第481話 2つ目のアスレ扉も無事に攻略成功する件
先行して敵を倒していた姫香とハスキー達&茶々丸だが、出て来た敵も微妙に変化して来た。空中を飛ぶ敵に関しては、ガーゴイルに混じって大燕が出現。
コイツのスピードたるや、油断していると風魔法とのコンボで皮膚が切り裂かれてしまう。姫香は率先して、ツグミと一緒にこの難敵の対処に乗り出す。
地上では相変わらず、ゴーレムとモグラ獣人が行く手を阻んで来ている。それでも巨大な玉を運んでいる最中ならともかく、フリーの状態だと特に
強いて言えば、モグラ獣人の落とし穴の仕掛けが厄介な程度。これが浮き島を貫通していたら、ちょっと洒落にならない事態に進展してしまう。
そんな訳で、ハスキー達もコイツに近付く時はさっきより慎重になっている次第。前の層のコロ助の失敗(失態)を、全員で共有出来ているのはさすがである。
そんなコロ助だが、さすがに2度も同じドジは踏まないのは立派。
「よしっ、この辺の敵はほぼ倒し終わったかな……地面のチェックもお願いね、みんな。後衛が落とし穴に落ちたら大変だし、旗を差せる
それをしながら、後衛が合流するのを待とうか」
一方の後衛陣は、主に肉体労働と応援組に分かれて巨大な玉を運んでいた。玉が大きいので前が見えづらく、協議の末に紗良と香多奈が少し前を歩いて危険を知らせる役目に。
何しろちょっとした窪みや傾きでも、玉のコントロールは大きく奪われる可能性が。そして万が一コースアウトしたら、目も当てられない事態に。
ルルンバちゃんも、今の所は上手にコントロールしていて心配は無さそう。問題は、この肉体労働が2廻り目の護人の方だろうか。
コースもまだ半分なのに汗だくで、鎧は既に脱着してしまっている。武器も同じく、そしてついさっき“四腕”を発動しての横着を思い付いてスキルを使用中。
これで随分楽になったが、やはり細かいコントロールは薔薇のマントや《奥の手》は苦手みたい。結局は、スキルのコントロールに神経を遣いつつ汗を流す護人である。
それでもこれに気付いたお陰で、ルルンバちゃんの殺人ペースに辛うじてついて行けるように。さすが疲れ知らずの鋼鉄ボディ、ただしやはり精密な操作は苦手の様。
たまにコースアウトしそうになって、紗良と香多奈を慌てさせている。
「もうっ、ルルンバちゃんってばもっと慎重にって言ってるでしょ! その玉を落としたら、もう拾いに行けないんだよっ。
ゆっくりでいいんだから、紗良お姉ちゃんの指示を聞いて!」
「ルルンバちゃんは、パワーはあるけど精密な動きが苦手なんだねぇ……大丈夫だよ、ちょっとずつ覚えて苦手を克服して行けばいいんだからね?」
紗良にそう慰められて、シュンとしていたルルンバちゃんは何とか復活してくれた。そして再び玉転がしを始めて、ようやく姫香たちのいる中間地点へ辿り着いた。
それから遅れる事数分、既に戦闘を放棄した護人も何とか合流を果たす。ここから上りが増えそうとの知らせに、さすがにげんなりした表情。
まぁ、さっきの1層もそうだったのでおおよそ予測はついていたのだが。改めてゴールまでの道のりを見ると、先程の疲労がぶり返す幻覚が襲って来る。
それから姫香の、落とし穴があるから気をつけてねとの忠告と。それから香多奈への、旗の差し口がここに1個あるよとの報告が。
香多奈は大喜びで、旗を差し出してあと2つあるからねと元気に口にしている。そして姫香が旗をアイテム袋へと変え、その中身チェックをウキウキしながら姉妹で行う。
中身に関しては、今回は何かの種が12粒と魔結晶(小)が8個入っていた。相変わらずの大盤振る舞いに、末妹はひゃっほうとか飛び上がって喜んでいる。
子供達にとっては、このエリアはとっても楽しそうで何より。
そして姫香は、再びハスキー達を率いてゴール地点までの制圧に
香多奈の『応援』の方がスキル効果が乗っているのだが、何と言うか子供独特の薄情さが鼻につく感じ。もちろん護人は、そんな感情をおくびにも出さない。
ルルンバちゃんの方は額面通りに受け取っているようで、残りのルートを張り切って進み始めている。それを追う護人は、残りの距離を考えない事に。
そして前方からは戦闘音と、コロ助の気合いの入った『咆哮』がこだましている。どうやら空中の敵を自分に引き付けて、姫香とツグミに対処して貰う作戦みたい。
