第119話このついでに、人の容貌を語りきこえさせば、(2)
小少将の君は、そこはかとなくあてになまめかしう、二月ばかりのしだり柳のさましたり。やうだいいとうつくしげにもてなし心にくく、心ばへなどもわが心とは思ひとるかたもなきやうにものづつみをし、いと世を恥ぢらひ、あまり見苦しきまで児めいたまへり。腹ぎたなき人、悪しざまにもてなしいひつくる人あらば、やがてそれに思ひ入りて、身をも失ひつべく、あえかにわりなきところついたまへるぞ、あまり後ろめたげなる。
小少将の君は、どことなく、お上品で優雅な感じ、まるで二月頃のしだれ柳のような雰囲気のお方です。ご容姿は、とても愛らしい感じ、物腰は奥ゆかしく、ご気性も、何も自分では決められない、そんな感じでご遠慮をなさり、とにかく人目や世間を気にして、とても見てはいられないほどに子供っぽいようなお方なのです。仮に意地悪な人がいて、邪険な扱いをされたとか、酷い悪口を言われたり、悪い噂を流されたりすると、そのまま思い悩んで自殺までしかねない、そんな弱々しい一面を持っておらられるところが、実に気になってしまうのです。
小少将の君は、源時通の娘。藤原道長の北の方(正妻)倫子の姉妹。
紫式部とは、親友のような存在として知られる。
この小少将の君の描写は、源氏物語の「女三の宮」の描写と酷似しているので、「女三の宮」のモデルなのか、とも考えられて来た。
確かに「二月頃のしだれ柳のような雰囲気」「ご容姿は、とても愛らしい感じ、物腰は奥ゆかしく、ご気性も、何も自分では決められない」など、女三の宮そのものである。藤原道長の北の方(正妻)倫子の姉妹でもあり、紫式部とは、親友のような存在となると、それを知って「源氏物語」を読むと、また味わいも変わって来るような気がしてくる。
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