第124話若人の中に容貌よしと思へるは、(3)

 宮城の侍従こそ、いとこまかにをかしげなりし人。いと小さく細く、なほ童女にてあらせまほしきさまを、心と老いつき、やつしてやみはべりにし。髪の、袿にすこし余りて末をいとはなやかに削ぎてまゐりはべりしぞ、果ての度なりける。顔もいとよかりき。


(その若い女房たちの中でも)宮城の侍従という人は、際立って実に整った美人でした。実に小柄で細身、まだまだ童女の姿にしておきたいほどの可愛いお方でしたけれど、自ら老け込んで髪を切り、仕事そのものをお辞めなってしまったのです。髪は、袿より少し長くしていて、実に華やかに切りそろえた姿で中宮様の御前に参上されたのが最後の姿でした。そのお顔も実に美しくありました。


事情は不明であるけれど、素晴らしい若い美人が「自ら老け込んで髪を切る」つまり、出家でもしたのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る