第651話 そろそろ2チームとも中ボスが見えて来る件
ルルンバちゃんが探索役を担うにあたって、今回は紗良から『遠見の指輪』を借り受けて装備していた。これはある程度の遠くを視認出来るスキルで、敵の早期発見に便利だ。
他にも、分かれ道の判別をしたりとか、探査役が持てば超便利な品には違いない。戦う役目はレイジーとコロ助、それから茶々丸が相変わらず担ってくれているので。
ルルンバちゃんの役割は、いわゆるチームの斥候役と言う事になる。賢いハスキー達は、この硬さは活かすべきだろうとたまに弾避けに使ってる。
それも当然、この18層から石
コイツ等は大抵、群れで襲って来て水エリアへの適性もバッチリだ。その為に何とも素早く動くし、しかも全員が何らかの魔法を使って来る難敵だったりする。
装備も三又の槍と何らかの鎧装備で、その扱いも普通に長けている感じ。それでもハスキー達の敵ではなく、サクッと片付けての安全確保は素晴らしい。
お陰で18層も、何とか時間を掛けずに攻略に至りそう。ルルンバちゃんの斥候役も、無難にこなせていて不慮の事故と言ったら2度ほど敵の不意打ちをその身で受けた位のモノ。
これも前もって分かっていて、砂の中に隠れていたエイやカサゴ型モンスターを踏んづけた感じだろうか。お返しの毒針攻撃も、魔導ボディには効果なく返り討ちの憂き目に。
そう言う意味でも、ルルンバちゃんの前衛は持って来いな感じで探索も好調だ。後衛陣も、周囲の色んな色合いの珊瑚の畑を愛でながらの進行である。
香多奈も護人と紗良に挟まれて、すっかりご機嫌も直っている様子。ミケも仲直りの証として、末妹の肩に乗っかっての顔の擦り付けを敢行して。
撮影の邪魔になるでしょとイケずな事を口にする香多奈だが、本音は満更でもない様子。そして結局は仲直りをして、そんな感じで18層の探索も終了。
この層の追加報酬としては、途中の大サメの群れを撃破して得たリングが合計5枚。まずまずの回収に、この調子で行こうと末妹の掛け声が。
どうやら、完全に機嫌を回復したようで何よりである。
「前回より回収率は悪いかなぁ、向こうのチームはどんな感じなんだろうね? 挑戦するチームが増えて来たのにも、要因があるのかな?」
「ああ、そうかも知れないなぁ……最近はワープ装置や大物の交換品を目当てに、どこかのチームが日を置かずに探索に入ってるらしいからね。
その辺は仕方が無い、中ボスを倒せば確定で貰える筈だし」
「そうだねっ、次の層にも隠されてるかもだし……ルルンバちゃん、絶対に見過ごしたらダメだからねっ!」
末妹が元気になったのは良いけど、要求もきつくなって困った顔の前衛陣である。とにかく19層へと辿り着いて、陣形は変えずに探索を開始する護人チームの面々。
そして早速のお出迎えの、マーマンや大蟹や電気クラゲの一団を前衛陣で退けて行って。ルルンバちゃんの先導によって、安全ルートを辿っての探索は続く。
そうして珊瑚がびっしりの岩場を辿って、右や左に方向転換しながらの進行の果てに。ルルンバちゃんが一行を導いたのは、岩に囲まれた突き当りだった。
そして間髪おかずに岩の隙間に銃撃を見舞っての、待ち伏せていた敵のお呼び出し。今回は大タコだった様で、周囲は真っ黒な墨で視界が遮られる始末。
何とかレイジーが止めを刺したようだけど、巻きつかれたルルンバちゃんは大蛇に呑まれたトラウマを再燃せずに済んで何より。後衛は墨の範囲から脱出して、ペット達に戻っておいでと声掛けをしている。
それに真っ先に従ったのは、お調子者の茶々丸だった。続いてレイジーとコロ助も怪我無く出て来て、最後にはこの場所に案内したルルンバちゃんが出て来た。
