第371話 ダンジョンに入場拒否されて対策を考える件
幸いにも、護人は異変に気付いてすぐにゼロ層フロアへと戻って来てくれた。そして、改めて
この現象だが、どうやら特定の人物を通せん坊するらしい。さっき通れたのは護人にコロ助、それから茶々丸に萌にルルンバちゃんと言うメンバーのみである。
その情報から、導き出される答えは何だろうと頭を悩ませる子供達。紗良は既に何となく分かった様子で、反対側の2枚の扉の前に歩み寄ってポンと手を叩く。
それから護人に向かって、今から行う実験に付き合って欲しいとお願いする。つまりはこちらの扉も、さっきと同じように潜ってみようとの提案である。
姫香も興味津々で、それなら私も一緒に潜るねと乗り気での参加を表明する。結果は今度は護人が弾かれて、姫香とツグミは扉の向こうへと消えて行った。
慌てる護人だが、どうやっても闇色のゲートはすり抜けられず。その内に、異変に気付いた姫香が相棒と共にひょっこりと戻って来てくれた。
無事なその姿に、良かったと安堵のため息をつく一同である。
「何とも肝の冷える仕掛けだな、この扉は……どうも一定の条件を満たしていないと、入ったり入れなかったりするみたいだけど。
紗良はその条件が、何なのか分かったみたいだね」
「ええ、推測ですけど割と単純でしたね……香多奈ちゃんが、トイレのマークみたいって入る前にヒントを言ってたし。つまりはこれ、恐らく男女で入れるエリアが別れてるみたいですね。
詳しく調べてみないと分からないけど、右が男性オンリーで左が女性のみかな?」
「なっ、なるほど……さすが紗良姉さん、頭いいっ! つまりは、チーム全員でのエリア攻略は、絶対に無理って事?」
どうやらそうらしい、香多奈はもう少し実験しようと、ルルンバちゃんとミケを連れて左の扉へと突進する。危ないでしょと、思わず姫香も一緒に扉を潜って行く。
結果は何と、全員が潜るのに成功してしまうと言う。ミケは♀なので分かるけど、ルルンバちゃんはどちらも通れるハイブリッドみたいである。
それを確認した香多奈は、凄いねぇと感心し切り。どうやら少女は、ルルンバちゃんは女の子だとずっと思っていたらしい。逆に姫香は、男の子と認識していた模様。
それなら萌はどうなのよと、姉妹の興味は仔ドラゴンへと向かって行く。萌は正真正銘の男の子でしょと、香多奈はその点については自信がある様子。
一方の姫香は、萌もどっちも通れるパターンじゃ無いかなと推理を口にする。それじゃあ行くよと、茶々丸もついでに参加しての3度目の実験が行われる。
そしてやっぱり♂の茶々丸は弾かれて、萌は通り抜けに成功してしまった。自分の推測が当たった姫香は、ほれ見てご覧と誇らしげな表情に。
何にしろ、紗良の推論はほぼ正しいと証明される結果となった。
来栖家にイレギュラーが存在するために混乱したが、とんでもないダンジョンがあったモノだ。男女別の攻略が
3階層の2つのダンジョンは、こんな感じで難易度が高いのかなぁと姫香が疑問を口にする。そう言えば、2階層にまだ未攻略が1個あるよねと、香多奈も話に乗って来る。
つまりは、このままこの妙な男女別ダンジョンを攻略するより、他を攻略をするべきかなぁと。何しろ中の難易度も分からないのに、チーム分断は怖過ぎる。
ちなみに、妖精ちゃんはちゃんと女子カテゴリーだった模様。それを知って、来栖家の子供達は何となくホッとした表情に。いやまぁ、天使とかは性別不明とか言われてはいるけど。
気分的な問題だ、何しろ一緒にお風呂に入る仲なのだから。
「このダンジョンの特性は分かったけど、それでどうするかを話し合わなきゃ。どうしよう、護人さん……無理にでもここを攻略するなら、凛香チームとかに応援を要請する?
