第839話 “遊”のエリアでメダル稼ぎを頑張る件
ちなみにこの8層のメダルのノルマだが、4百枚に上がっていた。プラス百枚となるとかなりキツいが、そこはもう家族で力を合わせて頑張るしかない。
そんな思いの紗良だけど、今は仲良くルルンバちゃんとクレーンゲームをしている所。この8層には、中型のクレーンもあって景品はボリュームもアップしている。
そちらもメダル1枚で出来るので、ある意味お得ではある。ただし、微妙にアームが弱くなっていたり、カプセルの配置が難しくなっている気も。
それを紗良とルルンバちゃんは、交替でプレイして和気
何とカプセルに混じって転がっていた、スキル書も1発で獲得してしまっていた。凄いねと驚く紗良に、ルルンバちゃんも少し得意そう。
このホンワリ空間は見ていてとても
「あっ、そっちのカプセルにメダルがたくさん詰まってるよ、ルルンバちゃんっ……やった、今度も上手く掴めたねぇ!
これでまた、メダルの獲得数が増えるねっ」
そう言って喜ぶ紗良の手元には、30枚のメダルが既に70枚以上へと増えていた。これも積極的に、中型の難しいタイプのクレーンゲームに挑んだ結果である。
ルルンバちゃんは精密系の操作は得意だろうと思ってたけど、まさにそうなのは軽い驚き。前のエリアでは、遠慮してたのか全くやりたそうな素振りはしていなかったのだ。
それはともかく、このペアで何とかメダルを百枚までは増やしたい所。末妹の香多奈はともかく、今回も恐らく姫香は全部ロストする確率がとっても高い。
後はもう、さっきみたいに護人に頼るしかないだろう。本当は、余剰分のメダルが多い程に最後の宝箱の中身が豪華になるっぽいのは分かっている。
とは言え、そこまで気を回す余裕か無いのも事実。精々がクリアのラインまで、家族で頑張ってメダルを増やすのだ。姫香には悪いけど、下手に頼ると破綻は目に見えている。
そんな訳で、メダル百枚を目標に頑張る紗良なのであった。
その頃護人は、コロ助のエントリーの倍率を見て悩んでいた。9.5倍と言う数値は、対戦相手の敵がかなり強いと言う意味では無いだろうか。
もっとも当のコロ助は、召喚されたバトルエリアでテンション爆上がりで待機中。敵よ早く出て来いと、勇ましく戦闘準備をして待ち構えている。
そんな訳で、護人は仕方なく20枚ほどコロ助に賭けての試合開始を選択する。その途端、高らかに開始のラッパが鳴り響き、バトルエリアに出て来たのはレゴで組み立てられた巨大熊だった。
確かに3メートル級のブロック熊は強そうだが、コロ助は待ってましたと敵とじゃれ始める。ちなみにバトルエリアは、疑似空間のコロッセオみたいな場所である。
ご丁寧に観衆まで再現されており、恐らく賭けに興じた連中が両者の対戦に熱く声援を送っている。護人も当然、家族であるコロ助に頑張れとエールを送る。
レゴブロックの大熊は、恐らくゴーレム風のモンスターで動きはややぎこちない。それでもパワーはありそうで、
じゃれ合うと言う表現だが、コロ助は得意のハンマーも取り出さずに戦いを進めていた。そして『牙突』や頭突きで敵の強さを確かめていたけど、途中でコイツ弱いなと見切りをつけたみたい。
ようやく取り出した白木のハンマーで、素早い動きで死角に入ったと思ったら。大振りの一撃で止めを刺して、哀れなレゴ仕様の大熊は粉砕されて行ってしまった。
「よしっ、よくやったぞコロ助! まずは1勝だな、次は……あれっ、油断するなコロ助っ。敵はまだ生きてるぞ、反撃が来てるっ!」
そう言う護人も完全に油断していた、まさかレゴブロックの特性がこんな感じで反映されるとは。粉砕されたと思っていた対戦相手は、ブロックが崩れただけだったと言う。
コロ助が視線を外した途端に、再び合体して今度は触手状のモンスターを形作っていた。首と前脚をガッチリロックされたコロ助は、途端にピンチへと追い込まれる。
これには見学していたレイジーや軟体幼児も驚いて、これは何デシかと敵の種類の見定めに忙しそう。その敵の正体だが、やはりゴーレムなのだろう。
多型に変化が可能で、どこかに核の部分があると思われるがどうだろうか。ブロックの触手に捕まったコロ助だが、しかしパニックに陥ってはいなかった。
逆に、まだ戦えるんだと嬉しそうなのは気のせいだと思いたい。そんなコロ助は、咄嗟に巨大化を発動して敵の束縛から簡単に逃れてしまった。
強引な手段も、まぁコロ助の持ち味の1つではある。物事を深く考えずに、対処出来てしまえるのは強みと言って差し支えは無いだろう。
そしてそのパワーで、再びブロックの塊を
相手からすると、
それを力ずくでブロックを吹き飛ばして、核を見つけ出して来るとは。ムームーちゃんもビックリの逆転劇に、ようやく勝利確定の画面表示が。
そしていきなりの190枚の利益である、何にしろ初戦のコロ助が無事に勝てて良かった。仮想空間から戻って来たヤンチャ者を、頭を撫でて
そうしていると、焼きもちを焼いたレイジーと軟体幼児から次は自分だとの熱いコールが。レイジーはともかく、ムームーちゃんをこのバトルに送り出すのは
我が
遠隔をキープ出来れば何とでもなるが、それが可能かは敵との兼ね合いもあって不確定だ。つまり戦闘経験の浅いムームーちゃんを、そんな危ない場所に放り込むのは論外って事。
そんな感じで
時間は残り10分を切っており、そろそろ
「おっと、それは良かったな……こっちが350枚だからこれでノルマクリアだ。駄目ならまた、別のゲームを慌てて探す破目になってたよ。
多分だが、姫香の方は今回も駄目っぽいからね」
「ええ、姫ちゃんの悲鳴がちょくちょく聞こえて来てますからね。多分だけど、あと1個とか惜しい並びまでは行くんでしょうねぇ」
それが
それから何も聞かないでって感じで、メダル1枚を手渡して来る。さすがに2回連続で丸坊主ってのは、プライドが許さなかったのだろう。
まぁ、たった1枚残っても関係無いとの見方もあるけど。そんな冷酷な言葉を平気で口にする末妹は、少し離れた場所でまだゲームに興じている模様。
よく見ると、
姫香もあのキッズ達の姿を見たら、自分の体たらく振りが増々みじめになりそう。お楽しみ中の所を悪いけど、残り5分になったので集合の号令を紗良が掛けてくれた。
意気揚々と戻って来たキッズ達だが、メダルの数に関しては+40枚と微妙だった。どうやら楽しむ事にかまけて、増やす方はおざなりになっていた模様。
それでも仕方無いよねと、優しい言葉を発する家族の面々だったり。特に姫香は、他人の評価など間違っても口に出来ない立場である。
それでもチームとしては、余裕で5百枚を超えているので問題無し。
「あ~っ、面白かった……茶々丸ってば、意外とレバー操作が上手いんだよねぇ。ゴール数ではトップだったけど、でも一番最初で失敗した数も茶々丸が1番だよっ。
萌は平均して上手だけど、詰めが毎回甘いんだよねっ!」
「そうっ、みんなで楽しんで良かったわね……取り敢えず、家族の力で次の層には行けそうで何よりだわ。果たして次の9層目に、中ボスはいるのかしらね?」
「あ~っ、どうだろう……いないんじゃないかなぁ?」
そんな感じで語り合う子供たちだが、平穏な雰囲気だったのは途中までだった。姫香が末妹に、今回の成果を訊ねられた瞬間に場は一気に険悪に。
そしてさっきと同じく、クリアおめでとうのモニター表示からカウンター横に出現するゲートと宝箱。やったねと、さっきまでの喧嘩も忘れて喜ぶ現金な子供たちである。
宝箱の中身だが、定番の鑑定の書や薬品に混ざって、今回はゲーム機も多かった。昔懐かしのファミコンやプレステやセガサターン、PCエンジンまで出て来る始末。
それぞれゲームソフトも10本以上ついていて、何となくお得感が
テレビゲームの相手をしてくれるペットなど、なかなかレアな存在には違いない。とは言え、他には魔法アイテムっぽい品は入っておらずそこは残念かも。
そんな宝箱のアイテム整理が終わって、いざ次の層へのゲートを潜る来栖家チームである。そろそろ時間も午後3時を過ぎて、体力的な心配も本来はする頃。
ところが今回は、後半がゲーセン仕様で子供達も楽しみまくっていると言う。こんなダンジョンばかりなら、攻略が楽で平和なのにと護人も思わず思ってしまう。
それはともかく、ここは本来は中ボスが配置されているエリアである。その点は気を抜かず、排出された瞬間から周囲を確認するチームの面々。
パッと見は、先ほどと同じくゲームセンターそのものの構成に変わりはない。カウンター席にはパペット店員が立っていて、このエリアの軍資金もしっかり確認出来る。
「中ボスっぽいモンスターはいないね、護人さん……あっ、でもクリア条件はより厳しくなってるみたい。
今回はメダル5百枚だって、これは大変だっ」
「そうだね、これは姫香お姉ちゃんへの出資を考え直すべきかも……?」
何でよと悲鳴染みた反論を述べる姫香だが、その気持ちは実は全員一致していた。それじゃあ20枚で良いよと、姫香は飽くまでスロットにこだわる模様。
仕方無いなと、今回も各々のやりたいゲームへと散っていく子供たちである。護人もレイジーとコロ助を引き連れて、ペット参加型のゲームを捜して回る。
それは意外とすぐに見付かって、しかも先ほどと同じモンスター対戦型のゲームだった。ペット参加オーケーなのも同じだが、1つだけ相違点が見受けられる。
つまりは対戦相手に、この層の中ボスも選べられるのだ。
――しかも賭けの倍率は相当高いようで、これはやらない手は無い?
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