第484話 4つ目の扉も仕掛けがかなりエグかった件



 3つ目の扉エリアの攻略を喜びながら、一行は毎度の宝箱の中身チェック。中からは定番の鑑定の書や薬品類、それから木の実や魔石(中)などが出て来て。

 それから獅子を模った指輪やミスリル製の武器が少々、後は金貨やトランプ札や花札などの遊具も結構入っていた。他にもボード型の、オセロや将棋やチェス盤なども少々。


 変わっていたのは、白っぽい肉の塊が一緒に出て来た事だろうか。何だろうと不思議がる子供達に、寄って来た妖精ちゃんが衝撃の一言。

 つまりはそれは芋虫の肉塊らしく、異世界では高級肉として有名らしい。そう言えば樹木近くで、そっち系の敵と戦った記憶はあったけど。


 まさかここでお肉になって戻って来るとは、考えもしなかった子供達である。これを果たして食すべきなのかと、紗良は調理するのに悩んでいる様だけど。

 旨いぞとの、食いしん坊の妖精ちゃんの言葉は当てになるのかは全く不明である。それは置いといて、最後に目的の大振りの鍵を1つゲットして。

 これにて、ここでの目的は全て完了した次第。


「それじゃあ0層に戻ろうか、みんな忘れ物は無いようにな。戻ったら少し休憩して、それから4つ目の扉に挑戦しようか。

 時間は割と微妙だけど、これなら何とか夕食までには攻略は可能かな?」

「そうだね、大ボスの間も含めて何とか回れそう……次の扉が、よっぽど意地悪仕様じゃ無かったらだけど。今が3時過ぎだから、今のペースなら平気だね。

 まぁ、夕方の特訓には間に合いそうにないけど」

「それは仕方ないよね、こっちを優先してなるべく今日中に全部終わらせたいもんね。みんなっ、もうちょっと頑張ってね……えっと、鍵付きの扉を足すと全部であと4層かな?

 はいはい、茶々丸が元気なのは分かったから」


 そう言って、元気だよアピールをする茶々丸をなだめる末妹であった。それから元のフロアへと転移で戻って、小休憩へと入る一行である。

 いつもの探索と違って、アスレコースを散々に歩き回ったダメージは割と大きくて。特に護人と紗良の消耗は、目に見えて大きかったり。


 それでも姫香と香多奈、それからペット勢の疲れ具合はそれ程でも無いのは有り難い限り。今日中に全部終わらせるのは絶対ではないが、その方が気分的にも楽なのは確かで。

 そんな訳で、次の扉も前衛陣に戦闘を丸投げするパターンになりそう。ハスキー軍団に関しては、その方が有り難いって雰囲気なのがアレだけど。


 茶々丸も同じく、初見のエリアに挑む気は充分な模様で大張り切り。とは言え、次に全員で入ったコースは3メートルの高さの丸太の壁に塞がれて、あまりコースの全容は見渡せられない有り様で。

 意地悪な仕掛けだが、辛うじて中央の浮き島は視認が出来るようだ。それによると、コースの長さはさっきまでとそんなに大差はない感じだろうか。

 問題は、コースが迷路調になっている事くらい。


「参ったな、入ってすぐに左右に道が別れてるよ……全部のルートを確認した方がいいのかな、それとも真っ直ぐに中央のゴールを目指すべき?」

「ルルンバちゃんに、上から覗いて見て貰えば……えっ、それ以上は上がれないのっ? 凄いっ、なんか変な力でズルは駄目みたいなんだって、叔父さんっ!

 えっ、レイジーでも無理なのっ!?」


 飛行能力を持つルルンバちゃんに、ルートの選定をして貰おうって末妹の作戦は、そんな訳で却下されてしまった。気の良いダンジョンも、さすがにそんなズルは認めてくれなかった模様で。

 そんな訳で、前衛陣は何チームかに別れて正しいルートの確定に励む事に。姫香とツグミがペアを組んで、残りの面々はレイジーに従う感じ。


 そして行き止まりを確認したチームは、戻って報告すると言う流れで。その途中にも敵は普通に出て来るので、なかなかに侮れない難易度の迷路コースである。

 曲がり角に待ち伏せしているゴブリンや丸太ゴーレムは、そうは言っても雑魚には違いなく。少数に別れた前衛陣でも、処理は可能でその点に不安は無い。


 護人もルルンバちゃんと組んで、前に出ようとするのだが。正しいルートが分からない現状で、先行し過ぎても他の組のサポートがおざなりになる可能性が。

 やはり迷路って、全員で迷うか揃って突破するのが筋なのだろう。取り敢えず中継地点の役割を保ちながら、護人たち後衛陣はとにかく大声での指示出しに励んで。

 香多奈を中心に、前衛組のサポートに尽力している。


「姫香お姉ちゃん、レイジー達の方が行き止まり通路だったみたい。そっちで分岐があったら、そこで待ってて! 今、叔父さんとルルンバちゃんが向かってるから」

「了解っ、途中に丸太の架け橋があるから気をつけてね! 待ち伏せのモンスターは、全部倒したとは思うけど」


 そんなやり取りでも分かる通り、このエリアは迷路の中にもアスレチックが混ざっているよう。今までに出て来たのは、お決まりの丸太の架け橋だとか。

 地面が完全に抜けていて、横の丸太の壁にロープが掛かっているだけの通路とか。罠もそれなりに存在する様で、姫香は壁の丸太が倒れて来る仕掛けを確認済み。


 レイジー達の方では、定番の落とし穴に茶々丸が引っ掛かりそうになったりとか。行き止まりの正面の丸太の壁が倒れて来て、中からゴーレムが飛び出してきたりとか。

 結構なバリエーション振りで、その中にはシャドウ族の待ち伏せも含まれていたけど。茶々丸が嬉々として倒してくれて、レイジー組に大きな損傷は無し。


 そして本体へと合流したレイジー組だが、護人とルルンバちゃんはやっぱり先行している模様。そんな訳で、しばらく一緒に紗良と香多奈の護衛について移動する流れに。

 このフォーメーションも新鮮だねと、香多奈は浮かれながらも撮影に忙しそう。紗良の方は、2つ目のアスレの仕掛けを前に顔を引きらせているけど。

 とは言え、ロープ渡りの距離は5メートル程度でそこまででも無い。


「うわっ、ハスキー達ったら一度のジャンプで対岸に届いてるっ! 凄いねっ、でも茶々丸は真似しちゃ……ええっ、アンタも出来ちゃうんだっ!

