第126話若人の中に容貌よしと思へるは、(5)
小馬といふ人、髪いと長くはべりし。むかしはよき若人、今は琴柱に膠さすやうにてこそ、里居してはべるなれ。
かういひいひて、心ばせぞかたうはべるかし。それもとりどりに、いと悪ろきもなし。また、すぐれてをかしう、心おもく、かどゆゑも、よしも、後ろやすさも、みな具することはかたし。さまざま、いづれをかとるべきとおぼゆるぞ、多くはべる。さもけしからずもはべることどもかな。
小馬という女房は、髪がかなり長い人でありました。昔は、実に素晴らしい若い女房、今は琴柱を膠(にかわ)でつけてしまったと思うぐらいに、頑固に自宅に引きこもっているとのことです。
さて、こんなように、外見ばかりあれこれと語ってまいりました。
しかし、それぞれの性格、となると、実にどう言っていいのか、難しいのです。
とにかく、人それぞれではありますが、特に悪い、と言う人などはおりません。
また、素晴らしく素敵で、落ち着いていて、才能、教養、風情、実務の能力も、全てが完璧にするなど、本当に難しいことなのです。人様々、どういう人のどういう所を良しとするべきなのか、迷うことが多いのです。(それにしても我ながら)何とも、身の程をわきまえぬ物言いであると思うのですが。
遠慮はしていると思うけれど、それでも書きたいように書いて来て、我ながら「書き過ぎたかな、身の程知らずに」と反省の弁を述べるところが、目立つことと人に反感を持たれることを嫌う(恐れる)紫式部らしいところ、と思う。
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