第439話 各チームが何とか合流を果たそうと頑張る件
間の悪い事に、香多奈と通信を終えた護人チームは、その後すぐ周回する中ボスに発見されてしまった。相手をする余裕の無い護人は、何とかそいつを
しつこく追跡して来る、女型のパペット&巨大猿のペアモンスターである。女型のパペットは白衣姿で、巨大猿の肩に乗っていかにも魔術師風な雰囲気。
巨大猿に関しては、まるでキングコング……ややメタリックな気がするのは、何か改造されたって設定でもあるのか。とにかく厄介な奴の相手より、護人的には他のメンバーの状況把握を先にしたい思いが強い。
その時間を取りたいと言うのに、相手はしつこく追い
そこに掛かって来る、姫香からの通信と言う。
そして逃げながらの姫香との通信、向こうの階層は不明だが紗良ともども無事だったとの報告を受け。ホッと一息ついた所で、富樫からのギブアップの宣言が。
仕方無く立ち止まって、香多奈の件を
そう言えば、萌は年少組と一緒に人化したままよく遊んでいたっけ。今では数時間以上の《変化》も余裕の萌は、遊びながらスキルを鍛える天才なのかも。
それはともかく、追い掛けて来る敵を迎え撃つぞと護人が口にすると。待ってましたとばかりに、即座に戦闘モードへと移行する仔竜である。
小柄な萌だが、槍の扱いに関しては既に一級品だったり。
一時期は剣と盾のオプションも勧めたのだが、どうも攻撃力のある『黒雷の長槍』が本人は好きみたい。そして敵の大猿は、何も考えず追って来る勢いのままこちらに突っ込んで来た。
慌てて端の建物へと避難する富樫元教授と、それを雄々しく迎え撃つ護人&萌と言う構図。大猿の肩に乗っかる白衣のパペットも、何やら怪しい動きの真っ最中。
白衣だけに術者とか、そんな設定なのは何となく伝わって来る。それならば、護人としてはそっちを先に倒したい。ただし荒ぶる大猿の腕のブン回しは、ガッツリ受けるのはとっても無理。
それでも萌は、得意の『立体機動』で大猿の腕を駆け上がる暴挙に出た。まるで牛若丸のような動きに、術を唱えていた白衣パペットもさぞ慌てた事だろう。
それでも魔法をこちらに撃ち込む技術は、
そして反撃の
さすが中ボス、なかなかの根性で戦いは長引きそうな気配。
一方の護人も、メタリック大猿とのタイマンを指定されて、“四腕”を発動させてのガチ戦闘。時折馬鹿みたいに大きな手で、掴み掛かって来るコングの戦闘スタイルはそれなりの脅威だ。
それを許せば一巻の終わりなのは確実、逆に手のひらに斬りつけて敵を翻弄してやる護人である。その痛みに、中ボス大猿は怒りのドラミングからのハンマーパンチを繰り出して来た。
物凄い迫力だが、それを呑気に喰らう護人ではない。そもそも胸を叩いている暇があったら、こちらを攻撃しろって話である。いやまぁ、敵の攻撃方法に文句を言っても仕方無いけど。
そんな訳で、護人は華麗にサイドへ避けてからの、敵のわき腹への痛烈な一撃。《奥の手》の繰り出したレバーブローは、理力を
つまりは、パンチでは無く手刀攻撃だったが威力は抜群。
それから追い打ちの、薔薇のマントの棘生やし攻撃が炸裂した。今度こそ正真正銘のパンチで、これがコングの顎に強烈に見舞われて相手はノックダウン。
我ながら近接戦の手際の良さに、改めてちょっと浮かれてしまった護人である。自分より数倍の巨体を誇る敵との殴り合いを制し、後は倒れた相手の首を撥ねるだけ。
それを終わらせる頃には、萌もキッチリと白衣パペット術師の討伐を終えていた。片腕を失ってもしぶとく逃げ回っていた女型の中ボスだが、萌の機動力からは逃げ切れなかった模様。
そして大猿が倒された場所に、浮かび上がるワープ魔方陣が1つ。萌が魔石(中)を2つとスキル書を1枚拾って来てくれて、これで
いや、紗良と姫香が4層にいた場合は、ここで待つのも1つの手ではある。7層にいる香多奈を待たせる事になってしまうが、果たしてどうするべきだろう。
富樫元教授も、ようやく建物の影から出て来てこちらと合流を果たした。その不安そうな表情に構っていられない護人は、もう一度姫香に通信を繋ぐ事に。
――進むか留まるか、全てはその返答次第だ。
