第64話 Final ふたりの『いつかはきっと』

3月9日。ついにこの日が来てしまった。思えばあの門をくぐってから約2年。その間に色々あったなぁ。


ところで卒業式となると泣く子が出るのは毎度恒例のお話であるが、それはうちの愛央とあいちゃんも例外ではない。3年前同様に泣いていた彼女は今回も泣いていた。


あお「たっくん・・・」

たく「あー。うん。おいで」

あお「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」

たく「よしよし。やっぱ悲しいよな」


ぶっちゃけた話、俺が泣かないのは卒業したってどうせまたどっかで会えるのだから良くね?っていう発達のゴミ思考でこうなったというのが本心。愛央は普通の人間なので感情が思いっきり出てしまう。


あお「泣いてても意味ないし、そろそろ食べよっ」

たく「いいよ今日は。ずっとここに居て」

あお「でもお腹すいた」

たく「ガチでぇ?んまぁいっか」

あお「食べたい・・・・ぴえん」

たく「はーーー、おいねぇ」

あお「軽いものでいいから」

あい「あーお、あしょんで!」

あお「待ってね」

たく「愛央、卒業式でまた泣くなこれだと」

あお「絶対泣いちゃう。愛央感動しやすいから・・・」

たく「おいで」

あお「ぎゅー」


愛央が泣きやんだところで学校に行く。思えば今から3年前なんだよね。特待を3年間保ち続け、色んなことがありながらも頑張ったと思う。


あお「ねぇねぇ・・・」

たく「あにしたぁ?」

あお「(´。>ω<)ぎゅー♡ってさせて」

たく「ふふっ。いいよ。おいで」

あお「愛央、少しは安心したかもっ・・・」

たく「よかった。ツインテ作る?それともハーフアップにする?」

あお「ツインテ作ってっ」


愛央は不安になるときだいたい甘える。教室につくと俺は早速愛央の長い髪を手に取り簡単だけど可愛くなるツインテールを作ったのだ。愛央はお礼を言うと、俺はこんなことを言った。


あお「たっくん、ありがとっ」

たく「いいよ。俺だって、愛央にたくさん助けてもらっちゃった」

あお「愛央助けたつもりないよっ・・・」

たく「昔にいつかはきっと・・・って言ったべ?」

あお「あっ・・・」


過去の愛央は素敵な女の子になりたいって自分で言った。 覚えているであろうか。


過去のあお「たっくんに甘えすぎて愛央が頑張らないとって思ったの。だからね、『いつかはきっと』愛央も素敵な女の子になるね」


たく「愛央がこんなこと言ってからこの3年間でここまで助けてもらうとは思ってなかった。当時いつかはきっと素敵な女の子になるって言ってたけど、今ほんとに素敵な女性って感じだと俺は思う」

あお「たっくん・・・・大好き!」

あい「きゅーぴー!!!」

たく「あいちゃん!?」

あお「どうしたの?」

あい「おめでとー!!!」

あお「ありがとう!」

たく「ありがとね。あいちゃん」

あお「卒業式、いこっ!」

たく「だな」


そして卒業式が始まった。愛央が先にもらって、俺があとに証書をもらう。愛央はかなり緊張していたが、次にもらう俺を見ると安心したようだった。そして、卒業式が終わると案の定・・・


あお「ぐすっ・・・」

たく「卒業、おめでとさん」

あお「たっくん・・・」

たく「やっぱ泣いたな」

あお「たっくん・・・うん」

たく「きんしゃい」

あお「たっくん、卒業おめでとう」

たく「みんなと別れんのがおいねぇんだろ?」

あお「うん」

たく「また会えるよ。『いつかはきっと』な」

あお「いつかは・・・きっと・・・うん!」


愛央はそう言うと泣くのを終わりにして、教室に帰った。俺は先生に呼ばれ少し話をしてから席につくと、愛央が隣の席の子といっしょに俺の前に来たのだ。


あお「たーっくん!」

たく「ふぁーねび、ってあじした?」

あお「たっくんが先生と話してる間に、みんなでこれ作ったの!」

たく「はひ?あにこれ」

あお「たっくんにサインボードみたいな感じでメッセージボード作ったの!」

たく「あんたら・・・たまにはやってくれるじゃねぇか・・・」

あお「後ろには愛央のサインも書いたよ!」

たく「ったく・・・愛央、ありがとな」

あお「たっくん、私大好き!」

たく「バカやめろ!アホ言うな!」

全員「アハハハハハハハハ」

あお「むぅ・・・」

たく「俺が恥ずかしくておいねぇよどうすんだよこれ」

あお「ぎゅーっ♡」

たく「ばかたれええええ!」

あお「ひゃあ!たっくん怒ったー!」

たく「おめぇはあいちゃんか!」


なんやこの漫才は。アホすぎてわろえてくるわ。と思ったのも束の間、俺は気づいたら家にいた。ちなみにその間の記憶は一切ない。


あお「たっくん、大丈夫?」

たく「あれ?俺家にいたの?」

あお「記憶ない?パパと車で帰ってきたこと・・・」

たく「記憶にねぇ・・・」

あお「愛央、やりすぎちゃったかな」

たく「いきなり漫才やってそのあとさよならやったあとまで覚えてる」

あお「ごめんね、愛央がいきなりあんなのやっちゃって・・・」


愛央はそう言ってベッドに行っちゃった。俺はすぐに引き止めて愛央に言った。


たく「待て愛央」

あお「なにっ・・・」

たく「飯食いに行こ」

あお「えっ?」

たく「卒業祝い。あいちゃーん、ごはんいこーか」

あい「きゅぴー!」

あお「えっ、でも愛央可愛い服ないよ」

たく「卒業式終わっちまったしこれが最後だよ。制服デート、行くぞ」

あお「たっくん・・・!うん!行く!」


そして制服のまま徒歩7分のファミレスへ。愛央と手を繋ぐなんて普段は俺が断るのに最後くらいは別にいいだろ?


あお「ぎゅ~♡」

たく「3月なのに若干冷えるな・・・」

あい「たったー、あいたんこれたべたーい!」

たく「あいちゃんはこれね。愛央は?」

あお「たっくんと同じのがいい・・・」

たく「たまにはちげーもんくえよ」

あお「でも愛央はこれがいい!」


そしてみんなでお昼を食べて家に帰った。これでもうこの制服も着ることないし、来月からは仕事を頑張るぞっ。

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琴乃家の日常 4th Season 小糸匠 @koito_2716

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