電話
空殻
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――――――もしもし?
ああ、なんだ君か。どうしたの、こんな時間に?
――――――愚痴を聞いてほしい?
まあ、構わないけど。明日は授業も午後からだしね。
で、どうしたの?
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――――――ほうほう、交換留学ねえ。
まあ、君が行きたがっていたのは以前から知っていたから、そのことは驚かないけどね。
にしても、枠が一人分しかなくて?同じ学部の………ええと、モリグチ?モリサキ?
まあいいや、何某くんの方が成績が良くて、彼が選ばれるんじゃないかと。
――――――え、何?聞き取りづらいって?ああ、ごめんよ。
ちょっと料理をしていてね。それで雑音が聞こえるんだね、ごめんごめん。
――――――こんな時間になんでかって?いや、食材の処理は早い方がいいからね。
さてと、そんなことよりも君の話だ。君の成績だって悪いわけじゃないだろうけどね。興味のある専門科目については特に頑張ってるみたいじゃないか。
……まあ、君は暗記をするのが少し苦手みたいだからね。そういうテストで点数が悪かったんじゃないかな?
――――――はは、図星かい。まあ、そうじゃないかと思ったよ。
その何某くんはきっと、記憶するのも得意なんだろうね。そうであって欲しいね、うん。
さてと。で、君はどうするんだい?
不安なのはわかるが、ここで諦めるのかい?君がやりたかったことなんだろう?
――――――ふんふん、諦めるつもりはないと。
そいつは結構だね。成否が決まる前から、投げ出すのは得策とは言えない。
そもそも君の杞憂かもしれないし、仮に分が悪いのだとしても、どうなるかは最後まで分からないのだからね。
まあ、私なら天秤がこちらに傾くように、やれることは全部実行するだろうけど。
……にしても、君は不安で夜も眠れないと言うがね、それは生活習慣のせいもあると思うがね。
ちゃんと食べているかい?食事を疎かにしているのではないかな?
――――――そんなことだろうと思ったよ。ろくな食事をとっていないじゃないか。
不安で食欲が湧かないのか、食べていないから精神が不安定になるのか、因果がどちらなのかは判然としがたいけどね。
いいかい、食事は大事なんだぜ?
体をつくるのも、体の調子を整えるのも、摂取する栄養が基になるんだから。
それに、食事は能力を高めることにも繋がるかもしれないしね。
宗教や文化によっては、足りない能力を補うために、その能力を持った生物を摂取するという考え方もある。
もちろん科学的には証明されていないが、おまじないみたいなものだよ。思い込みにしろ、超自然的な力にしろ、非科学的だが馬鹿にはできない場合もある。
まあ、験を担いでおくに越したことはないさ。
……さてと、まあ明日からも頑張ってみなよ。
さっきも言ったように、最後まで何があるかは分からないからね。
例えば、その何某くんが大学に来なくなる、なんてことがあったりするかもしれないし。
――――――ははは、それじゃあまるで、このままだと君が落ちると決まっているみたいだって?
もちろん、そんなことはないさ。
私は君を応援しているよ。
君が望みを叶えることを願ってるし、そのために私にできることなら何だってするさ。
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……さて、そろそろ私の料理も終わったよ。
実はね、元々君に食べさせようと思って作ったんだ。
明日持っていくから、ぜひ食べておくれよ。
験担ぎになるかどうかは、まあ食材次第だけどね。
肉料理、君は好きだろう?
電話 空殻 @eipelppa
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