第411話 春の合宿の成果が徐々に形に現れて来る件
ところで、各々の臨時チームの魔石や薬品の換金結果だが、どこもまずまずで良かった。特にキッズチームは、2度目の探索でもレア種を引き当てて高配当を引き当てるラッキー仕様。
子供達はこれもミケさんのお陰だと、ニャンコ教が麓の地域にも流行り始める気配。とは言えレア種を倒したのもミケなので、そちらの報酬は来栖家のだよねと潔く身を引く素振り。
子供の癖に立派だが、何とかお金の配当分は受け取って貰えて護人もホッとしている所である。そして護人がリーダーで突入した“女子禁制ダンジョン”だが、これも分配で少々揉める事に。
別に甲斐谷とムッターシャが、もっとくれと駄々を
元々が腕試しでダンジョンに付き合ったからと、報酬をマルっと放棄するとの申し出に。むしろワープ装置で、“アビス”に送って貰ったお礼に取っておいてくれと。
そんな感じで、あのダンジョンでの回収品は全て護人が貰う流れに。
そしてムッターシャも、同じく回収品については分配は必要無いとの事。そもそも《異世界語》の宝珠を、前報酬で貰ってしまったからとの正論に。
確かにそうだが、自分だけ丸儲けは気が引ける護人である。そんな訳で、何とか2人に魔結晶(大)を2つずつ持たせる事には成功したのだった。
これでも1個50万の品なので、護人も多少は気が晴れたと言うモノ。ただまぁ、いつでも稼げる実力者たちに、あまり報酬を押しつけるのもアレではある。
そんな訳で、今回は残りの回収品は有り難く護人が頂く事に。そして勝手に香多奈と妖精ちゃんのコンビが、魔法アイテムなど鑑定してくれた結果。品数が結構混ざってたので、ちょっとヒヤッとしたのだが。
幸いにも、それ程に良い品は混じっておらずまぁ良かった。
【香苔】使用効果:媚薬等の原料・秘薬素材
【戦闘メイド服】装備効果:サイズ変化&各種耐性up・中
【魅惑の手鏡】設置効果:助言&依存・永続
【金のブレスレット】装備効果:魅了耐性up・小
【魅惑のリボン】装備効果:各種耐性&魅力up・中
【安寧のぬいぐるみ】使用効果:安寧・永続
【ヒドラの長槍】装備効果:毒付与&筋力up・中
その他:『強化の巻物』(耐性up)×2
しかも中には『魅惑の手鏡』なんて、呪いに近い魔法の品まである始末。それは厳重に封印するか売り払うとして、後は子供が喜びそうなのは融通する事に。
『戦闘メイド服』など、誰が着たがるかちょっと分からないけど。少なくとも紗良や姫香は、例えお遊びでも着ようとは言い出さないだろう。
香多奈辺りなら、ふざけて欲しがったりはあるかも知れない。ちなみに他の化粧品やら香水の類いも、青空市での売り物候補へと仕分けされてしまった。
女性物のブランドバッグも数点ほど回収したけど、残念ながら魔法の鞄は混じっておらず。そしてお泊まり組のメンバー含めて、誰も欲しがらないと言う珍事に。
護人などは、年頃の女性としてそれで良いのかなと思わなくもなかったり。
取り敢えずはそんな感じで、“女子禁制ダンジョン”の回収品は子供達が勝手に片付けてくれていた。換金もいつの間にか済んでいて、魔石の換金額は140万円とちょっとだったとの事。
護人は素直に姫香に礼を言って、アイテム整理はこれにてお終い。
そして女子チームも、一緒に換金作業と動画の依頼を行っていた模様である。今回は、敵の数の多いダンジョンだけあって、儲けも多かったそう。
とは言え、魔石が170万と薬品が10万円と、キッズ達の合計換金額には遠く及ばなかった。その辺は運もあるし、今回は女子チームもたった6層しか攻略してないのだ。
ただし、魔法アイテムは今回はそれなりの数あった模様。
