第115話寛弘6年(1009)の正月(1)

正月一日、言忌みもしあへず。坎日なりければ、若宮の御戴餅の事、停まりぬ。三日ぞ参う上らせたまふ。

 今年の御まかなひは大納言の君。装束、朔日の日は紅、葡萄染め、唐衣は赤色、地摺の裳。二日、紅梅の織物、掻練は濃き、青色の唐衣、色摺の裳。三日は、唐綾の桜襲、唐衣は蘇芳の織物。掻練は濃きを着る日は紅は中に、紅を着る日は濃きを中になど、例のことなり。萌黄、蘇芳、山吹の濃き薄き、紅梅、薄色など、つねの色々をひとたびに六つばかりと、表着とぞ、いとさまよきほどにはべる。


正月一日は(昨晩の事件の関係もあり)、言忌み(不吉な言葉を憚ること)も不可能です。坎日(万事に凶日)にもあたるので、若宮の御戴餅の儀式は中止になりました。(その関係で)若宮は三日に参上なされます。

さて、今年の御まかない担当(中宮に御屠蘇を給仕する係)は、大納言の君になります。、朔日の装束は紅の打衣に、葡萄染めの表着、唐衣は赤色、地摺の裳です。

二日は、紅梅の織物の表着、掻練は濃い色、青色の唐衣、色鮮やかな摺模様の裳。

三日は、表着は唐綾の桜襲、唐衣は蘇芳色の織物。掻練は濃い色を着る日はを裏地に、紅を着る日は濃きを中になど、通例に沿っています。

(袿は)重ね色目は萌黄、蘇芳、山吹の濃いもの・薄いもの、紅梅、薄色など、つねの色彩豊かに6枚ほど、表着は実に上手に着こなしています。

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