第775話 10層を超えた時点で驚きのサプライズを受ける件
さて、9層だ……あと2層で何枚コインを集められるかなと、香多奈の意識はそこにしか向いてないみたい。護人としては、何とか失踪チームの手掛かりを得たい所。
確率が高いのは、やはり10層の中ボスの間だろうか。何となくだが、その宝箱の中にチームの遺品が入っている気がしてならない。
その場合、救出依頼としては失敗と言う事になるかは不明である。顛末は把握出来たとしてオッケーを貰えると良いけど、それを望むのも薄情な気がする護人。
ちなみにこのエリアで行方不明になったのは、2チームで『無頼漢ズ』が失踪8日目らしい。もう片方の『ブラッサム』に至っては、10日前とかなり絶望的な数字である。
B級チームが隣のエリアに救助に出掛けたのは、そこで失踪したチームが前日に行方不明になったから。そして救助に出掛けたのが、今から5日前の事らしい。
そちらは現在、異世界+星羅チームが絶賛潜行しての手掛かりの捜索中。さっきも通信が掛かって来て、向こうはもうすぐ10層の中ボスに挑むとの事。
そこで何も無かったらどうしようと、ザジは珍しく戸惑っている様子だった。確かに今回は救助が目的なので、10層以上に潜っても本来の依頼に反している気がする。
それはこちらも同じ事、そもそもC級探索者が10層へと辿り着いたかも怪しい所だ。そんな事を考えもしない末妹は、熱心にハスキー達の戦闘風景を応援している。
頭の上に乗っかっている妖精ちゃんと、絶対に3枚ガチャで儲けようねと熱く語り合ってるチビッ子コンビ。欲望に忠実なのはいいけど、前には出過ぎないで欲しい。
その点は、ルルンバちゃんが忠実に壁になろうと側に寄って来ている。木板の通路は割と狭いので大変だけど、そんな気配りの出来るAIロボは素晴らしいと思う。
そんな事を護人が考えていると、前衛の戦いは終了の運びに。リザードマンとカエル獣人の群れを倒したが、今回はコインのドロップは無かったようだ。
そんな訳で進み始める前衛陣、そして再びワニの群れと遭遇。でっかい奴がいるとの末妹の嬌声と、それに果敢に挑み始める萌と茶々丸のチビッ子コンビその2。
ワニの咬み付きを素早く避けて、2本の特性の違う槍で串刺しにして行くその所業は恐るべし。4メートル級の大ワニも、モノの数分で魔石へと変わって行った。
そしてドロップする幽霊コイン×3枚に、それじゃないともどかしそうな香多奈と妖精ちゃん。3枚揃えるミッションは、意外と大変なのかも知れない。
それよりも、茶々丸の調子はあれ以来好調をキープしている模様で何よりだ。遼の背格好に、そろそろ慣れて来たせいかも知れない。
同じく9層の探索も好調で、これが救助依頼で無かったらとっても楽しめた筈。そして出て来たカバ型モンスターに、張り切って殲滅に向かうハスキー達。
末妹ももちろん、コイン出せ~とマブダチの小さな淑女と盛大に声援を送っている。それが叶ったかは不明だが、とうとう念願の竜のコインを3枚ゲットである。
大喜びの2人だが、大カバは他にも皮素材やらもドロップしてくれた。それを魔法の鞄に仕舞い込みつつ、紗良は
そうこうしている内に、前衛は木板の通路をどんどん進んでこちらも好調。立ち塞がるモンスターの群れをバシバシ倒して距離を稼いでいる。
その道中で、見事に川の激流から突き出た大岩の裏に、宝箱が置かれているのをツグミが発見。その中からも鬼のコインを3枚発見して、竜のコインじゃない事を残念がる末妹である。
贅沢な
その分をガチャで取り返そうと画策する、香多奈の熱意はある意味アッパレなのかも。家族からの賛同は得られない中、妖精ちゃんを味方によく頑張っているとも。
そんな来栖家チームの探索も、10層へのゲートを発見していよいよ佳境へ。護人としても、10層で何らかの成果を得られなかったらどうしようと答えはまだ出ていない。