【クジャクの羽根】使用効果:魅了効果・永続×3
【魔鹿の角】使用効果:希少魔骨・秘薬素材
【魔法の法被】装備効果:筋力up&スタミナup・大
【幼虫のネックレス】装備効果:器用up&耐性up・小
【魔牛の角】使用効果:筋力up&スタミナup・永続
【硬革のグローブ】装備効果:燃焼&筋力up・中
その他:『強化の巻物』(防御)×2、『強化の巻物』(攻撃)×2
こちらにも少々怪しい品が混じっているが、そこは護人が厳重に管理するつもり。お泊まり組への分配を含めて、その辺は紗良が上手くやってくれる筈である。
何よりクリア報酬の鍵を2つ、宝箱からゲットして来てくれており。これで“男女ダンジョン”の大ボスの間は、いつでも攻略が可能になった訳である。
恐らくだが、真ん中の扉は男女関係なく入場が可能だと思われる。大ボスの間も引き続き、どちらか一方のみなんて意地悪な仕掛けは無いと思いたい。
それより女子チームが大量に持ち帰った豚肉や牛肉は、お隣さんにも配って大好評だった。虹色の果実は陽菜とみっちゃんで消化して、チーム的には満足だった模様。
そして売り上げで負けた事は、頑として末妹には喋らない戦法を取る姫香だった。それは
何しろキッズチームの功績は、半分以上がペット達のお手伝いあってのモノである。レア種に2度も遭遇した幸運もあるけど、その討伐もペット達のお陰。
それを含めて、競争は引き分けが良い落とし処ではある。
それよりも香多奈が羨む事象が1つ、それがお泊まり組を含めたスキルの相性チェックの場面で訪れた。今回もキッズ達は、回収したスキル書やオーブ珠の取得は残念ながら全滅だった。
ところが女子チームの相性チェックでは、何と3人もの取得者が続出する始末。大いに盛り上がっていたが、うち1個は護人チームが回収したオーブ珠だった。
それをズルいと文句を言う香多奈だが、運と言うか相性なので仕方がない。何より個人の強化は大歓迎で、お泊まり組は大いに盛り上がっている。
そんな新スキルの取得者だが、まずはオーブ珠に反応したのは怜央奈だった。意外と言うか、2つのスキル取得後から随分と間が空いていたので本人もビックリ顔。
早速の妖精ちゃんのサービスによると、どうやら《影刃》系のスキルを覚えたみたい。雰囲気から察するに、待望の攻撃系の能力みたいで大当たりである。
戸惑う怜央奈だが、訓練で使いこなせるように頑張れと周囲の方が大盛り上がり。探索への同行も、これで自衛手段が出来て一安心である。
何しろ、どんな危険があるか分からないのがダンジョンなのだ。
それからみっちゃんも3つ目のスキルを取得、『流水行』と言う名の行動支援系の能力を得たようだ。これはまさに流れる水のように、行動を支援してくれるスキルっぽい。
さすが島の子だと、周囲のメンバーも大盛り上がり。引きが良いと言うか、これで前衛での戦闘もこなれて来る予感がヒシヒシ感じられる。
それから最後に、何と
そこは妖精ちゃんに心当たりがあるようで、どうやら強烈な張り手のイメージっぽい。異世界でも妖精族の戦闘種が、良くこの手の技を使って来るそうである。
そして驚いた事に、星羅はこのスキルが9つ目の取得だったとの独白。何でそんなにいっぱい覚えてるのと、香多奈を始めとして周囲は驚きまくる始末。
さすが、この若さで二つ名を持っているだけはある。このまま伸びれば、S級の“皇帝”甲斐谷以上の名声を得る可能性だってある訳だ。
とは言え、今は訳あって名も出生も伏せている現状だったり。
「いや、それにしても一気に3人もスキルを覚えるとか凄い確率だよねぇ……案外この地のナニカが、秘かに関係してるんじゃないのかなっ?
来栖邸の立地って、やっぱりどこか特殊な気もするし」
「えっ、そんな事は無いとは思うけど……敷地内に3つもダンジョンがあるから、強くは否定出来ないけどさ。でも本当に良かったね、みんな!
子供チームには気の毒だけど、こう言うのは年齢や経験もあるかもだし」
「そうだよねぇ……自分達より年下の子にどんどん強くなられたら、溜まったモノじゃないし。香多奈ちゃんだって、もう5個以上スキル持ってるんでしょう?
それなら、私たちの取得も素直に祝うべきでしょう!」
怜央奈にそう詰められて、ぐうの音も出ない香多奈であった。そんなやり取りをこなしつつ、夕方の合同訓練で新スキルの遣い心地を試すお泊まり組はとっても楽しそう。
それは当然だし、姫香も仲間のパワーアップに満足そうな表情を浮かべている。末妹の香多奈も、渋々ながらも最終的に皆を祝ってくれた。
とは言えやはり、自分達キッズチームの目に見える能力アップも欲しかった模様。護人にしてみれば、そうなると増々キッズ達が探索に
内心では、そんな事態は勘弁してくれと秘かに願っていたりして。まぁ幸いにも、次の具体的な探索計画は両チームとも立っていない次第。
それでも、新スキルの遣い心地を実戦で試してみたいねとの声はチラホラ。来栖家チームで言うと、ミケと茶々丸がそれぞれ特殊スキルを習得している。
その性能チェックも、早い内に行っておきたい所。
「でも“アビス”ダンジョンは、危ないから行っちゃダメなんでしょ? 他に近場で良い所無いかな、姫ちゃん?」
「う~ん、敷地内の“ダンジョン内ダンジョン”ならまだ幾つかあるけど。アレは家族チームの鍛錬用にって、鬼たちが用意してくれたモノだしねぇ。
素直に協会に行って、どっか無いか明日辺り訊いてみようか?」
「そうっスね……それより、やっぱり露天風呂の建築は無理っスか、護人さんっ!? ハードな特訓の後に、みんなで汗を流すのは必要なレクレーションだと思うんっスよ!
場所はあの辺りが良いっスかね、見晴らしも良さそうだし!」
そんな無邪気なみっちゃんの要望に、賛成~っと声をあげる香多奈と怜央奈であった。キッズチームからも“鶏兎ダンジョン”の回収品のトタンやレンガを融通されて、何となく逃げ場のない昨今だったり。
確かに今も、汗びっしょりになって真面目に訓練に励んでいるお泊まり組の面々である。ご褒美に皆で入れる露天風呂は、ちょっと贅沢なおねだりかもだが叶えてあげたい気持ちもある。
敷地は充分に広いし、ルルンバちゃんの小型ショベルは買い直して今も健在である。それから香多奈が、過去に回収した魔法アイテムを漁りまくった結果。
『フレアストーン』と『竹の杓子』と言う、燃焼系と湧き水系のアイテムを見事に発掘したのだった。これでお湯問題は、何とかなるんじゃないかなと無邪気な提案をしてくる始末。
つまりは、後はお湯を張れる大浴槽さえあれば良いみたい。
いや、他にも排水施設を考えたりと、素人には及ばない手間は色々とある筈。とは言え結局は押し切られて、明日からは野良仕事の合間に裏庭の山の中腹の
それが果たして、ゴールデンウイークが終わるまでに間に合うかは不明である。香多奈と怜央奈は、こんな感じが良いとご丁寧に完成予定図まで描いてくれていた。
親切過ぎて泣きそうな護人だが、完成予定図はどこの一流温泉施設だよってレベルの豪華さ。立派なサイズの岩を、ふんだんに使用しないと完成はとっても無理。
手元にはピザ窯用のレンガと、寄付して貰ったトタンや木の杭しか無い。無から有を創り出すのは、さすがにルルンバちゃんの手を借りても無理っ!
それでも建設予定地の
やり遂げた満足感でいっぱいなのは、ルルンバちゃんだけと言う。
――そんな訳で、仕方なく請負業者を探し始める護人なのであった。
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