第843話 冬の訪れを感じながら協会に報告に赴く件
2チームでの探索が終わって、次の日の休日は朝から来栖邸は大騒ぎ。何しろ回収したアイテムに、各種昔のゲーム機がこれでもかって程に並んでいたのだ。
ソフトも豊富に揃っているので、これはもう遊び甲斐がある。そんな訳で、子供たちはリビングを占領しての、ゲーム機でのお試しプレーに興じていた。
それには近所の和香と穂積が参加して、
自分の姿の茶々丸を見た遼は、ただ面白そうに頬を突いたり相手の反応を確かめている。そんな盛り上がりの隣では、紗良と姫香が回収アイテムの整頓を行い中。
妖精ちゃんも参加してくれて、魔法アイテムの数はさすがに“鬼の報酬ダンジョン”だけはある。紗良も錬金レピシを手に、うわぁって表情を浮かべていた。
それもその筈、その錬金レピシの内容は“ホムンクルス製造”だったのだ。人工の生物を産み出すとは、まさに禁断の錬金術ではなかろうか。
「ザジチームも、昨日は随分と儲かったみたいだよね……こっちもなかなかの報酬だし、これは協会への報告が楽しみだよっ。
ちなみに、昨日のスキル書の相性チェックも凄かったもんね」
「凄かったけど、来栖家チームには覚えた人が出なくて残念だったな。まぁ、ギルド『日馬割』として見たら、とっても素晴らしいスキル獲得ラッシュではあったけど。
本当に、5人が一斉にとは滅多に見れない快挙だぞ」
「本当にそうだよね、さすが“鬼の報酬ダンジョン”って感じだね……魔法アイテムもそれなりに多かったけど、家族で使う武器や装備品はそれ程でも無いかなぁ?
良い品なのは、盾とロザリオくらいって感じだね」
【魔法のはたき】使用効果:自動清掃・永続
【ペーパーナイフ(魔)】使用効果:自動カット・永続
【魔法の栞】使用効果:状態保存(本) ・永続×5
【魔導ゴーレムパーツ(腕)】使用効果:魔導ゴーレムの腕・永続
【知の首輪】装備効果:魔法防御&魔力up・中
【知の軽兜】装備効果:魔法防御&知力up・小
【不可侵の盾】装備効果:不壊&不可侵&ダメージ吸収&耐性up・特大
【裁鬼の剣】装備効果:光属性&不折&筋力up・中
【鬼滅の日本刀】装備効果:聖属性&不折&滅殺・大
【拳法家の手甲】装備効果:敏捷&筋力&拳法能力up・中
【熱血の拳法着】装備効果:敏捷&筋力&着脱&拳法能力up・大
【漆黒の吸血マント】装備効果:闇属性&耐性up&吸血・大
【闇のレイピア】装備効果:闇属性&不折&腐敗付与・大
【聖なるロザリオ】装備効果:聖属性&魔力回復&耐性up・特大
その他:『強化の巻物』(攻撃)×1、『強化の巻物』(耐性)×2、『魔法の鞄』(空間収納)×1、『知恵の果実』(摂取者の知恵を永遠にアップ)×1、『魔導の書』(魔法スキル熟練度アップ) ×1、『錬金レシピ本』 (ホムンクルス製造)×2、『鑑定プレート』(薬品専用)×1、『ルビーの指輪』(魔力&魔法防御up)×1
お隣で同じく魔法アイテムのチェックをしている陽菜たちに対して、紗良は不満そうな口振りでそう告げる。そんな陽菜たちも、目ぼしいアイテムは多くはなかったみたい。
妖精ちゃんの助けを得て、何とか鑑定を終えた両者はホッと一息。後は稼いだ魔石を協会へと売りに言って、来栖家は動画編集の依頼をするのみである。
今回の魔法アイテムの中で、『裁鬼の剣』と『拳法家の手甲』はゼミ生の大地にプレゼントする事が、護人と紗良の話し合いで決定した。彼は三杉と同じく、来年の春からの中学校の教師として就任が決まったのだ。
しかも体育と数学と言う、割と変則的な担当となっている。現役探索者の登録もしている大地は、学校の用心棒としての側面も採用に大きく関わっている気が。