レイジーは茶々丸を率いて、相変わらず面倒見良く地上の敵に対している。かくして地上の敵は、粉砕されたり渦潮の中に落っこちて浮かんでこなくなったり。
ちなみに茶々丸の新たなスキル《飛天槍角》だが、本人は取得しているのをすっかり忘れている様子。あれだけ望んだ遠隔スキルなのに、角で突ける敵が近場にいると関係無い訳で。
お得意の頭突きで全て解決するのが、茶々丸スタイル。
そして見事に一番上の浮き島へと辿り着く前衛陣、後は後衛陣が玉を運んで来るのを待つだけだ。自前のMP回復ポーションをハスキー達に飲ませながら、のんびり一息の姫香である。
それから5分後に、ようやくルルンバちゃんが1位でゴールイン。3分後に護人が、大汗を掻きながら最後の坂を上って来て、これにて2つの大玉は頂上の浮き島へ。
そこにはちゃんと、大きな穴が2つ用意されていてまずは一安心。両者が続けて玉を放り込んでやると、それらはワープ魔方陣と宝箱へと変化して行った。
ちなみに香多奈の持つ旗は、残りの2本も無事に回収を終えて魔玉(土)や魔石(小)や魔結晶(小)が増えてくれた。それから宝箱からも、薬品類や木の実をゲット。
一緒に何故か、ゴルフクラブやボールなどのゴルフ用品も回収出来たのは皮肉なのかも。何の冗談かと、ダンジョンのブラックジョークに護人は怒鳴り散らしそうに。
あんな重い玉を人力で押す競技は、断じてゴルフでは無い。末妹などは、青空市で売れるかなぁと微妙な表情。昨今はスポーツする者も減ったので、これの販売は難しいかも知れない。
それはともかく、これでようやく2層目も突破出来た。護人は長めに休憩を貰って、呼吸を整えてから最終層へとワープ魔方陣を進んで行く。
そしてそのスタート地点で目にした衝撃に、ある意味悟った表情で固まる事に。今度は巨大な玉が3つと言うサプライズ、まぁ最終層には相応しいかもだけど。
問題は、3つ目の玉を誰が押して行くかって事。
「まぁ、冷静に考えたら私しかいないよねぇ……紗良姉さんには無理だろうし、私だったら『身体強化』もあるから何とでもなるよっ。
ただし、前衛がちょっと不安かも?」
「最終層だし、中ボスがいるかも知れないしなぁ……ハスキーに指示を出す者が、前衛にいた方が確かに安心出来るかも知れないな。
萌を護衛に、紗良に前衛に出て貰うのは危ないかな?」
「紗良お姉ちゃんかぁ……それじゃあ、私も前衛に出て一緒に指示出ししようか?」
それは止めなさいと、護人と姫香から全力のダメ出しが。そんな訳で、香多奈は玉転がしチームでの応援係に強引に任命される流れに。
そうすると、紗良がソロで前衛の舵取り要員となってしまう。慣れない任務とは言え、やはり先行して敵の駆逐をした方が後衛陣も安心には違いない。
何しろ、汗だくで巨大な玉を転がしている最中に、敵の攻撃に反応している暇など無い。時間短縮を考えると、チームの2つ分けは理に適っている。
それが無理なら、全員で敵を狩ってエリアを安全にしてから玉転がしに挑むのもアリか。時間は掛かるけど、安全度では遥かに高いのでこの選択肢も間違いではない。
ところが、来栖家の長女の紗良は両の拳をグッと握って、やってみますと前のめりな返答。さすが姉さんと持ち上げる姫香、その男勝りな性格が乗り移った
そしてアスレコースにややビビりながらも、萌をお供に先行して行く。まぁ、その肩にはミケも乗っかっているので、モンスターに不意打ちされる心配は無い筈。
問題は、やはり前衛の経験不足に尽きる気が。
「まぁ、任せたなら後は紗良姉さんを信じるしか無いよ、護人さん。それじゃあ、私たちはコイツ等をゴールまで転がして行こうか。
それにしても、今回は3つ目の玉で何が出て来るのかな?」
「そりゃあ、宝箱が2個だよきっと! あっ、ここも旗の数は3本なんだ、残念っ! 最初が2本で次が3本だったから、4本に増えると思ったのにっ!」
そう言って、プリプリしている香多奈はとっても平和だと護人は思う。巨大な玉の数は順調に増えて、押し手も3人必要な事態だと言うのに。
それにしても姫香は前向きと言うか、全く嫌がらずルルンバちゃんに続いて玉転がしを始めている。最後に続く護人は、実は既にへとへとのガス欠状態だ。
ゴールまでが遠く見えて、こちらの気力を容赦なくへし折って来る。それでも惰性で進むルートは、前の2層とほぼ変わらず要領はすっかり覚えてしまった。
それだけが、現状で唯一の救いかも?
