夢…?

ninjin

夢…?

 僕は夢を見ていた。(みたいだ・・・)


 夢の中で、電話を掛けている。父親に連絡を取ろうとしていた。


 これから、恋人の美由紀を連れて、そちらに挨拶に行きたいのだが、都合はどうかと訊くために。


傍らにはその美由紀が、僕と父親の電話の内容がどういったものになるのか、気が気ではない様子で、聞き耳を立てている。


 トゥルルルル・・・トゥルルルル・・・トゥルルルル・・・


「もしもし」


 あ、繋がった。


 同時に目が覚めた。


 目の前に、美由紀が居る。


「もしもーし」


「あ、間違えましたっ。・・・って、何で、美由紀が電話に出るの?・・・ん?掛け間違えたのか?俺・・・」


 キョトンとした眼差しで僕を見詰めていた美由紀が、おもむろにクスクスと笑い出す。


「?」


「もしもーし。まだ、寝惚けてる?起きて、もうすぐ出かける時間よ」


 そこで初めて、夢だったことに気付く。


 ああ、そうだった。これから美由紀を連れて、実家に結婚相手の紹介と挨拶に行くのだった・・・。


 午後の約束にはまだ少し時間があるということで、ちょっとだけ仮眠を取って、夜の酒の席に備えていたのだった。


 僕は苦笑交じりに、美由紀にクレームを付ける。


「俺を起こす時に、『もしもし』は、次回から、禁止ね。夢と現実の区別がつかなくなるから」


「・・・なに?ほんとに、電話してる夢見てたの?それで、私が言った『もしもし』がその夢とリンクしたってこと?」


「うん」


 美由紀が声を立てて笑い出す。


「あはははっ、そんなことってある?」


「今、現在、あったんだから、仕方ない」


 笑われて、少し腹が立つ。


・・・嘘だ。


 全く、腹なんて立てていない。僕も一緒に笑い出していた。


「じゃ、目も覚めたし、そろそろ出掛けよっか」


「私の格好、これで大丈夫かしら?」


「大丈夫どころか、ちょっと気合入り過ぎ、かも。うちの両親、どうせジャージの上下だよ。アディダスだけど」


「うそ?」


「あ、それは嘘」


「もうっ」


 うん、何だか上手くいきそうな気がする。


 外は五月晴れだ。


 何もかも、上手くいき過ぎと言えなくもない・・・






 ん?これも、夢・・・?




 美由紀って、誰・・・?




 美由紀って、確か・・・初恋の・・・




 僕は慌てて振り返る・・・








    おしまい

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夢…? ninjin @airumika

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