本人もそこは心得ており、地元貢献が出来るのならと快諾してくれた。一番渋ったのは実は小島博士で、有能な助手が欠けるのが嫌だったみたい。
そこを美登利に叱責されて、さすがの教授も考えを改めた模様。何しろ今の山の上の棲家も、ゼミ生チームはほぼ無償で住まわせて貰っているのだ。
三杉と柊木の新居にしても、いつの間にやら慎ましくも立派な一戸建てが敷地の入り口側に出来ていた始末。こちらも工事代を請求される事もなく、本当に気前の良過ぎる雇い主である。
その代償として、地域貢献の依頼くらいは何を置いてもこなすべき。第一、雇い主の末っ子が、その中学校に来年から通い始めるのだ。
それならば、用心棒の依頼もドンと来いってなモノである。
ちなみに、他の魔法アイテムだが魔導ゴーレムのパーツは、ルルンバちゃんの予備に取っておく事に。『不可侵の盾』は、護人か萌のどちらが使うか協議中。
『熱血の拳法着』は、茶々丸の人型形態の際の予備になりそうな雰囲気。こちらも“着脱”がついてるので、そう言う点でも便利である。
『聖なるロザリオ』は、高性能なので恐らく紗良の所有となるだろう。それから『知恵の果実』や『魔導の書』あたりも、紗良が使ってパワーアップする公算が高そう。
前回の“浮遊大陸”で獲得した『ステアップ果実』は、護人と姫香の前衛陣で有り難く使わせて貰った。余ったもう1つは、凛香チームの隼人にお裾分け。
向こうも町の間引きを頑張ってくれているし、秋の畑の収穫作業で一番働いてくれたのが隼人だった。そのお礼を兼ねてのプレゼントだが、本人も果実の効果の実感はあると言ってくれていた。
それは嬉しい限りだが、来栖家の2人に関しては実はあまり効果を実感出来ず残念な限り。虹色の果実も毎回家族で食べているので、恩恵も鈍くなって来ているのかも。
だとしたら、以降は他のチームに分けるべきか悩み
それから昨日の夕食会の後に行った、お隣りさんチームを交えてのスキルの相性チェック祭りの結果である。こちらは最近には珍しく、何と全部で当たりが5人も出る結果に。
まずはスキル書から、凛香チームの小鳩が『魔法の矢』を取得に至った。後衛とは言え、風系の簡易癒し技と光系の灯り魔法しか持たなかった少女は大喜び。
家事スキルは凛香チームで随一で、来栖家での料理のサポートも毎回こなす小鳩だが、探索では見せ場はあまり無い。それが、今回の攻撃系スキル取得で大きく変わって行きそうな気配。
それを一緒に喜ぶ凛香チームの面々だが、実は隼人も『重剣士』と言うスキルを得ていた。チームでは主に盾役の隼人だが、これで攻撃力も大幅に上昇しそう。
それから変わったスキルを取得したのは柊木で、その名も『遊び人』と言う名前。妖精ちゃんの説明によると、これはゲーム等の勝ち運の上昇みたいな効果のスキルらしい。
そう聞くと有能そうなスキルだが、どうも某ゲームの職業を思い浮かべてしまう一行だったり。当の本人はへらへらして嬉しそうなので、まぁ問題は無いと思われる。
それから唯一のオーブ珠からの取得は、ゼミ生の大地で《後の先》と言う武芸系のスキルだった。こちらは反撃と言うかカウンタースキルで、自在に使いこなせれば強力な技には違いなさそうだ。
これも就職祝いにダンジョンからの恩恵だと、一段と盛り上がった昨日の夕食会ではあった。お泊まり組に取得者が現れなかったのは残念だが、ギルド的には素晴らしい実績である。
そう評する陽菜やみっちゃんは、本当に性格の良い娘さん達には違いなく。そんな彼女達は、残りのお泊まりの間にこなす行事を綿密に計画中。