その頃前衛では、紗良が飛んで来る敵を《氷雪》で一網打尽にしていた。その範囲攻撃のパワーは相変わらずで、ミケや萌のフォローなど必要なさそう。
そして地上の敵は、レイジーとコロ助と茶々丸で順調に倒されて行く有り様。こちらも今更、紗良の指示出しなどは必要のない統率振りである。
とは言え、勝手に進み過ぎると今回は中ボスが反応してしまう恐れが。遠くに見える浮き島には、中ボスらしきワイバーンの陰が窺える。
ただまぁ、ワイバーン程度ならミケの敵では全く無いのは、過去に何度も証明されている事実。それでも後衛と離れ過ぎないように、何度も確認して気遣う紗良である。
そして数分後には、中間地点までの敵を全て駆逐し終わって一息つく前衛陣。今回新たに出現した、飛来する巨大目玉の化け物も幸い大して強くは無かった。
紗良はハスキー達を
気に入らないのは分かるけど、こちらの予定もあるので刺激しないで欲しいと願う紗良である。しかしその願いは通じず、飛竜も相当キレやすいのか安い挑発に乗って来た。
中ボスのワイバーンは、陣地を華麗に飛びあがってからの急降下を敢行。そしてミケの《魔眼》での急制動で、何の見せ場も無く返り討ちに。
この技は、向こうの速度や体積が大きい程、ノックバックダメージも酷くなる特性が。何も出来ずに昇天した中ボスは哀れだが、まぁ事が1つ片付いて良かった。
そう思う事にした紗良は、ドロップ品を拾って届けてくれたツグミに笑顔で礼を述べる。魔石(中)にスキル書が1枚、中ボスらしい平凡な品揃えである。
そしてその頃には、ようやく後衛陣が無事に巨大な玉を転がして合流してくれた。そして香多奈が、すかさず旗用の窪みがどっかに無いかと騒ぎ出す。
コロ助がここにあるよと、浮き島の隅っこを前脚で引っ搔いている。それを目掛けてダッシュする末妹は、とっても幸せそう。そしてこのフロアで、最初のアイテム袋をゲット。
中には魔石(中)が5個に、大粒の宝石が3つ入っていた。フィーバーは止まらないようで、さすが過酷な労働を強いるエリアだけはある。
その分報酬も豪華なのかなと、重労働のお陰で汗まみれの姫香の言葉に。やっぱり汗だくの護人は、声も無く呼吸を整えていたりして。
そして姫香の合図で、最後の一押しでの2つ目の扉のクリア……1つ目の玉で退去用の魔方陣が生まれ、2つ目の玉で目論見通りに宝箱が出現した。
3つ目はもっと大きな宝箱かなと、子供達が期待して見守る中でその浮き島の上空に出現したのは。何とビックリ、巨大な翼竜だったと言うオチ。
どうやらコイツが、実は真の中ボスだった模様。
もっともそいつも、ミケの『雷槌』でマッハの速度で撃墜されてしまった。ミケの上の位置を取ってしまったのが、逆鱗に触れたんだねと香多奈の感想に。
もう少しで潰されちゃうところだったよと、ミケのプッツンに文句を発する姫香だったり。子供達はそんな感じで、マイペースながらも最後の仕掛けをクリアした事を喜んでいる。
一行のすぐ近くに墜落した翼竜は、間もなく魔石(中)へと姿を変えてこれで本当のお終いみたい。宝箱からは安定の鑑定の書や薬品類、それから目的の鍵もゲット出来た。
ついでにワイバーン肉と、ゴルフバックやクラブやボールのセットが。今度は姫香も、アレのどこがゴルフなのよと憤慨して文句を並べ立てている。
旗の仕掛けで儲かったからいいじゃんと、肉体労働を回避した末妹の感想はとっても軽い。何にしろ、この厄介なコースのエリアを無事にクリア出来て本当に良かった。
護人にしても、あの重労働から解放されてホッと脱力。
――かくして、2つ目の扉も終了の運びに。
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