休憩は中ボスの間の前で取ろうと、姫香の提案で一行はそのままの勢いで10層へと突入する。そして熱烈歓迎のリザード兵を返り討ちにして、その場の安全をキープに掛かる。
その後も、大タニシや大アメンボにちょっかいを掛けられつつの進軍に。気付けば20分も経たない内に、10層の中ボスの間が見えて来た。
それは思いっ切り滝壺の浅瀬の中で、それなりに迫力があって見事な景観だった。両端の切り立った崖の中、降り注ぐ陽光は滝壺をスポットライトのように照らしている。
そこに待ち受けるのは、さっき見た大カバとそれに騎乗するリザードマンのペア。リザードマンは豪奢な衣装で、肌は白くていかにも特別って感じがする。
大カバも目が6個に足は8本あって、妙なキメラ感が満載である。そんな事に物怖じしない姫香は、さぁ誰が行こうと楽しそうに戦士を
どうやら自分は、5層で暴れたので順番を譲るつもりらしい。
「それじゃあ、今度は俺が行こうかな……ルルンバちゃんも行くかい、今日はあまり戦う機会が無かっただろう。滝壺は浅瀬みたいだから、あの大カバと殴り合って見ると良いかもな。
レーザー砲を使うと、1発で終わる気がするからね」
「そうだね、叔父さんがルルンバちゃんに騎乗して突っ込んで行ったらいいよ。きっと格好良いよ、だって向こうはカバに乗ってんだよっ!?
何かバカにされた気分だよ、そう思わないっ?」
「思わないけど、確かに今日はルルンバちゃんの出番は無かったねぇ。ついでにミケも、全く戦闘に参加してない気がするけど。
それじゃあお願いね、護人さんっ!」
そんな訳で、ほぼ今日の初仕事の護人とルルンバちゃんのコンビで、敵の中ボスと騎馬戦を行う流れに。ミケはまるで関心は無いようで、紗良の肩の上で器用に箱座りしている。
ちなみに中ボスの周囲には、リザードマンと大タニシが割とたくさん。そっちは私達で片付けるよと、姫香もヤル気充分でサポートに参加する構え。
そんな訳で、いざ10層の中ボス戦の開始である。ルルンバちゃんに乗った護人は、“四腕”を発動させて勇ましく敵の大将と対峙する。
その気迫が伝わったのか、向こうも大カバを操作してこちらへと突っ込んで来てくれた。茶々丸は羨ましそうだが、今は遼の姿なのでこの突進合戦には参加出来ず。
滝壺の中央での激突は、ある意味物凄い迫力に満ちていた。ここだけ川幅が広くなっていたので、浅瀬ながらも本格的な騎馬戦の雰囲気は充分に味わえる。
別に護人も楽しんでいた訳では無いけど、思わず怒声を放ってその瞬間には興奮を押し出していた。そして突かれた槍の穂先を
残念ながら、護人の技量に対して敵の中ボスのリザードマンは響く相手ででは無かった模様。それは騎乗していた大カバも同様で、ルルンバちゃんに激突されて完全に目を回していた。
そこからの末妹に促されてのパンチは、ある意味見モノだった。アームが変形してドリルが出たと思ったら、大カバのこめかみに吸い込まれて行ったのだ。
見事なフックをテンプルにぶち込んで、AIロボのノックアウト勝利である。
そしてその場に転がり出る、魔石(小)が2個にスキル書が1枚。カバの皮素材も出て、ドロップ品はまずまず。ついでに滝の側には、ゲートが2つと例のガチャ機が2台。
ここにも3枚用と1枚用、ちゃんと2種あるようでまずは良かった。その隣には宝箱も置かれてあって、中身が楽しみではある。
周囲の雑魚の掃討戦も、極めて順調で苦戦もせずに終了の運びに。ミケどころか、紗良も一度も戦闘に参加せず“太古のダンジョン”の10層までを踏破してしまった。
その手際を褒めながら、姫香はペット勢に
「やった、宝箱からもコインが出て来たよっ……しかも竜のコインだ、ついでに鬼のコインも3枚出て来たね。えっと、これで3枚ガチャは7回引ける計算かな?」
「おおっ、凄いじゃん……他は薬品系と木の実と、それから鑑定の書にキラキラした鎧が1セットかな? 後は素材系が割とたくさんに、また巻貝の通信機が1セット入ってたよ。
