第4幕 六条の院

右近

「お殿様、お殿様、ちょっとお話が」

源氏

「右近か。どうじゃった神参りは。何かみやげ話でもあったかな」

右近

「ございましたとも。でも紫の上の姫様のいらっしゃるところでは・・」

紫の上

「私ならかまいませんよ。お殿様は一人や二人どころじゃないですから」

源氏

「また意地悪をいう。右近、苦しゅうない。言うてみ」

右近

「そういう事でしたら。実は夕顔様のお子様を見つけまして」

源氏

「なに、夕顔の。よく見つけた。して今どこに」

右近

「次の間においでなさいます」

紫の上

「どういう方か知らないが、私が邪魔ならはずしますが・・」

源氏

「それには及ばない。昔、夕顔というおなごがおって、左大臣殿の子をもうけたが、まもなく亡くなった。私は夕顔の世話をしていた右近を引き取ったが、赤子は行方不明になったまま。それが見つかったと」

「紫の上、かまわぬな。右近。通せ」


たまかずら

「お初にお目にかかります。たまかずらにございます」


(白塗りの源氏を見て)

「あれが源氏様?帰らせてもらうわ」

源氏

「うむ、これはこれは、なんと美形な。紫の上にも劣らない」

紫の上

「私など目に入らないご様子ですのに」

源氏

「これは左大臣殿にすぐに知らせてはもったいない。私がもう少し都の作法など、あれこれ教えてからお知らせしよう」

「左大臣様のおなりでーす」

源氏

「また、よりによって何でこんなときに」

右近

「私がお知らせしました」

(ゴテゴテの白塗り左大臣登場)

左大臣

「たまかずら、たまかずらはどこじゃ」「おーたまかずらか」


たまかずら

「ちょっとすんまへん」

左大臣

「おーい、ちょっとどこへ行くねん」

たまかずら

「あんたが源氏であんたが左大臣のお父さん!この白塗りが!

悪いけど、あほらしいてやってられまへん。私、もう月に帰らせてもらいます」「三条!」

(天神囃しにのって月から迎えが来る)

源氏・左大臣

(声を合わせて)

「なんでやねん!」


舞台で「なんでやなんでや」とガヤガヤ騒ぐ中、たまかずらは月の使者といっしょに花道から退場。

 (天神囃子)チャンチャチャカ、チャンチャチャカ、チャンチャチャカ


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笑説 たまかずら tsutsumi21 @tsutsumi21

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