思わず目を瞠る小説名というものがこの世には存在する。その多くはミステリに起因し物語を閉じた直後に関わらず読者を再度作中へと連れ戻す吸引力を持つ備え付けの装置。今回の旅でも私は異郷へと連れ戻され、眼前に屹立する筆者の大胆な犯行の手際に舌を巻くのであった。
オラウータンの存在感に負けない、登場人物のキャラ付けがまずグッド。王道をゆく凸凹コンビはいいですね。結さん好きぃ。長身美女、小動物系女子、初老の源さんだけで、オタク的には大満足なのですが、物語のギミックも素晴らしい。真相に気が付いたときは思わず笑っちゃいました。非常に気分のいい読後感を得られました。
ミステリ短編としてとてもよくまとまっていました。最後の一文を読むまで真相がわかりませんでしたが、読むことによって膝を打ちます。オランウータンをこう料理するのは考えていませんでした。楽しみました。
二回目の読了で初めて分かった。最初はリドル・ストーリー的なものなのかな? という感想。しかし、細部を読むことにより……。探偵役のキャラも立っており、読みやすい。不条理な犯行現場に不条理な「オランウータン」。お薦めです。