そしてそのアームには、しっかりタコの巣の中から取り出した宝物の数々が。どうやらルルンバちゃん、末妹の言いつけを守ってしっかりエリアの隅々までお宝チェックを行っていた模様。
そしてゲットしたのは、魔結晶(小)が3個にコインが4枚、強化の巻物が2枚に金貨がいっぱい詰め込まれたほら貝だった。
金貨は外国の古い物らしく、アビス産とは全く異なる換金素材らしい。
末妹の言いつけを忠実に守っての、このドン詰まりの支道の探索はさすがルルンバちゃんだ。そのお陰で、価値の高いコインを4枚もゲット出来た。
それを喜ぶ香多奈と、得意そうなルルンバちゃんを褒めそやす長女である。何にせよ、この戦闘で怪我人も出なかったし回収品もゲット出来て良かった。
後は本道に戻って、区切りの20層をクリアするのみ。そうすればお昼休憩に入れるし、炎系の全く使えないこの水エリアからも解放される。
ルルンバちゃんは尚も元気で、先頭で皆を導く気満々である。ハスキー&茶々丸も、不慣れな水エリアに疲れた様子を見せず、前衛を譲る気は全く無い様子だ。
そうして一行は、午前中の中ボス撃破を目指して元気に進むのだった。
18層の仕掛けをクリアして、姫香率いる女子チームは19層へ。湿気の多い遺跡エリアに、探索のコンディションは決して良いとは言えないけれど。
女子チーム特有の明るさで、チームの雰囲気は決して悪くはない。むしろ少し緩み気味と言うか、たまにポカをして
この遺跡エリアでも水溜まりに落っこちかけて、皆から『流水行』の恩恵はどうしたのと総突っ込みを受けるみっちゃんである。どうやら優秀なスキルも、生来のうっかりを打ち消す事は無理らしい。
まぁ、そんなおっちょこちょいな少女も、チームの大切なムードメーカーである。リーダー役の姫香も、彼女の能天気な性格に何度救われたか分からない。
生真面目な陽菜とも相性は良いようで、怜央奈を含めて『日馬割』ギルドの大切なメンバーである。“アビス”でのミッションが成功すれば、彼女達との行動ももっと増えてくれる筈。
そんな未来が楽しみで仕方無いけど、取り敢えず今はこの19層を踏破して20層へと向かわねば。つまりは探索に集中すべきなのだが、何と19層にも水とタイルの仕掛けが。
今回は滝のカーテンが視界を遮っており、タイルも流動的でプールの上を流れている。つまりは決まったルートはあっても、刻一刻と変化する感じだろうか。
これは難しいねと、プールの端っこに集合して話し合う女子たち。この層も敵の強さはそれ程でもなく、魔石の稼ぎも微妙な感じ。
それでも装備の良いサハギン獣人を倒して、リングを追加で4枚ゲット出来た。まずまずの収穫に、あとは中ボス撃破で幾ら稼げるかなって話してたのだけど。
その前の試練で、またも知力を試されるとは。
「みんなっ、謎解きで2度もツグミのお世話になるのは乙女の恥だよっ! 例えば後から動画を観た生意気な小娘に、犬の頭脳にも劣るんだねとか
恥ずかしくって、表通りを歩けなくなっちゃう!」
「えっ、幾ら香多奈ちゃんでも、そんな言葉は……う~ん、確かに姫ちゃん相手には発するかも知れないけどさ」
「そうだな、ここも私が先行してお手本になろうか。残りの皆は、それを見て参考にしてくれ……姫香、ロープの端をくれっ」
そんな訳で、先行が好きな陽菜のまたしてもお手本の披露が行われる流れに。プール内のパネルは透明なガラスのような素材で出来ており、移動しているのも本当に見えづらい。
と言うか、本当にそこが安全地帯なのかも不明で、流れ落ちる滝のせいで向こう岸も良く見えない。滝は相当な威力で流れ落ちており、ブラインドの役割も果たしているよう。
それをどうやって攻略するのか、陽菜は果たして道筋が描けているのだろうか。ロープの端を持つ姫香は、不安ではあるけど友達を信じて見守るしかない。