 私もちょっと、挑戦してみようかな……」

「駄目だよ、香多奈ちゃんっ……大人しくロープ使ってね。ってか、私も何とか頑張って渡らなきゃね……」


 紗良お姉ちゃん頑張ってと、末妹の『応援』効果に後押しされて。ついでに戻って来ていた護人に見守られ、紗良と香多奈のチャレンジは無事に成功。

 それと入れ替わりに、今度はレイジー組が先行してのルート選択に参加を果たし。感覚的には、既に全行程の半分は過ぎている気がするけれど。


 つまりはあと半分は迷路コースが残っている訳で、なかなかに大変である。そして最前線の姫香とツグミは、何度目かの行き止まりに突き当たって。

 宝箱を発見したのだが、それがミミックだったと言うオチ。



 一方のレイジー組だが、匂いを頼りに姫香の選んでいないコースを確定する能力はさすが。そして出た先にビックリ、いきなり大きな部屋を引き当てて。

 そこに待ち構えていたのは、ゴブリンとトランプ兵士の群れだった。20体以上が待ち構えている、俗に言うモンスターハウスの罠である。


 それに嬉々として襲い掛かる、焔の魔剣を口に咥えたレイジーだったり。コロ助と茶々丸も、リーダーに遅れじとその戦闘に参加する。

 その表情も嬉しそうで、敵を取り合う姿はまるで遊んでいるかのよう。トランプ兵士の中には、スキルを使うキング札やクィーン札も実は混じっていたのだが。


 炎属性の焔の魔剣は、バッチリ彼らの弱点属性だったのが運の尽きと言うか。ほとんど何の反撃も出来ないまま、燃えて行って見せ場も無い有り様。

 コロ助のハンマーの振り回しも、今や暴風レベルに達していて。敵にしてみれば、近付くだけで命懸けと言う。その点、茶々丸の角の突き刺しなどまだ可愛い方だろうか。


 そして5分後には、広い部屋にはレイジー組しか残っていないと言う結果に。この組には落ちた魔石を拾う能力の者がいないので、戸惑っているのがちょっと可愛いかも。

 かと言って、律儀なペット達はここまでたくさんの魔石を置いて行くのも良しとせず。試行錯誤の結果、首に装着した『蝸牛のペンダント』の収納が使える事が判明して。

 それで一気に、テンションの上がる可愛いペット勢である。


 その回収作業が終わる頃に、ようやく姫香とツグミ組が広い部屋へと到達して。後衛組も同じく、姫香のミミック間ドロップ結果を聞きながら合流を果たした。

 ミミックはオーブ珠に金貨や宝石類、それから強化の巻物が2枚に強そうな片手剣も1本ドロップしたそう。その報告を喜ぶ末妹と、広い部屋にアスレ要素が無い事に安堵する長女。


 そして気付けば、ゴールの浮き島はすぐ近くに迫っていた。ただしこの広場からも出口が2つあって、もうしばらく迷路の仕掛けは続きそう。

 とは言え、ゴール地点に敵は待ち構えていなさそうだし、残りの道のりは比較的楽な感じだろうか。そんな予測で、再び先行する姫香ペアとレイジー組である。


 後衛組はその場で待機して、どうにか上から迷路を覗けないかを試している。香多奈が護人に肩車をして貰って、3メートルの壁を越えようとするのだが。

 どんな理屈なのか、視線は壁を越えられないと言うダンジョンの不思議。ルルンバちゃんにも飛行制限が掛かっていて、壁はどうやっても越せない模様。


 そんな事をしていると、姫香とツグミが突き当たりを引いて戻って来た。これでルートが1つ消えたと、確定したレイジー組が進んだ通路へと向かう一行。

 そして最後に待ち構えていたのは、丸太の飛び石的なアスレの仕掛けだった。丸太は壁から飛び出ていたり、渦巻く水面から突き出していたり。

 これを飛んで、対岸に辿り着くのは難易度高いかも?


「これは大変そうだねっ、紗良姉さんはルルンバちゃんに運んで貰おうか。香多奈も無理せず、護人さんか誰かに運んで貰いなさい」

「えっ、じゃあ……茶々丸に乗って行こうかなっ? 応援してあげるから、ちょっと飛んで行ってみて、茶々丸!」

「これこれ、あんまり無茶をするんじゃないよ、香多奈」


 そんな護人の制止も何のその、茶々丸もノリノリで気分は完全に戦場を駆けまわる騎馬である。香多奈が鞍に跨ると、華麗に中央の丸太を目指して大ジャンプ。

 周囲をハスキー達が従って、まるで忍犬と戦場を駆けるナイトのような風景である。そして護人の心配をよそに、無事に対岸へと渡り切った香多奈とハスキー達。


 もちろん茶々丸も大役を終えて、意気揚々とした素振りで蹄を鳴らしている。その列に加わるべく、ルルンバちゃんに吊るされた紗良がゆっくり飛んで行く。

 そのフォローをすべく、護人と姫香が付き従うけど。事故も起きずに安定した飛行で、これでチーム全員が最後の難関を渡り切る事が出来た。


 そのコースの向こうには、浮き島へと続く階段が用意されており。最後はアスレの仕掛けじゃ無いんだねと、拍子抜けした香多奈の呟きに。

 真っ先に駆けて行って、安全確認を行うハスキー達である。そしてゴール地点には、安定の次の層へのワープ魔方陣が浮き上がっていた。

 つまりは、これで第1層目のクリアである。


 香多奈は宝箱が置かれていない事に不平を述べていたが、それは仕方の無い事。チームが無事でクリア出来たのだし、あと残り2層もこの調子で行ければ。

 護人はそんな事を考えながら、ハスキー達に怪我が無いのを確認して。それからワープしてから小休憩を挟むよと告げて、皆に移動を促す構え。


 このフロアは迷路仕様で、思ったより時間が掛かってしまったけれど。敵の強さは大した事も無かったし、攻略は比較的に楽だった印象が。

 とは言え、残りの2層は段々と難しくなって行くのは判明しているし。あまりチームがばらけて、各個撃破されないように気をつけるべきかも?

 リーダーの護人は、色々と考える事も多くて大変だ。





 ――そうして来栖家チームは、いよいよアスレダンジョンの佳境へ。









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