第43話

ソフィアは今目の前の課題に悩んでいた。


課題というのは建国のパーティーの課題ではなく恋人のような存在として婚約者としての課題。

ソフィアの恋人のような存在で婚約者で皇太子のルイの視察期間が正式に決まった。

年が明けてすぐから春前までの3ヶ月。

北の地の雪深い時期に側近を連れてその地方の視察に行く。皇太子妃であるソフィア以外の女たちと逢瀬を重ねていた罰なのでソフィアの同行は皇帝と皇后からは許して貰えない。出来ればソフィアも北の地の視察に行きたかったのだけど…。

決定事項は翻せなかった。

しかしここでもうひとつ問題がある。

ルイの誕生日がなんとその期間と被ってしまった。

ソフィアとしてはルイの今回の20の誕生日だけは仲も戻った今、盛大に祝いたい。

公私混同は駄目だと思うソフィアだけどこれはソフィアがルイと出会ってすぐの頃から決めていたことだ。

だからルイの誕生日について日々頭を悩ませていた。


「ねえ、お願い!ウォン、ラルド助けて!」

ソフィアに呼び出されたルイの親友たちが突然のことに顔を見合わせる。

ソフィアもその気持ちは分かるのだがやっぱりこの2人を頼る他、計画を実行出来る可能性がほぼない。

ウォンがソフィアの勢いを落ち着かせるように声をかける。

「えーと、ソフィア。落ち着こうか。何を助けるの?」

ウォンらしく冷静に優しく聞いてくる。一方ラルドはいつものようにのらりくらりと猫のように言う。

「ソフィアを助けるなんて事これから先あんのかな?超ラッキーな気がする」

ウォンがラルドに呆れの視線を向ける。ソフィアも慣れているので冗談は置いておいて話を戻した。

「あのね、1月にルイの誕生日があるでしょ?20の…。どうしても私お祝いしたくて2人に協力して欲しいの。無理を言っているのは分かるんだけど他に頼れる人もいないから…」

その言葉に2人はまた顔を見合わせて今度は吹き出した。ソフィアが困惑しているとウォンが面白そうに言う。

「いやぁ、それはこちらも助かる気がするけど。ソフィアから何かしら贈られてきたらその頃の切れかかったルイの集中力が持つと思うし」

「いっそソフィアが来ても助かるけどね」

なんで2人がそんなに笑うのかソフィアには最初分からなかったけれどとりあえず2人は協力してくれそうだ。

そしてその後分かったけどソフィアの口からそんなお願いが出たのが久々でそれを聞いたルイを想像して面白がっていたらしい。


一方自分の執務室で最終原稿とにらめっこしていたルイは後からやってきたウォンとラルドと挨拶を交わすなり顔を顰めた。

2人が妙ににやついてルイを見ていたからだ。

「?なんだ?顔になにかついてるか?」

ルイが顔を触って聞くと2人とも違う違うと手を振る。

「なんなんだよ?」

ルイが怪訝そうに問い詰めるが2人はただまあまあと言って誤魔化した。

そしてウォンが自然と話題を変える。

「そういえば殿下、決まりましたね。視察時期」

その話題が出るとルイは原稿を置いて神妙な面持ちで頷いた。

「ああ。もし…万一でもソフィアが着いていくなんて言ったら絶対に絶対に俺を止めてくれよ?連れていかないと思うけど!努力してるけど!ソフィアに国のためにって頼まれると弱いんだよ…」

はあーっとルイはため息を着く。

ソフィアは国政に熱心だから北の地を絶対に見たがるはずだ。

豊穣のパーティーの種分けの時も論文を見たがっていた。

ソフィアの国のために、は色仕掛けとかそういうものではなく本当に国のためにする時の言葉だ。

だからソフィアにそう言われてしまうとどうもルイは弱い。だけど今回ばかりはソフィアは連れて行けない。もし連れていくなら春か夏にする。

これはソフィアが行くべきではない。

そうやってルイは葛藤している。

日誌の悩み事欄が最近はそちらの分量も幅を取ってきた。主に反省だが。


そんな葛藤を抱えるルイと何かを企んでいるソフィアの板挟みになった親友2人は困るどころか非常に愉快そうにしていた。

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