私たちは多くのことを「卒業」して生きてゆく。あるいは、友だちもまた、ケンカなどの具体的理由なしに、月日が経つにつれて疎遠となることがある。疎遠と絶縁は違う。このような縁が遠ざかって、薄れてゆくことは誰しもが体験してきたことであり、そして本作が改めて気づかせてくれる重要なことの一つは、その体験は相互的なものであるということだろう。その少女を、読者は何に投影するのか。かつての友人か、あるいはイマジナリーフレンドか、趣味か、といった具合に、十人十色の世界がここにはそっと残されている。