その頃、紗良と姫香は現在の階層を確認するべく移動の途中だった。いつものようにツグミに先導して貰って、紗良の肩の上にはミケが乗っかっている。
そして幾らも行かない内に、移動中のゴブリン集団と遭遇すると言う不運に襲われてしまった。20体以上のその集団には、体格の良いのや術士も混じっていた。
向こうもこちらを発見して、逃げる間もなく戦闘に移行する破目に。取り敢えず先手を取って、紗良の《氷雪》スキルの撃ち込みには成功した。
しかし敵の耐久力もなかなかで、半分も脱落してくれないと言う。意外と深い層に出てしまったのかもと、姫香は何となく嫌な予感に見舞われる。
その後は、姫香とツグミで戦線を構築してのガチ戦闘へと移行する。ツグミが手際良く、相手の術士を先に始末してくれて戦闘はこちらのペース。
向こうにも、後衛の紗良を狙おうと大回りする敵もいるのが厄介だ。そんな奴は、ボディガードのミケがひと睨みでやっつけてくれると言う塩対応振りを発揮してくれた。
それには姫香も安心して、目の前の敵に集中出来ると言うモノ。
そして10分後には、何とかゴブリン集団を全滅に追いやる事に成功した。味方の数が少なくて時間が掛ったけれど、怪我も無く戦闘を終える事は出来て何よりである。
疲労の色の濃い姫香とツグミだが、そこは仕方が無い。10分以上の激しい運動なのだ、紗良が差し出すタオルと水分で少しずつ息を整えて行く。
そしてようやく近場の建物に移動して、ここが6層だと確認する事に成功した。建物内に設置された時計は、まだ3時過ぎなのに6時を示していたのだ。
なるほど、香多奈の推理は的を射てそうだと姫香は納得顔に。とすると、7層の末妹と合流するには1階層降りてしまえば事足りる計算だ。
5層にいるらしい護人と合流するには、待ちの姿勢も一応アリだ。とは言え、やはり戦闘能力の
姉の紗良も同じ思いらしく、それなら階層渡り用のワープ魔方陣を探さないと。ここは建物の中に設置されてるイメージだが、今入った建物には無いみたいだ。
もう少しこの建物内を探すか、別の建物に入ってみるか。
「香多奈ちゃんは、大学の敷地内の池の側にいるって話だっけ? 香多奈ちゃんと直接話せないのは、ちょっと不便だけど仕方無いよね。
早く合流してあげないと、今頃きっと心細くしてるよ」
「うん、まぁね……茶々丸とルルンバちゃんがついてるって、護人さんが言ってたからそこまで心配は無いと思うけど。
あれから時間も経ってるし、もう1回通信繋げてみようか?」
そう2人で話していたタイミングで、通信を知らせる着信音が『巻貝の通信機』に。慌ててそれを操作する姫香は、護人の声を耳にして明らかに安堵した様子。
それからここが、恐らく6層だと事情を手短に説明すると。向こうも何とか中ボスを倒して、今から5層から6層へと移動する所だとの事。
そこからはトーンの上がった姫香の応答が続き、結局は姉妹は先に7層へと向かう流れに。やっぱり末妹の確保は、チームの最優先事項との結論である。
紗良もそれには納得しており、なるべく早く香多奈ちゃんと合流しようと鼻息も荒い。責任感の強い長女は、どうやら末妹と離れた責任を感じている様子。
――そんな訳で、姉妹は末妹とのなるべく早い合流を誓うのだった。
10分近くの激闘で、何とか水辺のモンスター軍を退ける事に成功した茶々丸とルルンバちゃんである。香多奈も大いに『応援』を飛ばして、みんなで頑張って勝ち取った勝利に。
少々浮かれながらも、ドロップ品の回収も抜かりの無い面々である。近付いてよく見た池は、あまり綺麗ではないがこれ以上の敵は出現しそうもない。
その点はラッキーだ、何しろこちらの戦力はいつもより遥かに心許ないのだから。せめてコロ助くらいは近くにいなさいよと、自分の護衛犬に心の中で当たり散らす少女である。
もっとも、その当犬は他の階層で
つまりは言われた通りの指示の遂行で、ドロップ品を回収し終えると思いっ切り暇になってしまった。そうすると、生来の落ち着きの無さが顔を覗かせる困ったちゃんが約1名。
いや、香多奈と一緒にヤン茶々丸もソワソワし始める始末。
「気付かなかったけど、池の向こう岸に遺跡の建物が建ってたんだね。柱が等間隔に、綺麗に並んでるねぇ……リザードマンの群れは、あそこから来たのかな?
