第5話 有住と、吉谷の温度差


 クレアさんとのホラーゲームコラボ配信は無事に終わった。

 やっぱり同期で気心が知れた仲ということもあり、クレアさんとの掛け合いには安定感があるし心地よいものがある。


 まあ、暫く病院には行けそうもないし、暗闇での物音(あのたまにピシッと鳴る家鳴りとか)にも耐えられそうにない気がするけれど、兎にも角にも今日の配信も最高に楽しかった。


 今日はクレアさんと寝るからいいけど、明日からひとりで寝られるかな……。

 最悪の場合、親と寝るか……?


 そこまで考えて、そういえば吉谷ともお泊りすることになったんだった、と思い出す。


 ちょっとヤキモチを妬いている私の彼女は、とても可愛かった。

 どれくらい可愛かったかというと、なりふり構わずその場で強く抱きしめたいぐらいには。


「あ、そういえば夕方一緒にいたあの子。あの子が彼女だったっけ?今度お泊りすることになったみたいだけど、もうそういうことしてるの?」

「ぶっ、うぇ、へ!? へ!? してませんが!?」

 私が寝るための来客用布団を用意しながら、クレアさんがぶっこんでくる。


 この人いつも唐突なんだよなぁ。


「い、いまはそういう事は考えてないよ。高校生だし。いまは」

 ふぅん、と目を細めてこちらを見つめる性天使。


「でも、お泊りするんでしょう? あなた達、付き合ってるのよね?」

「はい……」


 私だって考えていないわけじゃない。


 でも、あの時の吉谷の様子を思い出すと、そこまでは考えていないような気がしていた。

 それならあまり急かしたくない。


 私達、まだ高校生だし。


 色んな事を考えてブレーキがかかる。

 これでも我慢はしているのだ。これでも。

 でも、普段吉谷と居る時に何をしているのかは、詳細は誰にも言えないけれど。


 そういうことは抜きにしても、ここ最近、微妙に様子がおかしかった吉谷とゆっくり話せる機会にはなると思う。

 そう考えると胸が高鳴る。


 吉谷を、ぎゅっと抱き寄せて眠りたい。

 抱きしめて、好きだよ、って沢山言いたい。

 あわよくば触りたい。


「だめだめだめだめだめ……」

「どうしたの~さくちゃん。いかがわしいこと考えてたの~?」

「人が考えてること的確に当ててくるのやめてください」


 "すぐにお泊りの日にちを決めたい"

 そう吉谷に送ると、案の定即座に返信が返って来た。


 たぶん、リアルタイムで犬養桜の配信も観てくれてたんだろうなぁ、と勝手に解釈して嬉しくなる。


 スマホを見てにやけていると、横から「言葉に出しているわけでもないのに彼女からの連絡が来て嬉しくなっている、ってバレバレの表情よね」と突っ込まれた。


「クレアさんにもそういう相手が現れるといいね」

「あら~、ムカつくわこの子~」


「でも、楽しんでおいでね」

 ベッドの上から私を見下ろしているクレアさんから、優しい眼差まなざしと温かい声が降ってくる。


「うん」

 私もにっこりと微笑みかえす。




 ――かくして、急遽決まった吉谷とのお泊りの日がやってきた。





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 有住と吉谷の温度差を感じて欲しい。

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