第433話 放課後に協会に寄って例の如く怒られる件
そして放課後が訪れて、来栖家のキャンピングカーは末妹の香多奈を拾って協会の敷地内の駐車場へ。ハスキー達が真っ先に車から降りて、周囲の安全確認を行う。
続いて降りて来た護人と子供たち、今回も儲けは多いのでご機嫌である。ハスキー達はこの付近に敵はいないよと、ご主人たちに報告して駐車場でリラックス状態に。
彼女たちの既に知っている場所では、ハスキー軍団は毎回こんな感じ。それでも仕事に手を抜かないのは、立派だし褒めてあげれるポイントである。
実際、子供達は有り難うとハスキー達を撫で回して、毎回コミュニケーションを取っている。これを
護人も同じく、レイジーとは既に5年以上の付き合いである。姫香と香多奈を引き取って、護衛犬をつけてあげようと考えてからパートナー関係は続いている。
今ではツグミとコロ助も加わって、探索にまで付いて来てくれるようになった。そんな訳でチームの主戦力は、間違いなくハスキー軍団を中心としたペット勢である。
その中でも、ミケは特別枠ではあるけど。
「それじゃあみんな、用事が終わるまで外で待っててね……駐車場から出たらダメだよっ、特にコロ助はすぐ遠くに行っちゃうんだから!」
「リーダーのレイジーがいるから、そこは大丈夫でしょ。それより、今回も回収した魔石の量が予定より多かったでしょ、護人さん?
うっかり、私か紗良姉さんもA級に上がっちゃったらどうしよう?」
「えっ、それは確かに予想外の出来事だねぇ……私なんかみんなについて行ってるだけで、全然大した事なんかしてないのに。
ペット達の献身で、A級認定されるのは罪悪感が……」
そう言って尻込みする紗良だけど、確かに今回の魔石の量は半端では無かった。強化の魔方陣や魔法アイテムの使用に使う、色付きの大きな魔石を外しても凄く大量だった。
“ダンジョン内ダンジョン”の探索だと、敵がたくさん出て来るので仕方が無いとは言え。また今回も、理不尽に能見さんに叱られてしまう可能性が。
そう言えば、去年の夏は能見さんも一緒に川にキャンプに行ったねと。ゴールデンウイークに、護人が遊びに連れて行ってあげれなかった傷口を
頬に冷や汗を掻きながら、今年は早めにみんなを誘ってキャンプに行こうかと。護人の提案に、さぁ
そして突入した協会の建物内で、一行は仁志支部長と能見さんからいつもの歓迎を受けた。ところがその場のスタッフの間には、何だかピリついた空気が流れていた。
香多奈がその空気を読まず、能見さんを捕まえてさっそく夏の遊びの提案を放り込む。すると能見さんはパッと笑顔になって、その後の動画視聴はスムーズに移行した。
その空気が気になる護人は、仁志にそっと目で問い掛ける事に。
「あ、ああ……協会内がピリついている理由ですか? 実はつい先日、三原から厄介な情報が舞い込んで来ましてね。例の“ダン団”組織を乗せて、“アビス”に探索に向かった護衛艦がですね、つい最近ダンジョン化したそうでして。
そのオーバーフロー騒動に、協会はどう対応するかって話を少々」
「えっ、そんな事になってたのっ? 陽菜とみっちゃん、地元が近いけど大丈夫かな……でも協会は、三原から追い出されて何の権限も無いんでしょ?
手を出そうにも、取っ掛かり外されちゃってるじゃん?」
「身も
“ダン団”とは揉めた仲だが、一般市民には罪は無いしなぁ」
本当に罪は無いかは不明だが、現状は協会も打つ手はないとの見解で。もし近隣の町に被害が拡がったら、そこで初めて水際防御をする程度だろうか。
思いっ切り不景気な話に、思わず顔を
そして換金用の魔石を江川に渡して、子供達と能見さんのワキャワキャした会話へと耳を傾ける。こちらは至って平和と言うか、自分達の冒険
それが今は癒しの音楽みたいに、護人の心を落ち着かせてくれている。今回の動画も見どころは満載で、最初から超巨大な敵の出現に盛り上がっていた。
能見さんも、来栖家チームの戦闘能力に凄いねぇと素直に感嘆の言葉。その次に行ったダンジョンの真ん中の扉は、もっと面白かったんだよとの末妹が告げる。。
その話に、能見さんもかなり興味をそそられた表情に。
そして映像は、例の土砂降りエリアへと進んで行った。悪戦苦闘しながら、何とか雨を浴びない工夫をしながら進む一行に、姫香が注釈を加えて説明している。
つまりは、雨のデバフは厄介だったんだよと。それでも笠地蔵の仕掛けには、改めてホッコリと和んでしまう視聴者一同だったり。
そうこうしている内に、江川が魔石の換金を終えて戻って来た。今回は何と普段の倍もあって、魔石が300万近くに薬品と鑑定の書で10万円程度との事。
家にはまだ、オーブ珠3個とスキル書2枚、それから魔石と魔結晶(大)など余っていたのだが。下手に換金に回さなくて良かったと、ホッと胸を撫で下ろす護人であった。
さすがに一度に大量の換金は、以前みたいに怒られる可能性が。
ところが事態は思わぬ方向へ……映像の中の来栖家チームは、次の扉を潜って今度は日照りエリアへと侵入を果たしていた。砂漠をうろついての敵との戦闘が、しばらく画面に
温度の上昇にへばる一行と、容赦なく照り付ける太陽の映像は観てるだけで暑苦しい。それを観てあれっと言う表情になった能見さんは、思わず隣の席の香多奈の鼻先に触れてみる。
少女の鼻先は実は真っ赤で、触られた香多奈は思わず痛みに悲鳴を上げてしまった。ヒリヒリするなと思っていたが、自分でもまさかそんな事になっているとは知らなかった様子。
それが急激な日焼けのせいだと知った能見さんは、何やってるんですかと保護者の護人に詰め寄る勢い。日焼けも程度によっては、火傷位に深刻になるんですよとお説教モード。
と言うか、よく見れば紗良と姫香の鼻先も割と酷い感じである。身体は防具で守られていたが、子供達の
海岸ビーチ遊びの経験のほとんどない一行は、そうなんだと今更ながらの驚きよう。そう言えばヒリヒリするかもと、姫香などは至って呑気である。
ただまぁ、代表して叱られた護人は反省する事しきりな表情。
「ええっ、太陽の日差しで火傷する事あるんだっ! 能見さんっ、護人さんを怒らないであげて……山育ちの人って、そんな事まで気が回らないよっ!」
「いや、これは子供達の顔をよく見てたら、気付けた変化だと思うしな。やっぱり保護者としては、気をつけて見ておくべきだった事柄だよ。
特に探索後は、みんなの体調の変化には充分に注意すべきだったな」
「護人さん、家族の体調管理は私の責任でもありますから。でも能見さんの指摘は本当にもっともで、私も
みんなの治療は、家に戻ったら責任をもって私がします!」
さすがに人目の多い外出先では、治療系のスキルを振るえない紗良はそう言って真面目顔を
言葉を喋れないペット達のチェックは、割と入念に行うようにしていたのだが。まさか自分を含めた人間側が、知らぬうちに被害を受けていたとは。
能見さんは逆に慌てて、そんな責めるつもりは無かったのだと言葉を引っ込める。逆に紗良からしたら、気付いた事があったらもっと言って欲しいと思う次第。
結成してまだたった1年のこのチーム、配慮の足りない所は他にもきっとたくさんある筈。自分達で分からない欠点は、やはり外部から指摘して貰うしか無いのだ。
そんな事を考える紗良は、とっても真面目な頑張り屋さんには違いなく。妹達もそれはそうだねと、納得した表情で一緒になって頷いている。
護人も同じく、特に最近はダンジョン探索に対する認識が昔より甘くなっていると反省しきり。危険な場所に
ここはしっかりと、もう一度チームで気を引き締め直さねば。紗良がチームの体調管理を担ってくれているとは言え、リーダーはやはり護人なのだ。
そんな感じで、今回も叱られて大いに反省する護人だった。
そして換金作業を終えて、来栖邸へと戻って来た来栖家チーム。そうして戻るなりお隣さんが詰めかけて来て、いつもの夕方の特訓の流れに。
それと同時に、離れの露天風呂の準備をするのが最近の日課となっている。それなりに激しい訓練後のひとっ風呂は、何事にも代えがたい娯楽となっていた。
残念ながら、その恩恵に
ムッターシャもこの異国の風習には、脱帽だと同じく敬服の意を口にしていた。女子たちが入った後とは言え、その使用頻度は確実に今後も上昇しそう。
お陰で毎日の厩舎裏の特訓は、大盛況で人が途切れる事が無いと言う。特に今日は、ハスキー達の新たに覚えたスキルの検証もしようと盛り上がっていた。
同時にレイジーは、譲り受けた『蝸牛のペンダント』を上手に扱う練習中。香多奈が見守る中、せっせと愛用の武器やランプを出したり引っ込めたりを繰り返している。
その隣のコロ助は、新スキルの『咆哮』を試してみたのは良いとして。思いっ切り周囲への威嚇スキルだと判明して、訓練中の使用は以降禁止となってしまった。
悲しい結果だけど、こればっかりは仕方が無い。
一方のレイジーは、空間収納の理解も上々で武器の取り出しも順調である。これでもしツグミが近くにいなくても、独力で武器やアイテムを取り出せるように。
それから宝珠で覚えたレイジーの《オーラ増強》だが、こちらも目に見える能力では無かったよう。訓練中に確認の仕様も無く、企画した香多奈はショボンな結果に。
とは言え、レイジーの戦闘能力の底上げには一役買ってくれそう。今後の探索では、レイジーもコロ助も活躍に期待大である。
空間収納付きの蝸牛の魔法アイテムに関しては、他にも盾と両手で抱えるサイズの荷物入れが回収出来た。ただしこちらは持ち主が不定で、さてどうやって使うべきか。
『蝸牛の荷物入れ』に関しては、ルルンバちゃんに合体させて使おうよとの声が香多奈から上がった。それをするにも、異界の鍛冶屋に出掛ける事になりそう。
そんな訳で、企画はいったん保留しての試行錯誤の最中である。例えば『蝸牛の盾』を、いっその事ルルンバちゃんに持たせようとか色々。
面白い案は出るのだが、それぞれ決め手に欠ける感じで悩ましい所。
「ルルンバちゃんのアームを、いっその事8本くらい取り付けて貰うとか? そしたら家にいっぱい余ってる武器も使えるし、凄く良いんじゃないかなっ!?」
「そんな事したら、操作するルルンバちゃんが混乱しちゃうよ。でも確かに『蝸牛の荷物入れ』は凄く大容量の収納だから、探索に持って行ったら凄く便利そうだね。
でもルルンバちゃんがこれ以上太ったら、入れない場所も出て来ちゃうかも?」
「そうだねぇ……後付けの出来る凄い機能のルルンバちゃんだけど、活躍の仕方とかを考えると色々と考え物だねぇ。その辺は、ゆっくり計画立てて行かなきゃね。
それより2人の戻って来たヘルメットって、どんな機能が追加されてたの?」
それがよく分からないらしい、鑑定では《水神の加護》と言う機能がくっ付いているそうなのだが。幸いサイズは変更なく戻って来たので、その点はお地蔵さまに感謝の2人である。
香多奈のヘルムに関しては、ちょっとお洒落な形状に変わっていた。それだけでご機嫌な末妹は、ある意味幸せな性格をしているのかも。
護人の推測では、水属性の耐性上昇とかそんな性能では無いかとの事。姫香もそれには同意するも、やっぱり詳細を確認する術は無いと言う。
そして訓練場の奥では、隼人がお土産の『ひょっとこお面』を顔に装着して年少組に大ウケしていた。アレは確か、炎のブレスを吐ける魔法装備だった筈。
事故の無い内に正しい使い方を伝授すべきだが、アレを実戦投入するのも勇気がいる。凄い性能なのに勿体無い、隼人が気に入るなら別だけど。
ルルンバちゃんの改造案も同じく、便利になれば良いってモノでも無い。
――あちらを立てればこちらは立たず、世の中はそんな事象ばかり。
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