何か良い魔法アイテムは入ってたかな、紗良姉さん?」
「その鎧と巻貝の通信機だけかな、後はガチャの結果に期待だね」
唯一滝壺の水の侵入を防げてるのは、端っこの一枚岩場だけみたいだ。一行はそこに集まって、宝箱の中身を確認する子供たちを眺めている。
ハスキー達も呑気に休憩中、しばらくは出番がない事を完全に把握している模様。何よりほぼ怪我も無く、ここまで探索して来れた手際に満足そうである。
その締めとばかりに、気合が入りまくりの香多奈と妖精ちゃん。何故か小さな淑女も、このクルっと回してドカンと当たりの機械をいたくお気に入りの様子。
1回でいいからヤらせろと、我が
そして始まる、
仕方無いなと手伝う姫香、気持ちだけは一丁前にレバーに手を掛ける小さな淑女。その結果だが、まずまず当たりの羊頭の戦闘ドールが1体ほど。
それがカプセル開けた途端に、ポンッと飛び出す不思議。
盛り上がる一同に、してやったりと
最近は新人チームも躍動しているし、いざと言う時のボディガードも欲しかった所。続いて香多奈が張り切って回すも、3回連続で外れクサいハッピーセットの詰め合わせ。
いたずらに増えて行く、薬品類や魔結晶(小)や魔玉セットに末妹は憮然とした表情。辛うじて、オーブ珠が1個と豪華なお肉セットに姉達が反応しただけ。
それから残りの3回は、私と護人さんと紗良姉さんの分ねと、姫香が取り仕切ってガチャ機の前を奪ってしまった。1枚ガチャなら回していいよと、姫香は妹に容赦がない。
仕方無く護人も1度回すけど、出て来たのは何と『魔導の発電機』だった。これも魔結晶(特大)3個分に、匹敵する程の大当たりである。
やったねと喜ぶ姫香だが、その勢いで回した結果は魔法の鞄が1つだけ。まぁ、これも売れば百万円なので、香多奈よりは随分マシである。
最後の大トリに紗良が回すと、今度もミケが秘かに仕事をしてくれた模様。何と『ワープ魔方陣記憶装置』が出て来て、協会に売れば数百万は確定である。
驚きであごが外れんばかりのチビッ子コンビ、敗北の味はいつだって苦いモノ。そんな感じに騒ぐ子供たちを尻目に、護人は1人で思案顔に。
何しろ、結局ここの宝箱からも探索者の遺品らしきモノは出て来なかったのだ。つまりは、10層まで潜って手掛かりは一切なしと言う結果である。
どうすべきかと異世界チームに連絡を取ったら、向こうは既に11層を過ぎて12層に到達したとの事。あっちの言い分は、15層まで行って何も無ければ言い訳は立つって事みたい。
確かにそうだと、護人も向こうの流儀に納得して覚悟を決める事に。つまりは、来栖家チームも今から追加で15層を目指す事に。それを聞いた香多奈は、慌てて1枚ガチャを回すのを取りやめてガッツポーズ。
それから3枚ガチャ、リベンジするよと気合の入ったポージング。
ところが、休憩後に入った11層へのゲートから事態は思わぬ方向へ。次はどんなエリアかなと、見渡す一行の目の前は暗く淀んだ何も無い空間だったのだ。
アレッと思った時には、時既に遅し……そして背後から聞こえた声は、年季の入った老人の呟きに聞こえた。振り返って確認する一同は、全く見知らぬ執事姿の老人を目にする。
立派なタキシード姿は、かなり古風でまるで洋画の1シーンみたい。品のある老執事だが、護人は相手がゴーストだと即座に見抜いた。
しかもかなりの力の持ち主で、その上に自分の意思を持っている。つまりは、間違ってもダンジョンの産んだモンスターではないって事。
その呟きだが、何とか《異世界語》スキルが仕事をして護人は理解する事が出来た。老執事の目的は、活きの良い探索者を自分の
とにかく活きの良いまま、出来ればチーム揃って活動出来る状態で。
――なるほど、チーム失踪の原因がここに来て判明したようだ。
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