第753話 引き続きマグマの川を横目に探索を行う件
派手な爆破があった割には、最後の小部屋の中は整然としていて何よりである。そして中央の宝箱だが、こちらもバッチリ無傷でこれまた何より。
宝箱の中をチェックする子供たちは、さっきの衝撃を忘れる事にしたみたい。ワイワイと騒ぎながら、良品が混じってないかと中身を熱心に確認している。
とは言え、炎エリア最初の宝箱は大きい割には中身はパッとせず。薬品が数種類に鑑定の書(上級)が5枚、魔玉(炎)が15個に魔結晶(中)が5個。
それからカイロとか湯たんぽ、電気毛布も入っていて節操も無い取り合わせ。仕舞いには、度数のキツそうな洋酒が数本出て来て、これで体を温めろって事らしい。
他にも高級そうなコートや、冬の暖房グッズが宝箱の中にたくさん。これは冬の青空市に向けて、良い仕入れとなったかも知れない。
そう表情に出ている紗良は、ご機嫌に鼻歌混じりに回収作業に勤しみ始める。それを手伝う末妹も、とっても楽しそうで目が¥のマークになっている。
それらを全て片付けて、さて次の層へと向かおうかと護人の号令に。は~いと元気な子供たちの返事、まだまだガス欠には程遠い様子で一安心。
そんな感じでゲートを潜って次の層へ、ここも岩肌とマグマの川が目立つエリアのよう。火山の火口も心なしか近付いているようで、護人も慎重に安全の度合いを測っている。
それは先行するハスキー達も一緒で、特に近付くだけで火傷の危険のあるモンスター部隊には慎重に対処している。今の所は炎耐性ポーションが良く効いていて、アグレッシブに攻撃が通って敵の殲滅は
紗良が秘かに改良を重ねていたらしいけど、その効果は素晴らしいレベル。こんな熱いエリアなのに、みんなほとんど汗を掻いていないのがその証拠だ。
「ここも配置されてる
例えば、もう1枚前衛を増やすべきかな?」
「そんなら私が、ムームーちゃんを連れて前衛に出ようか、護人さん? ムームーちゃんの水と氷魔法は、このエリアの敵の弱点属性だしね。
茶々丸に《マナプール》を使って貰って、ムームーちゃんのMP役になって貰うのもアリかもね」
「ああっ、それは良いかもねぇ……萌は元から炎に強いから、このエリアではレイジーとコンビを組んで貰ってさ。
浮いた茶々丸とムームーちゃんで、コンビ組んで貰えば良いんじゃない?」
姫香の作戦に香多奈も賛成して、厄介な炎のエリアの攻略用の即席コンビを少し
効率よく探索が進めば、怪我も減るし時間の短縮にもなる。チーム員には得意と不得意が存在するのは当然なので、臨機応変はとっても大事である。
そんな訳で、どう言う流れか不明だけど、茶々丸に騎乗する役が萌から姫香へと交替。萌には『騎乗』スキルがあったけど、そんなのない姫香は割とへっぴり腰だ。
とは言え、ムームーちゃんだけを茶々丸に乗せるのは暴走がとっても怖いので却下である。そして姫香を乗っけた茶々丸だが、とっても嬉しそうなのは何故だろう?
そして発生した《マナプール》のMPを使って、水の槍で遠隔攻撃を行う軟体幼児。作戦的には全然アリで、遠隔攻撃のフォローを貰って敵の殲滅も倍の速さに。
これには後衛陣の護衛の護人も、思わずホッと安心の吐息を漏らす。レイジーと萌の殲滅チームも、かなりの連携密度でグイグイ進んで行く。
ツグミやコロ助も、フォローに徹してそれ以上の手出しも必要無い感じ。新しいスタイルを得て、順調に進む難関の炎エリアの第2層である。
取り敢えず新しく出現した敵もいるようで、炎のカニがマグマの中からわんさか。そこに《氷砕》魔法をぶち込んで、華麗に先手を取るムームーちゃんである。
残りの掃討をコロ助のハンマーが担って、固まったマグマは良い音を立てて粉砕されて行く。念入りに核を潰すツグミは、意外に几帳面な性格をしているのかも。
レイジーと萌は、魔法の範囲から逃れた敵を手分けして
「なかなかいい調子だね、姫香お姉ちゃんと茶々丸とムームーちゃんのトリオ。まぁ、姫香お姉ちゃんは乗ってるだけで何もしてないけど」
「何言ってんのよ、香多奈のアンポンタン……私がキー役なの、全然分かってないわね。でも茶々丸の乗り心地、思ったより悪くなくって助かったわ。
さすが、いつも萌を乗せ慣れてるだけはあるねっ」
遊びでいつも、和香ちゃんや穂積ちゃんを乗せてるからねと大威張りの香多奈の発言に。一番乗って
それはともかく、2層の探索も順調でいつの間にか岩場の道は段々と下降して行く事に。そして見慣れた洞窟の入り口が、マグマの川を縫って大きく口を開いていた。
ここでまた例のゲームかなと、戦闘が終わって茶々丸から降りた姫香の呟きに。それクリアしたら次は3層目だねと、呑気な末妹の返しの言葉。
そして薄暗い洞窟内に入ると、やっぱり待ち受けていたのは例のボード盤の仕掛けだった。敵の姿は全く無くて、ハスキー達もそれを察知して一気に寛ぎモードに。
それに対して、さあ出番だと張り切り始める紗良と香多奈である。もっとも末妹は、茶々入れ要員でメインは長女だと割り切っている模様。
「うわっ、今回もバーに空いてる穴が多いなぁ……これを縦と横のラインを重ねずに、玉の所だけ落とすのは骨が折れるよ」
「1個とか2個は仕方ないよ、紗良お姉ちゃんっ。出て来る敵の行動パターンは分かったから、今度は自爆させずに全部やっつけられるよ!