それとも、2階層の残りのダンジョンを見てみようか?」
「そうだな、今日は2階層が攻略可能ならそっちに行こうか。この“男女別ダンジョン”は、また他のチームを誘って準備万端にして改めて来る事にしよう。
急に声を掛けられても、他のチームも大変だろうからね」
それもそっかと、納得した表情の姫香は護人の意見に同意の構え。そんな訳で、チーム全員で1階層上っての、別の未踏破ダンジョン前へと移動を行う。
今度は大丈夫かなと、ゼロ層フロアからの扉チェック。ここも5つの扉と、中の状態を
問題は、さっきのような妙な仕掛けが無いかどうかである。その点は問題無く、チーム全員で右端のフロアへの突入を果たす事がホッと安堵の表情の一同。
取り敢えずはその事実を喜びながら、フロアの確認を始める来栖家チームの面々。そこはどこまでも真っ暗で、紗良が慌てて魔法の灯りを準備する。
だがしかし、それで照らし出されたのはほんの数メートルの範囲のみ。香多奈も探索用のハンドライトを取り出して、周囲を照らそうとするのだが。
それでも遠くは全く窺えず、困惑する子供達である。この闇を散らすには、どうも一筋縄では行かない様子。そう言えば、扉のパネルは真っ黒だったねぇと、今更な紗良の言葉に。
それじゃあこの闇は、仕掛けの内なのかなと姫香の返し。
「うわあっ、それはとっても辛いかも……だってこんなに周りが見えにくい事って、普段の生活じゃ滅多に無いよ?
どうしよっか、叔父さん……当てずっぽうに前に進んでみる?」
「どうだろうな、ハスキー達の夜目は利いてるのかな? 俺は《心眼》スキルのせいか、何となく周りの感じは理解出来るけど。
おっと、右手から敵が近付いて来てるぞ!」
その呼びかけに、いち早く反応したのはやっぱりハスキー軍団だった。護人も同じく、後衛の守りを姫香に任せて敵の集団へと突っ込んで行く。
忍び寄って来ていたのは、大ネズミと大コオロギの変則集団だった模様。そいつらは雑魚には違いなく、来栖家チームの前衛陣にサクサク倒されて行く。
途中から茶々丸と萌のペアも参戦したが、その頃には倒すべき敵もほぼいなくなっている始末。ただ、この2匹もしっかり夜目は利くようで一安心である。
さすが野生と言うか、基本スペックは人間より優秀である。
「おっと、うっかり全滅させてしまったな……早い内に、レイジーと萌の変更点のチェックをしようかと思ってたんだが。
しかしこんな暗いエリアじゃ、確認もしにくいし困ったな」
「そうだね……萌も強くなった所を、家族に確認して貰って褒められたいと思うの。こんな真っ暗なエリアじゃ、その確認の仕様も無いもんね?」
「香多奈の言い方はアレだけど、その通りかも知れないね。それじゃあこのエリアは、安全優先で進んで行くでいいのかな?」
そうしようかと、改めてフォーメーションの提案を行う護人。今回はこんな特殊なエリアなので、不意打ちを警戒しながら進まないと大変だ。
そんな訳で、暗闇耐性の無い姫香を前衛に出すのも危険なので、そこは護人が
ルルンバちゃんに関しては、どうも暗視の能力は備わっていない様子。それ用の機器を備えれば、その辺は解決する問題なのかも知れないけれど。
今の所はどう仕様も無いし、その内にそっち系の器具を江川さんに用意して貰うべきかも。そんな事を話しながら、一行はこのエリアを備える布陣を敷く。
具体的には、全員がヘッドライトを装着しての洞窟探検モード。それでも灯りが届く先は、ほんの数メートル先と言う嫌な仕掛けのフロアである。
魔法の灯りも同じく、ちっとも周囲を照らしてくれないと香多奈などは文句タラタラ。こういう仕掛けなんだから仕方無いよと、紗良などは諦め模様。
「そうは言うけどさ、紗良お姉ちゃん……これじゃあ次のエリアに向かおうにも、どっちに行けばいいのかさえ分かんないよっ!
エリア攻略、どうやってすればいいの?」
「一応は大丈夫だ、香多奈……怪しい建造物が、向こうにあるのが何となく感じられるから。そっちに向かってみよう、ハスキー達もそっちに反応してるかな?
