第3話

「これで彼女のことを忘れてしまえばいいのです。ラクになるはずです。」

マスターはいやらしい笑みを浮かべていました。

「現代ではもう、記憶整理も怪しいものではありません。髪を切るみたいなものですよ。」

「cookieを削除するみたいなものですか?」

「そうも言えますとも。」


紳士は不審そうにしていましたがマスターがなだめました。


「いやだ、いやです。僕は哀しくても辛くても、彼女を想って苦しんでいたい。」

紳士は初めて感情を表に出したのでした。


「やはり、そう言いますか。これではっきりしましたね。あなたは失恋拗症しつれんこじらせしょうです。」

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失恋拗症 雨野瀧 @WaterfallVillage

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