まぁ、ゲームなんかじゃ自爆する敵はお約束だよねっ!」
「確かに、言われてみるとそうかもな……時間内に倒せなかったら、大ダメージ受ける罰ゲーム付きの敵ってどのゲームにもいたなぁ。
懐かしさのあまり、思わず喰らって見たくなるな」
そんな事を呟く護人に、駄目だよと注意する姫香は意外と真面目なのかも。それとも叔父を気遣っての発言な気もするが、取り敢えず紗良の仕掛け解きは今回は早めに終了してくれた。
さすがに謎解きも2度目となると、要領を得たのが大きかったみたい。しかも香多奈の助言で、敵の2体湧き程度は仕方無いと割り切ってのセットである。
そんな訳で、今回も敵は2体湧きますとの長女の紗良の警告に。ルルンバちゃんとムームーちゃんで、最初から凍らせて安全に倒そうと護人が提案する。
待ってましたと、ズィッと前に出るAIロボ……魔玉(氷)もまだまだ充分にある様子で何より。ムームーちゃんも、MPはバッチリみたいで見せ場に張り切っている。
今回は、宝箱の右側2か所に恐らく敵が
そしてしっかりと説明された場所に、天井から落っこちて来た2体のマグマ生物。ただし、今回はボール状にはならずに、何故か人型になってこっちに向かって来るアクティブ振り。
驚き顔の護人と、前に出ていたルルンバちゃんだが、何とか氷魔法×2連の攻撃は通ったようだ。抱き付こうとした姿で凍り付くマグマ生物は、今回は2割ほどしか頭を巨大化させていなかった。
それを見て、抱きついて爆破のコースは怖過ぎると
姫香も同じく、凍った2体のマグマ生物を破壊してようやく安堵の表情に。さすがゲートキーパーと、呆気無く倒せたにしては冷や汗の止まらない来栖家である。
そんな戦いを乗り越えて、火山エリアで2つ目の宝箱のゲットとなった。その中からは鑑定の書や薬品や魔玉(炎)が割とたくさん、それから魔結晶(中)も5個出て来た。
例の如くに冬用の靴下やマフラー、アンダーウェアもサイズ違いで結構な数入っていた。それから例の『炎鉱石のインゴット』も、5個ほど入っていて嬉しいかも。
これでまた炎耐性の装備が増やせるし、炎属性の武器が作れるかもしれない。それらを眺めながら、なかなか豊作だねぇと楽しそうな子供たち。
それから紗良の怪我チェックと、そろそろ追加の『耐火の果実ポーション』を飲もうかとの気遣い。次は中ボスの層だよねと、香多奈も皆に気合いを入れている。
諸々の準備をこなしつつ、厄介な炎エリアを無事に乗り切る所存の来栖家チーム。このエリアだけは集中力を切らさず行こうと、護人もチームに呼び掛けている。
「ほ~ら、みんなたんとお飲み……これで熱さや火傷からの耐性が、全然変わって来るからねっ! それにしても、紗良お姉ちゃんとリリアラの錬金活動、凄く進んでるんだねぇ?」
「本当だね、協会販売でお金になってる薬品もあるし、紗良姉さんは将来は錬金術師で安泰だよねっ! でもまぁ、家族チーム的には一緒にいて貰った方が、凄く安心出来るけど。
紗良姉さん程、縁の下の力持ちが出来る人はいないからねぇ」
「そう言って貰えると嬉しいな、私も探索同行は止めるつもりは無いけどね。やっぱり足手
紗良お姉ちゃんは足手纏いなんかじゃないよと、麗しい姉妹愛の寸劇は置いといて。良い雰囲気のままに、来栖家チームは炎エリアの第3層へと到着を果たす。
その空気はペット勢も共有していて、ご機嫌な様子で探索に挑み始めるハスキー達である。この層も茶々丸に騎乗するスタイルの姫香は、ムームーちゃんを肩に乗せて前衛に同行する。
そして
3層も至って順調で、炎の蛇や猿に近付かれて火傷を負う者も出現せず。姫香とムームーちゃんの初ペアも、今の所は順調に機能しているようで何よりだ。
そして《マナプール》のお陰で、順調にキル数を伸ばしているスライム幼児。妖精ちゃんの策略で、とんだ軟体生物が爆誕してしまったかも知れない。
調子に乗って虹色の果実を与えたせいで、今やレベルも10を超えているムームーちゃんである。しっかりした知性と道徳観を備えているのが、本当に有り難い限り。
これで妖精ちゃんの言いなりに暴れられたら、来栖邸はミケと妖精ちゃんの縄張り争いで大変なコトになってしまう。そうならないよう、子供たちも必死に軟体幼児を秘かに
もっとも、ムームーちゃんが一番信頼を置いているのは、実は家長の護人みたい。それに納得がいってない風の、香多奈と妖精ちゃんのチビッ子コンビである。
来栖邸の平穏はともかくとして、第3層の探索は
お陰で、このエリアもさほど苦労する事なく突破の運びに。とっくに模範解答を得ている問題に、そうそう苦戦する一行ではない。
そうして残るは、下り坂からの洞窟エリアのみ。
――さてさて、3層の中ボスはどんな奴が待ち構えている?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます