あなたが生まれた日のこと

hinajin

第1話

君に伝えなければいけないことがある。

そう切り出そうか迷った時、電話のベルが鳴った。

目の前にいる少年カインと、緊張した空気の中、

タイミングが良いようで悪い電話に私は息を吐いた。

「もしもし」“ ああ君かね、ところで、、”

電話の相手と私が話しているのをカインは紅茶をすすりながら見ていた。話を聞くまで逃さないぞ、という合図のようにも思えた。

分かっている。もう逃げ場はないということは。

時が来たのだ。運命に任せよう。

電話は父に伝言をとのことだったので、すぐに終わった。

小さく息を吐き席に戻る。

「クッキーあるの。食べる?」

私は机の上のお菓子が入ってる缶の蓋を開け、カインに尋ねた。

小皿を取り出し、チョコとバニラを入れ、紅茶の横に差し出した。

「ありがとうございます。」カインはバニラクッキーをかじった。

私も紅茶を紅茶を一口すすり、ソーサーにゆっくり置いた。

「話があるの。聞いてくれる?」

カインが顔を上げた。

そして手に持っていたクッキーのかけらを口に放り込み、紅茶を流し込んだ。

目の前の食べ物を全て空にすることがOKのサインであるかのように。

そしてナプキンで手を拭き、

「はい、そのつもりで来ました。」

カインはその目に意思を込めて私を見た。

ついに私は、彼に隠してきた秘密を語った。



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