第118話このついでに、人の容貌を語りきこえさせば、

このついでに、人の容貌を語りきこえさせば、物言ひさがなくやはんべるべき。ただ今をや。さしあたりたる人のことは、わづらはし、いかにぞやなど、すこしもかたほなるは、言ひはべらじ。

 宰相の君は、北野の三位のよ、ふくらかに、いとやうだいこまめかしう、かどかどしき容貌したる人の、うちゐたるよりも、見もてゆくにこよなくうちまさり、らうらうじくて、口つきに恥づかしげさも、匂ひやかなることも添ひたり。もてなしなどいと美々しくはなやかにぞ見えたまへる。心ざまもいとめやすく、心うつくしきものから、またいと恥づかしきところ添ひたり。


この話のついでに、女房たちの容姿をお話したとすると、それは言葉が過ぎることになるのでしょうか。それも、今ご一緒の方々をとなると、なおさらに難しいことになりますので。(それは、遠慮いたしますが)。

なお、「こうなられてしまうと」と、差し障りのあるお方についても、言葉を控えることにいたします。


宰相の君、はい、北野の三位の娘さんのほうになりますが、ふっくらとしておいでで、とてもご容姿が整っておられて、顔立ちも賢そうな人で、初めてお会いした時よりも、少しずつお付き合いを重ねていく中で、どんどん好感を覚えるようになり、その上品さや洗練された態度、口元には、気品とつややかさも備わっている。(と思われます)

立ち居振る舞いなど、実に立派で華やかに見えます。

性格も素直で可愛らしく、こちらが気後れしてしまうような気品も備わっています。


※宰相の君:「北野の三位の娘」は参議藤原遠度(藤原師輔の息男)の娘。


紫式部による女房の紹介が始まる。

言いづらい女房は省くと言っているので、最初は感じがよくて、無難な女房にした、と思われる。

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