例えば女子だけでちょっとお出掛けドライブとか、新人ズの探索お手伝いとか。ドライブに関しては、楽しむのもそうだが皆の運転技術の向上も目的である。
「青空市も終わったし、また来月もあるからあまり詰め込んでも意味は無いかな。取り敢えず、今週の真ん中に戻るとしてその2つを明日以降でこなそうか。
姫香と紗良姉も、そんな感じで良いかな?」
「そうだね、今日の午後に協会に換金に出掛けて、新人ズの探索先に当たりをつけておこうか。ギルドの一員として、新人の育成もしっかり手伝わないとね」
「ああっ、そうっスね……いやぁ、青空市とメインの探索が終わっても、やる事が盛りだくさんで楽しいっスね!」
そう言って盛り上がっている陽菜とみっちゃんだが、ギルドを思う気持ちは本物の様子。呑気な怜央奈も、残りの日程を楽しむ気満々である。
ちなみに最後の5人目のスキル取得者だが、何とズブガジだった。こちらは今日の朝、家畜の世話を終えた子供たちの
さすがに昨日の時点では、スキル書の相性チェックには参加していなかったズブガジを早朝にとっ掴まえて。女子チームの獲得分も交えて、相性チェックをした子供たちは凄い執念だ。
その結果、ズブガジが取得したのは『拳法家』と言うスキルだった……ルルンバちゃんと言い、魔導ゴーレムって接近戦は本来得意なのかも知れない。
これでズブガジがますます強くなるかは微妙だけど、ルルンバちゃん以外の疑似生命体がスキルを覚えられる事が判明した。ムッターシャに言わせると、相棒のスキル取得はどうやら初だったらしい。
仲間も驚くこの『拳法家』スキルだが、本人的には気に入っている模様である。朝の早い時間から、さっそくその動きを確かめている魔導ゴーレムだったり。
それが面白いのか、香多奈たちは拳法使いの動画をズブガジに視聴させてのインプット作業を少々。今はそれも飽きて、家に籠って昨日獲得したファミコンを遊んでいる所。
ちなみにファミコンは1983年の発売で、ゲーム専用機としてのコンピュータの発売は画期的だった。ソフトが高いのが難点だったが、世の子供たちが熱狂したのは本当である。
そんな午前を過ごして、午後には来栖家チームとザジ達女子チームとで協会へと換金へ向かう事に。香多奈は今回は、キッズ達と遊ぶそうでお留守番である。
そんな日馬桜町の協会支部では、毎度の仁志支部長と能見さんが一行をお出迎え。それから動画のチェックをしながら、紗良や姫香とお喋りに興じている。
ちなみに女子チームの動画は、データを一応渡しはしたけど編集は怜央奈の方でする予定。そんな女子チームは、一緒になって来栖家チームの動画を観て楽しんでいる。
その騒がしさは、思わず護人と仁志が距離を置く程。
そんな2人に江川が近付いて来て、今回の魔石販売額が3百万だと告げて来た。今回は魔結晶(中)が30個くらいあったのだが、これを売ると女子チーム分の現金がなくなりそう。
自粛して正解だったと思いつつ、護人と仁志は真面目な話を続ける。新人の保護者付き探索はともかくとして、雪が降る前に
でないと雪に閉じ込められて、さすがのA級探索者チームもにっちもさっちも行かなくなってしまう。問題は、そのワープ拠点の設置旅行をいつ行くかである。
それから、もう1つは誰と行くか……ひょっとして、異世界チーム辺りは一緒に行きたいと言い出すかも。この前の宮島旅行に味を占めて、観光に目覚めた可能性も。
その辺諸々、調整が大変だが時期は早いに越したことは無い。
――騒がしい女性陣を見遣りつつ、護人達はそんな事を話し合うのだった。
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