第921話 珍しい鳥類を観賞しながら階層を下って行く件
真っ暗闇の6層の最終エリアは、そんな感じで晴れて攻略に成功した。これもミケの活躍のお陰なのだが、本人はプリプリしていてまだオコ状態。
何しろこの
そんな戦闘の後、暗闇の中で苦労して落ちた魔石を拾う子供達。大フクロウはスキル書もドロップしていて、それには香多奈もホクホク顔である。
一方の紗良は、肩の上の暴君を
そうして次の7層だが、まずは灯りのしっかりしたエリアでホッと一安心。お互いの無事な姿を確認しながら、さて次はこの層の探索開始である。
この最初のエリアにも、何故か真っ直ぐに動く歩道が設置されていて
それを揃って無視するハスキー達、茶々萌コンビもそれに続いて端のルートを進み始める。それを見て、何となく姫香とルルンバちゃんも逆の端へと避けて歩き始める。
後衛陣も、敢えて逆張りをする者は誰も存在せず。
「2号ちゃんだけ、またお試しで乗ったらいいよ……その代わり何か仕掛けが作動したら、バッと避けるんだよっ?」
「また無茶な指示出しして、ルルンバちゃんが混乱するでしょ? まぁ、全員が揃って罠にかかるよりは、随分とマシかもだけど」
「まぁ、必ず罠があるって決まった訳じゃないけどな。取り敢えず、子供たちは危ない
2号ちゃんは、悪いけどこのまま実験に付き合って貰おうか」
そんな会話で始まる、最初の建物エリアの探索はまずは順調に進んで行った。期待された
ドキドキしながら見守っていた一行は、やっぱり肩透かしを食らって微妙な表情に。そして最初のエリアの終わりで、パペット兵とウッドゴーレムの襲撃が。
今回もウッドゴーレムは蜂の巣を抱えており、召喚される殺人バチの群れ。その巣はガッチリと園芸師パペットにガードされており、遠隔からの破壊はちょっと無理。
敵もなかなかやるなと、ルルンバちゃんも突っ込んでの乱打戦が始まる。ハスキー達も飛翔する蜂の群れに苦労しながら、敵の数を減らして行く。
そんな戦いが数分続き、ようやく敵の召喚ウッドゴーレムの駆逐に成功した。そこからは割とあっという間で、最初の敵の一団は無事に掃討されて行く流れに。
片付いたねと、応援を飛ばしていた末妹は何となくやり遂げた表情。蜂に刺されなかったと、逆に長女は心配そうにハスキー達を見回している。
山の上の生活では、たまにあるこの蜂刺され……敵は派手な色のスズメバチやクマンバチだけではない。真っ黒なジガバチってのもいるし、ミツバチだって刺して来る。
犬も虫に刺されるし、それが原因で病気になる事だってある。ところがレイジーは、そんな殺人バチを炎で完璧に焼却してしまう剛腕振り。
これには応援していた子供たちもビックリ、半分呆れながらも刺されるよりはいいよねって表情に。そんな感じで、最初の建物エリアは完勝の運びに。
そしてドロップ品を拾って、扉を潜って次のエリアへ。ちなみに回収品の中には、蜂蜜の入った瓶や何故かエーテル瓶まで混じっていた。
お次の建物エリアでは、派手な羽根を持つクジャク獣人がトキ獣人を引き連れて出現した。その数は1ダース余りで、なかなか手強かったが特に妙な戦法は使って来ず。
前衛に混じって姫香も試しに戦ってみたが、変わったスキルを使う存在は確認されなかった。ただし、階層も上のせいか体力や腕力は強い印象。
そんな連中を5分足らずで討伐し、2つ目の建物エリアも無事クリア。
それから追加で2つの建物を攻略し、その次の建物エリアは植物園のような樹木多めの
進行方向からは、一際大きなウッドゴーレムとその手下が1ダースほど。その肩には鮮やかな羽色の鳥もとまっており、そいつ等もモンスターのようだ。
「おっと、今回の一団はかなりの数だな……その辺の植物も、どうやら襲って来そうな雰囲気だし後衛陣も注意して臨もうか。
ムームーちゃん、植物系に先制で魔法攻撃行こうか?」
「頑張って、みんなっ……あの花は、ひょっとして蔦に咲いてるのかな? あっ、今回も地面から球根モンスターが出て来そうだよっ。
2号ちゃん、出て来る端から踏み潰して倒しちゃえっ!」
素直な2号ちゃんは、末妹の指示に何の疑問も持たずに従っている。そして父ちゃんに頼まれた軟体幼児も、炎のブレスでうねうね動く花付きの蔦を焼却処分。
思い切った先制パンチだが、
途端に賑やかになる戦場だが、後衛陣の相手にも変化が。周囲から甘い匂いが漂って来て、何やら妙な感じに仕掛けられている気配が。
護人は咄嗟に、皆に呼吸のガードを言い渡してその発生源を探す素振り。その正体は、木々の奥に潜んでいたラフレシア級の巨大な花だった。
うっかりその臭いを吸い込んだ末妹は、フラフラしながら今にも倒れそう。2号ちゃんの手伝いで、球根モンスターを
ソイツが元凶だと察した護人は、シャベルを手に『掘削』スキルでそいつに大穴を空けてやる。その攻撃がきっかけで、その花の頭上に狂った精霊が出現。
それを見掛けた軟体幼児が、
護人も手強い精霊系の出現に、驚き顔ながら今更あとにも引けない。敵の本体を壊した事で、ヘイトは完全に護人へと向いていたのだ。
