第116話寛弘6年(1009)の正月(2)

宰相の君の、御佩刀取りて、殿の抱きたてまつらせたまへるに続きて、参う上りたまふ。紅の三重五重、三重五重とまぜつつ、同じ色のうちたる七重に、単衣を縫ひ重ね、重ねまぜつつ、上に同じ色の固紋の五重、袿、葡萄染めの浮紋のかたぎの紋を織りたる、縫ひざまさへかどかどし。三重襲の裳、赤色の唐衣、菱の紋を織りて、しざまもいと唐めいたり。いとをかしげに、髪などもつねよりつくろひまして、やうだい、もてなし、らうらうじくをかし。丈だちよきほどに、ふくらかなる人の、顔いとこまかに、にほひをかしげなり。


宰相の君は、若宮の御守り刀を持っています。道長様が若宮を抱かれておられるのに続いて、参上なされます。

(宰相の君の衣装は)紅の(袿)三重五重、三重五重と混ぜて、同じ(紅の)色の(砧で)打って光沢のあるものな七重に単衣を縫い重ね、(それらを)重ね混ぜたりして、その上に同じ紅の五重、袿は葡萄染めの浮き紋で堅樹の紋様を織り出した物は、その織り方まで配慮がなされています。三重襲の裳、赤色の唐衣には菱の紋を織り出してあり、その技法は中国風に見えます。

実に美しく髪型もいつもより念入りに整えて、雰囲気も立ち居振る舞いも洗練されていて素晴らしく思います。

背丈は丁度いいくらいで、ふくよか、顔は実に整っていて、華やかな感じで美しいのです。


紫式部の興味は、衣装に、そして宰相の君の姿や立ち居振る舞いに移る。

衣装については正確な記載、姿や立ち居振る舞いについては、よほど気に入ったのか、激賞気味。

あるいは、宰相の君に好意を抱いていたがゆえに、なのかもしれない。


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