたりけるを、まだいと幼きほどにおはしまして、世になうかたはなりと聞こしめし、おぼほししみにければ、ただことなる咎なくて過ぐすを、ただめやすきことにおぼしたる御けしきに、うち児めいたる人のむすめどもは、みないとようかなひきこえさせたるほどに、かくならひにけるとぞ心得てはべる。


(中宮様の考え方の通りであって)実際に何かの折りに(大事な場面などで)「しでかさなくてもよいことをしてしまう」のは、何もしないで見ているよりも危険なことと思うのです。

特に、深く物事を考えていない(準備も根回しも不足しがちな)人で、かつて御所で我が物顔で大きな態度を取っていた女房が、重要な場面であったのに、見当違いな(場にそぐわない)ことを言い始めてしまったことがありまして、中宮様は当時は本当にご幼少ではありましたけれど、様子をお聞きしながら「こんなに見苦しく恥ずかしいことはない」と、お気持ちの中で思われたようで、それからは、とにかく事なかれと申しましょうか、失敗などせずにやり過ごすことこそが大事なことであると、お考えのようです。

それだから、世間を知らない子供のままのお嬢様の女房達は、中宮様のお考えとも、違うなどということはないので、今のような余計なことをしないこと(無風状態)を大切に思う、そんな状態が普通になってしまったと、私(紫式部)は理解しております。

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