第16話 転生を悼む
『私は、貴方が死に支度をしている事に気付いていました。
明日消えても良いように。
明日消えても良いように。
毎日全ての病棟の患者の元に顔を出していた事。
万が一私の躰が死ぬより先に転生を起こしてしまえば、私を悲しませると思って、最期の最期まで想いを伝えてくれなかった事。
貴方がこの世界での生活を自分の人生ではないと線引きし「ピヴルィ」であることに徹したのは、何より次の転生者に
そして貴方は、その躰の前の持ち主に罪の意識を持ち続けているのですね。
ちょっと考えてみてください。
彼――ピヴルィもまた、いずれ消失する事を知って居たでしょう。
それでも医師として功績を上げる事に尽力したのです。
彼も貴方と同じく次の転生者に居場所を遺そうとしたのではないですか?
真実がどうかではなく、もしそうならと考えてみてください。
――もし目一杯の自由を貴方が望んだならば、次の転生者もまた、
私に騙されたと思って、私を想う時だけはきっと心の重荷を取り払って下さい。
この世界では魂の消失後、完全な無に還ると信じられています。
しかし私の居た世界には、いつか貴方が「テンゴク」と発音したものと似た概念があります。
私たちはそこを「とまり木」と呼びます。
“鳥”は再び空へ飛び立つために、木にとまり、羽を休めるのです。
この先、私は
〈完〉
『転生』という病の国 葛 @kazura1441
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