だったら今は、完全に無人だよね?」
そう断定する根拠はとっても薄いけど、ここには反論する意見を持つ者は誰も存在せず。妖精ちゃんまで、見て来てやろうかとその計画を後押ししちゃったり。
敷地内で遊ぶ時も、香多奈と妖精ちゃんはいつもこんな感じである。つまりはとっても良いパートナー関係で、お供は大抵はコロ助と萌がメインである。
今は茶々丸とルルンバちゃんで、まぁその組み合わせも許容範囲だろう。再びスマホで自身の探索を撮影し始めた少女は、何か良い
妖精ちゃんのバッチグーのサインを確認後、そちらに進み始める事に。
池に沿って移動する小さな集団は、一応は敵の襲撃を警戒しながらゆっくりした足取りで進んで行く。そして数分後に、急造したようなどこか刺々しい造りの遺跡の入り口に辿り着いた。
入り口と言っても、柱が等間隔で並んだ屋根付きテラスのようなモノである。池に向かって半円状にせり出しているけど、つい最近出来た様に造りは荒々しい。
そこに足を踏み入れて、慎重に遺跡の内側を覗き込む香多奈と茶々丸。そしてさほど苦労もせず、覗いた部屋の1つに大きな宝箱を発見した。
一気に浮かれる香多奈だが、茶々丸とルルンバちゃんは逆に警戒したように臨戦態勢に。確かにこの遺跡、どこか意地悪な雰囲気を発しているような感じもする。
それでも先頭で室内に足を踏み入れる茶々丸は、早くも角を『角の英知』で立派に伸ばしてヤル気満々である。喧嘩っ早い仔ヤギは、
AIロボも続いて室内へと入り込み、脅威から末妹を守れる位置をキープしている。そして唐突に始まった戦闘は、どうやら茶々丸VSシャドウ族の急襲だったみたい。
それに突然、置いてあったニセ宝箱がバカっと口を開けて乱入を決め込んで来た。驚いた香多奈は、大袈裟に騒ぎながら茶々丸とルルンバちゃんに『応援』を飛ばし始める。
――大人しくしてたら回避出来た戦いは、そうして白熱して行くのだった。
「いやしかし、これは凄いね……複合ダンジョンの資料は、今まであまり収集されてなかった訳だけど。あの建物の接合部分を見たまえ、まるでお互いに喰らい合ってるようじゃ無いか?
寄生植物とも違うな……何と言うか、植物の成長の過程での縄張り争いみたいな。お互いに日当たりの良い場所を争ってるように、生成して枝葉を広げ合ってるように見えないかね?
いやはや、ダンジョン同士って仲が良い訳じゃ無いんだねぇ!」
その小島博士の考察に、応える声はもちろん無い……レイジーとコロ助は、先を歩きながら馴染みの匂いを嗅ぎ分けようと割と必死な作業を先程から続けている。
それから時折遠吠えをして、寄って来た敵を倒すと言う作業を繰り返していた。そして30分もすると、この層には仲間はいないと結論付けた模様。
寄って来た敵の種類は、ホブゴブリンやガーゴイルの集団、それからワイバーンが2匹と強敵揃いだった。2匹のハスキー犬は、それを軽々と駆逐して行く剛腕振り。
それとは対照的に、今の仲間の返答が無いと判明したしょぼくれ様と来たら……小島博士は独自のデータ取得用の撮影を続けながら、思わず同情してしまいそうに。それからもちろん、ご機嫌取りのためのドロップ品の収集も忘れない。
そして一行は、いつの間にやら現代建築が周囲を囲む中庭風のエリアへと
その結果、次の層へのワープ魔方陣を発見……このエリアをかなり歩き回っての、初の階層渡りの権利である。ここて大きな分岐、この魔方陣を使うか否か。
これを使う事で、
――選択次第では、仲間と一層遠のいてしまう可能性も。
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