そして進み始めた矢先に、ドボンと言う派手な着水音が。うわっと言う悲鳴は、女子チームの誰が発したモノだっただろう。慌ててロープを引っ張る姫香と、それを手伝うみっちゃん。
結果、陽菜は何とか無事に救出となったけど、つま先から頭の上まで完全にずぶ濡れに。あちゃあって顔のみっちゃんは、ずぶぬれ2号っスねと自虐のコメント。
幸いにも濡れただけで済んだ陽菜も、真面目な顔でずぶ濡れ2号だなと反省顔。そんな訳で、皆で手分けして風邪をひかないように陽菜のお召し替えの手伝いなど。
昨日の5層のデジャヴだが、それを敢えて非難する者は誰もおらず。ミスは誰にでもあるし、命にかかわらなかっただけ有り難いってモノだ。
そしてすぐさま、装備を乾かしながらの反省会が執り行われる。何が不味かったのかの議論が始まり、その辺はとっても真面目な女子チームである。
そしてムームーちゃんの火炎ブレスで濡れた服の乾燥、こんな贅沢はダンジョン外では決して出来ない。と言うか、そこまで待つ時間が勿体無いので、装備だけ乾かしての再挑戦。
今度は慎重に、皆でルートを示し合わせての全員参加で進む流れに。つまりはツグミのスキル頼りなのだけど、その辺のプライドは完全に捨て去った女性陣である。
「これ以上、本隊チームと遅れる訳には行かんしな。さっきの通信では、向こうもフィールド型でしかも水エリアに苦戦してたっぽいけども。
現在のこちらの遅延で、トントンと言った所か?」
「向こうとは一緒に、“アビス”の回廊通路でお昼を食べる約束があるからね。あんまり待たせたら香多奈やハスキー達がキレちゃうから、なるべく急ぐのは賛成だよ。
ただまぁ、陽菜が風邪ひいちゃわないか心配だけど」
「大丈夫っスよ、バカは風邪ひかな……もごもご」
馬鹿正直なみっちゃんは、陽菜に凄まれて明後日の方向を眺めて口をつぐむ破目に。そしてツグミのプールの仕掛け先導だけど、ほぼ完璧で被害者はゼロの結果に。
水上を移動する透明なパネルに乗っかると言うのは、なかなか奇妙な体験で中にはビビる者もいたけど。それが勝手に進んでくれて、滝にぶつかりそうになった途端にツグミは別の場所へとジャンプする。
その作業の度にひと悶着あったのだが、幸いにも失敗して水没する3人目は出現せず。そしてそんな移動の最中に、同じく移動するパネルの上に放置されていた宝箱を発見。
大いに盛り上がって、何とか回収に漕ぎつけた女子チームは喜色満面である。濡れた甲斐があったねぇと、良く分からないフォローまで出たその成果だが。
アビスリングが4個にコインが3個、それから魔石(小)が5個に薬品の入った瓶が数種類。後は貝殻の細工物とか、真珠のイヤリングなどの高級品が数点。
なかなかの回収品に、残りの踏破も頑張ろうと盛り上がる一行である。もっとも、陽菜の装備はまだ乾かしている途中だけど。取り敢えず向こう岸に渡ったら、もう一度しっかりムームーちゃんに乾かして貰う事に。
ダンジョン外では有り得ない、何とも贅沢な時短方法ではあるけれど。危険な探索を鎧を脱いだまま行う訳にもいかないので、この処理は仕方が無いとも。
そうして、ようやく滝とプールの仕掛けをクリアに至った面々はホッと安堵のため息。姫香はツグミを
後は次の層で中ボスを倒せば、アビスの回廊へと出る事が確定している。本隊の護人チームの
こちらもこの後の中ボス退治を無事に終えて、お昼休憩に合流予定である。家族と合流すると言うモチベーションで、再び気合いを入れ直す姫香。
――“アビス”探索も、ここまでは順調と言った所?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます