第48話

建国祭、当日。


ルイは前髪をすっきりと上げるスタイルにした。

ロイヤルブルーのスーツの首元にはいつものネックレスをしている。

「さて、と」

そろそろソフィアの部屋へ向かわねばならない。

今回もソフィアとは色を揃いで合わせた服装になっていてきっと綺麗なんだろうなと思う。

気が付けばルイは無意識に惚気けるくせが付いていた。

気持ちがちゃんと通じあってからルイは政務の隙を見てソフィアの所へ行くのでウォンから怒られることが増えた。

なにせソフィアが好きすぎて会いたくて仕方がないのだ。

なんなら24時間そばにいたい。

多分それは嫌だと言われるだろうけれど。

最後にネクタイをしてロイから贈られたネクタイピンを仕上げに着けていると部屋の扉がノックされた。

ルシアだと思ってどうぞ、と声をかけると返ってきたのは中低音の愛しい声だった。

「ルイ、私もう終わったから来ちゃった」

小首を傾げて入ってきたソフィアは想像以上に綺麗で思わず口をパクパクさせてしまう。

ロイヤルブルーが基調のオフショルダーのドレスにハーフアップにされたふわふわの銀髪。

ぱっちりとした瞳を強調するように睫毛は上を向いて、そしていつものネックレスがあった。

「ルイ?」

見惚れているルイにソフィアが覗き込んでくる。

「いや、綺麗すぎて見惚れてた」

口から本音が漏れてしまってソフィアが照れた。

「そう、かな?」

そんなソフィアを見て胸元に輝くネックレスが目に入ったら何となくルイは自分も人の目に見えるようにしたいなと思った。

というか見せびらかしたかった。

ソフィア・ウィル・ウォールはルイ・ソルセルリー・フェンガリの婚約者なんだー!手を出すなよー!と言った具合に。

流石になかなか阿呆な考えをしている自覚はあるけれど。

「…うん、本当綺麗。よし」

改めて言うのに少し照れたがそれより伝えたいので伝えた。

そして一言呟いてネクタイを外す。

「あら?ネクタイしないの?」

ソフィアに聞かれるとルイはにっと笑った。

シュルシュルとネクタイを解いてシャツの襟をもう一度ぴっちり閉めて首元からネックレスを取り出す。

シャツの襟を立ててネックレスをシャツの上からすることにした。

これでルイも人目に見えるようになる。

そんなルイを見てソフィアが嬉しそうに微笑んだ。

「今日は皆に自慢できるわね、お揃い〜って」

思わずぷっと吹き出す。

同じことを考えるんだなと思ってしまう。

「ええ?変なこと言った?これはこの殿方は私の婚約者様なんですー!って言ってるようなものじゃない?」

ふふふといたずらっ子のように言うソフィアにルイはその頬を撫でて言った。

「本当、全く同じことを考えるんだから不思議だよなぁ」

本気で不思議になったので妄想でもしてるのかと疑うレベルだ。

そんなふうに頬を撫でてくるルイにソフィアは自分の手を重ねて言った。

「本物よ?」

たった5文字なのにルイの考えていることをお見通しな返答をしてくる。

少し驚いたがソフィアならルイの考えていることくらい分かるか、と思った。

「降参。皇太子妃様には参りました」

おどけてそう告げる。

くすくす笑ってソフィアは乗っかってきた。

「あらあら。殿下、10年近く私と婚約してますのにご存知ありませんでしたの?」

その様子が可愛くてルイもふっと笑ってしまう。

2人のそんな甘めな雰囲気は周りが見えていない新婚夫婦のようなもので実際やって来たルシアに気がついていなかった。

正確に言えばルシアが覗き見していたので気がつくのは至難の業だがこの少しあと、もう時間になってしまって、ルシアの咳払いで周りが見えたふたりは最高に恥ずかしい思いをした。


「皇太子殿下と皇太子妃様のご入場です!」

そんな声が高らかにホールに響き渡る。

重く厚い高級感のある大きな扉の前には腕を組んで顔を見合わせる2人。

瞳と瞳が合えば自然と笑みがこぼれる。

そうしてルイのエスコートでソフィアと入場し、今日も今日とて色々な意味で注目の的になった。


皇帝と皇后に挨拶をし、着席する。

沢山の視線を集めているのを感じた。

しかしそんな視線よりこれから本当の主役が来るのを2人も心待ちにしていた。




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