薔薇のマントも攻撃を加えるが、これもスルーされて気付けば敵は目の前に。それと同時に強烈な甘い匂いに襲われて、ムームーちゃんが途端に護人の肩の上から落っこちて行った。
《耐性上昇》スキルを持つ護人も、危うく頭がクラクラ状態に
それで幾分かマシになったが、敵は手を伸ばせば触れられる至近距離である。護人は必死で理力をかき集め、《奥の手》の一撃を狂った花の精霊に見舞う。
その途端、敵は絶叫して次第に薄くなって消え去ってくれた。何とか始末出来た事に、護人は安堵のため息をついて薔薇のマントに礼を言う。
それから地面に転がってる軟体幼児を回収して、気付けのポーション投与。いつ見ても、透明なゼリーに色が拡散されて行く様は面白い絵面である。
これで駄目なら紗良に診て貰うしか無いが、幸いにもムームーちゃんはすぐに意識を戻してくれた。それから
「花から生まれた精霊は何とか倒したよ、ムームーちゃん。しかし、あの
薔薇のマントの機転のお陰だな、改めてありがとう」
「叔父さん、平気だった? 私も危なかったけど、何とか復帰出来たよっ……前衛陣のみんなも、ウッドゴーレム軍をさっきやっつけ終えたみたい。
ってか、多分だけど叔父さんが倒した奴が、階層主じゃないかなっ?」
「そんな感じがするねぇ、ドロップも豪華で魔石(中)が落ちてるし。宝箱も湧いてるねぇ、それから奥にあるのは次の層へのゲートかな?」
その事実を聞いて、そうだったのかと改めて驚く護人であった。確かに長女の言う通り、巨大花のいた場所には宝箱が湧いており、その奥にはゲートが窺える。
勝利を収めた前衛陣も、こちらに集合してこっちの敵が当たりだったのかと悔しそう。それはともかく、香多奈は宝箱を開けるよと大人たちに確認しての開封作業。
まぁ、ツグミがすぐにサポートに駆けつけていたので問題は無さそう。そんな宝箱の中からは、薔薇やエーデルワイスのブーケが盛りだくさん。
うわっと驚く末妹だが、ちゃんと中級エリクサーや魔結晶(中)などの当たりも一緒に入っていた。それから虹色の果実や、大物の鑑定プレートまで出て来た。
これは当たりだねと大騒ぎする香多奈だが、長女もたくさんの花束には戸惑いを隠せない。魔法の鞄に入れても枯れないだろうが、扱いには気を付けなければ。
まぁ、毎度のお
「ふうっ、これで7層もクリアだね……今回の間引きはA級ダンジョンだし、10層もこなせば多分だけど充分だよね、護人さん?」
「そうだね、5層には帰還用の魔方陣もあったから、恐らく10層にもあるだろう。1日ほど中休みがあるとは言え、次にはまたA級ダンジョンのレイド作戦が待ってるからね。
今日は10層て帰還しよう、皆もそれでいいね?」
「仕方ないなぁ、戻る時間も考えなきゃだもんね……そう言えば、今回の拠点の津和野まではどうやって戻るの、叔父さんっ?」
そちらも、島根の職員が外で待機してくれているので問題は無い筈。あとは朝の順番とは逆に、島根の各地に散らばったA級チームを拾って戻れば良い。
それを聞いて安心した子供たちは、それなら探索終わりに家族でゆっくり出来るねと良い笑顔。それから小休憩を経て、それじゃあ10層まで頑張ろうと気勢を上げている。
そんな感じで始まる、残り3層の探索である……まずは8層目だが、段々と出現する敵も多くなって来た。具体的には、1つの建物エリアに出没する雑魚は平均2ダース近く。
そして今回も出迎えたのは、動く歩道エリアが最初みたい。それを敢えて避けて通るのも、全く一緒の来栖家チームである。そして2号ちゃんだけ、生贄的にそれに乗って移動する。
何だか出荷される商品みたいだねと、余計な事を口にする香多奈は素直過ぎてダメなパターン。気にした素振りも無い2号ちゃんだが、実はその終点で悲劇が待っていようとは。
2度の何も無かった事実が伏線となっていて、警戒も随分と薄れていたのも大いに作用した。その結果、見事に歩道の終わりの場所に設置されていた罠に
その罠は、何とも単純な落とし穴の仕掛けで急に家族の視界から消える2号ちゃん。わっと驚いた声をあげる末妹と、何事かと歩みを止める前衛ズ。
すぐ近くにいた後衛陣は、慌てながらたった今出来た落とし穴を覗き込む。そこには、無事に地面に着地していた防御特化ゴーレムと、それにたかってる無数のスライムの姿が。
平気と問われた2号ちゃんは、しゅたっと片手をあげて無事をアピール。引き返して来たツグミに《アビスドーム》の魔法をかけて貰って、穴からの脱出を図る。
その辺の流れは、既に前回の探索で手慣れたモノの両者である。そして穴にたっぷりのスライムは、レイジーとムームーちゃんが全て焼却処分してくれた。
ドロップした魔石も、ツグミが拾ってこれで任務は完了。
――お騒がせの仕掛けは、こうして呆気なく幕を閉じたのだった。
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