第44話
微妙な笑みで頬がひくひくしたがここは皇太子妃様を見習って耐えるべきだ。
ほんの数時間でレイニーはソフィアとの格の違いを肌で感じた。
今日はもう目前の建国のパーティーの為にソフィアとレイニーのドレスの試着の日だった。
何パターンもドレスは用意されていて正直レイニーは目の前がクラクラする。
ソフィアもそんなレイニーを見て苦笑してこっそり実は私も長丁場は苦手なのと打ち明けた。
しかしそのソフィアの言葉を素直に受け取って安心したレイニーが間違っていた。
相手はこの10年近く皇太子妃としてこの国の皇室にいる方。元々帝国で最も教養と美貌と知性を兼ね備えていると言われる令嬢。
国政において切れ者で喰えない皇太子の相手が務まるのは彼女だけ。
そんな彼女は疲労を一切感じさせず笑顔を絶やさない。レイニーは既にクタクタでソフィアは同じ数のドレスを試着しているもののこれ程差が出るとは思いもしなかった。
本来、皇太子妃は皇太子と試着をするらしいが今回はレイニーのお披露目のための初めてのドレス選びなので付き添ってやるようにと皇后からのお達しでレイニーに付き合ってくれている。
そこには皇太子妃に任せられる皇后との確かな信頼関係があってレイニーはソフィアをますます尊敬した。そして彼女はどのドレスでもやはりとても美しくレイニーは合間合間に見惚れてしまう。
今日はソフィアの侍女のナディアがレイニーの世話をしていたのでソフィアに見惚れるレイニーにくすっと笑って言った。
「皇太子妃様、お綺麗ですよね。ですがオプシス伯爵令嬢も負けてませんよ?」
その言葉を聞いてレイニーがはっと意識を引き戻した。
「あ···ついつい目がいってしまって。バレてしまったわ」
レイニーは照れて返事をする。
ナディアもにこっと笑いかける。
それにしてもソフィアはレイニーを休ませている間も政務を行っていた。どうにも皇太子とのスピーチの内容の最終的な段階のようだ。
レイニーとロイは今回は形式的な物のみなので特別な準備は要らなかった。
苦しいコルセットに目まぐるしい試着にレイニーが疲れた表情を一瞬見せただけで察して少し休憩しましょうとソフィアはこまめに休憩を入れる。
そして休憩中ふとした時にレイニーが見つめている視線を感じて目線を上げると微笑んでくれる。
透き通るような真っ白な肌に菫色の瞳がぱっと咲いた花のように美しい。
単純に同じ女性でもこんなに憧れるのに皇太子どうしてあんなことをしたんだろうと疑問だった。
5着目を着ている時にその皇太子はやって来た。
ずーん、と気まずい雰囲気を醸したレイニーの婚約者様と共に、だ。
皇太子を見るなり皇太子妃の表情はぱっと違う輝きを見せる。
「殿下、お忙しいのに来てくださったんですか?」
そんなソフィアの労いの言葉に返すようにルイも微笑んで言う。
「どうしてもソフィアたちが気になってウォンに無理言って来てしまった」
優しい色の滲むその瞳は誰が見ても愛情たっぷりでお似合いすぎる2人だ。
「ウォンを困らせちゃダメですよ」
「なんでウォンの心配するんだ」
「妬かないでください」
そんな軽口を隣でルイとソフィアが叩いている間、ロイとレイニーは非常になんとも言えない空気だった。
レイニーはソフィアの事が好きだったようなロイに気まずいしロイはロイでレイニーとどう接していいのか分からない。レイニーは掴みどころがない。
外交上や社交界では誰とでも打ち解けられる自信のあるロイとしても青天の霹靂だ。
ロイが掴みどころがないと感じるのも無理はない。
レイニーが勘がいいのでロイのソフィアへの気持ちに気がついてそのため気まずく、そしてロイに苦手意識を持っているなんて分かりっこないからだ。
ロイは今はソフィアへの未練というのはもう断ち切れている。ソフィアに幼馴染以上の気持ちも無い。それ故にレイニーと上手く関われないとどうにも兄と義姉を頼りたい気持ちになってくる。
レイニーもロイも皇太子と皇太子妃が今は本当に仲がいいので秘訣を知ってメモを取りたい気分になった。
そして神様は2人をどうにかしてくっつけたいのか2人が気まずいままなんとお茶を4人でする運びになってしまった。
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