いや、これは敵の気配に反応しているのかも」
どちらにしろ、暗闇に苦労している来栖家チームは遣り取りもどこかちぐはぐ。向こうってどっちと、行く先の方向転換も
そして始まる戦闘音、ハスキー達と茶々萌コンビが敵の接近に反応した模様。今度の敵も、大ネズミと大コオロギの混成軍らしい。
後衛陣からは全く見えないけど、戦いの気配に新たに近付く気配が無いか、慎重に周囲を窺う子供たち。護人は中衛で指揮を取りながら、抜け出す敵がいないか厳重にチェックする。
なかなか神経を使うエリア構造だが、ハスキー達には関係ないみたい。程無く完全勝利して、近付いて来た護人に揃って尻尾を振っている。
ただし、茶々丸だけは暗闇に対して、何故か荒ぶって角を突き出す仕草。次の瞬間、チャリンと何かが地面に落ちる音が小さく響き渡った。
転がる魔石を目にした護人が、どうやらシャドウ族がいたみたいだと後衛に用心するように通達する。遺跡タイプのダンジョンに多い、この待ち伏せタイプのモンスターは暗闇だと尚更厄介。
しかし見渡した感じだと、ここはフィールド型ダンジョンのよう。
「えっ……そうなの、護人さん? 確かに壁っぽいモノは見当たらないから、洞窟タイプとも遺跡タイプとも違うみたいだけど。
天井も無かったんだね、灯りが無いって本当に不便だわっ」
「本当にそうだね、ちゃんと目的の場所に近付いてるかも分かんないし。敵の姿さえ見えないから、探索してるって気にならないよね。
撮影も意味無いかも、ずっと姫香お姉ちゃんのお尻撮ってるよ……」
勝手に人のお尻を撮るんじゃ無いわよと、妙な遣り取りからの姉妹喧嘩の勃発に。シャドウ族の注意喚起はどこへやら、呆れる紗良が2人を
しかしこう暗くては、確かに探索に対する意気も上がらない。困ってしまう事態だが、ようやく目的地が近付いて来たと護人のアナウンス。
何があるんだろうと、必死に灯りをかざして確認に走る姉妹。結果、分かったのは大きな石の柱が連なって、ぐるっと円を描いてる空間があるって事。
俗に言うストーンサークルだが、その中央には目的のワープ魔方陣もちゃんとあった。ただし起動はしておらず、その側には何かをお供えしろとばかりに台座が1つ。
不親切な事に、ヒントはそれだけで何がキーとなって魔方陣が起動するのかは判然とせず。頭を寄り合わせて協議した結果、敵が何か落とすのかもとの推測くらい。
それともこの暗闇の中、ヒントも無しに何か怪しいモノを探し回るのか。それもナンセンスには違いなく、それでもキョロキョロと周囲を窺う子供たち。
当然ながら、暗闇の中は全く見渡せず仕舞いで嫌になる。
「これは困ったねぇ、本当に
違ったら、ひょっとしてずっとここに足止めのパターン?」
「どうだろうな、そうならない事を祈……おっと、敵の気配が周囲から続々と近付いて来たぞ。参ったな、誘い込まれた形じゃないか。
姫香、ルルンバちゃんとそっちの入り口を受け持ってくれ。茶々丸と萌は、レイジーとそっちを、ツグミとコロ助はその反対側を頼む!」
「わっ、わっ……何かわさわさした音が近付いて来るっ!」
香多奈の叫び声と共に、サークルの裏正面から大ムカデが飛び込んで来た。それを『圧縮』でブロックしつつ、ここは通さないよと勇ましい姫香の
左右からも、続々と敵の気配が押し寄せて来る。今回の大ネズミは、どうやら人よりも大きいサイズが揃っているみたい。それに混じって、シャドウ族も参戦している気配が。
正面を受け持つ護人は、“四腕”を発動させて同じく敵を1匹も通さない構え。大ネズミや大コオロギの数は、今までの出演の少なさの
つまりは、石柱の間を埋め尽くすほどの数の参戦である。
――囲まれた形の来栖家チームに、窮地を脱する
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