目撃者

ヒガシカド

目撃者

 扉の鍵は、開いていた。

 貪るように男の首を締める私の姿を、彼女は愕然と見ていた。

「こんにちは。お早いですね」

「あ…あ…」

 私は死体から手を離し、彼女の方へ向かった。太すぎず細すぎない彼女の脚は、震えて硬直していた。なかなかに良い眺めではあったものの、そう呑気にしてはいられない。見られたからには消さなくては。

「許して…誰にも言わないから」

「許しませんよ」

 私は笑顔で優しく語りかけた。怯える彼女は相当に魅力的だった。

「許すと言ってください…」

「駄目です」

「いや、絶対に許してもらわなくては」

 見逃せと?そんなヘマを私がするはずなど無い。彼女の懇願は虚しく響く…だけではなかった。

 彼女の拳が私の顔を強く打った。

「許してくださいよ…!」

 何を言っている?その間にも、彼女は繰り返し私を殴る。

「他人の本心を真の意味で知ることのできる人間はいない…だから私は言葉が欲しい!せめて言質を、たとえ偽りであったとしても”許す”という言葉が欲しい!それが得られる時まで、私はあなたを殴り続ける!君が”許す”まで、殴るのをやめないッ!」

 ヒェ〜〜〜〜〜〜〜!許す、許すよォ〜〜〜〜だから”許して”くれ〜〜〜〜ェッ!!

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目撃者 ヒガシカド @nskadomsk

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