第125話若人の中に容貌よしと思へるは、(4)

五節の弁といふ人はべり。平中納言の、むすめにしてかしづくと聞きはべりし人。絵に描いたる顔して、額いたうはれたる人の、目尻いたうひきて、顔もここはやと見ゆるところなく、色白う、手つき腕つきいとをかしげに、髪は、見はじめはべりし春は、丈に一尺ばかり余りて、こちたく多かりげなりしが、あさましう分けたるやうに落ちて、裾もさすがに細らず、長さはすこし余りてはべるめり。


※平中納言:従二位中納言平惟仲。寛弘2年(1005)3月太宰権帥赴任中に客死。だから、この文の時点で故人。

※絵に描いたる顔:引き目鉤鼻のような顔らしい。


五節の弁という女房がおります。故平中納言(惟仲)様が養女に向かえて大切にお育てになられたと、お聞きしていた人です。絵に描いたようなお顔で、額が特に広い御方で、目尻がとても長く、お御顔立ちについては、特にこれ、という欠点はなく色白、お手元も手首から腕にかけても素敵な感じ、髪については、初めては違憲した春には、背丈より一尺以上長くて豊かでいたけれど、何故かとりわけでもしたかのように抜け落ちていております、とはいえ、髪の裾は、さすがに細くはなっておらず、長さ自体は、背丈より少々余っているように見えます。

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