第326話 カメ型要塞の塔の中でお宝を発見する件
「うわっ、レイジー達が何かの鍵を持って帰ってくれたっ! お手柄だね、レイジーにツグミにルルンバちゃんっ!
凄いや、叔父さんも褒めてあげてっ!」
「おっ、おう……みんなよく頑張ったな、凄いぞ。しかし本当に、鍵を見付けて持って帰るとは思わなかったなぁ。
本当に大したもんだよ、レイジー達は」
そう言ってレイジーを撫でてやりながら、鍵を受け取る護人。レイジーは物凄く嬉しそう、それは姫香に撫でられているツグミも同様である。
ルルンバちゃんは、香多奈がしっかり褒めている最中である。何しろルルンバちゃんも、褒めて貰えないとしっかりと
ただし、それを見ていたコロ助と萌は不満そう。自分達にも活躍の場が欲しいと、探索の再開を
困ったねぇと、紗良などは薬品で解決しないかと色々と鞄の中を探るのだけれど。気力と言うか、理力の回復役は残念ながら今の所発見されていない。
そもそも、理力を
護人もまさか、ここまで『飛行』能力で疲労するとは思ってもいなかった。姫香も困り果てて、この先の塔に入ってそこで一晩過ごそうかと言い出す始末。
ただしそれって、超巨大カメの上で1泊するって事でもある。
「そっか、それは色々と怖いかもねぇ。起きたらどこにいるのって、そこから確認しなきゃならない破目になるかもだし。
それじゃあどうしよう、紗良姉さん?」
「う~ん、回復に一晩費やすのは仕方ないとは思うけど。せめて次の層に辿り着いてからの方が、安心出来るかもねぇ」
「それじゃあ、どっちにしろ向こうの塔に行かなきゃだね。叔父さんは休んでればいいよ、紗良姉さんが代わりに指揮を執れば良いんだから」
確かに万が一の時は、紗良がサブリーダー役と決めてはいたけれど。急にそんな大役を振られても、戸惑うばかりで上手く出来る自信がないとの長女の弁。
折衷案で、チームの指揮は護人が執って、前衛任務はこの先ずっと姫香が担う事に。つまり護人は後衛と一緒に行動して、前衛のいざと言う時の戦闘指揮は姫香が執る決まりに。
それでいいよと姫香も納得して、休憩も終わっていよいよ超巨大カメの甲羅の上探索の開始である。香多奈も張り切って、ここは亀の甲羅の上ですとスマホ撮影に解説を加えている。
その元気さが羨ましいが、姫香が加入した前衛組もまだまだ元気。敵の接近に備えつつ、ハスキー軍団が探索に集中して少し前を進んで行く。
その能力を持たない姫香や萌は、茂み越しに周囲を窺いながらハスキー達の後に続く。萌を乗せている茶々丸は、草食動物だけあって気配には鋭いみたい。
それでも先輩のハスキー達を信じて、茶々丸はそんなに出しゃばる位置取りではない。姫香の隣で、割と呑気に歩を進めている。
そうして進んで行くと、程無く噂の塔が視界に出現した。
その見た目だが、8層で見た奴とほぼ同じ形で幅や高さも一緒の感じを受ける。建築素材も同じだろうし、護衛もリビングメイル2体と前の層と一緒みたい。
戦いを任された姫香は、さぁ誰が行くのと変な仕切りを始める始末。別にみんなで一斉に襲い掛かっても、卑怯者と批難して来る者などいないのだけど。
何と言うか、前の層も2対2で戦った影響が変に出てしまった感じ。
その相棒にと進み出たのは、何と茶々丸と萌のペアだった。こちらも両者とも勇ましい表情で、姫香やレイジーに対してここは任せてアピールに余念が無い。
レイジーも出しゃばる性格ではないし、姫香にしてもみんなで頑張ろうの精神の持ち主だ。そんな訳で、このマッチメイクを了承して後方から応援する素振り。
それだけで頑張ってしまう、お調子乗りのコロ助と茶々丸である。反応した甲冑騎士相手に、勢い良く襲い掛かって戦い始める両者だったり。
まぁ、茶々丸には毎度の萌も騎乗しているのは、コンビなので良しと言う事に。
その戦いも、白熱はしたモノの経験も手数もこちらの方が上なのは見れば分かった。コロ助のハンマー操作も、何度もこなす内に上手くなって来ている気が。
茶々丸と萌のペアも、戦い方は従来通りの特攻中心でペースを相手に渡さない。敵の硬い装甲も、萌の持つ魔槍はそれ程の苦も無く貫いてしまった。
何より茶々丸の角の威力も、スキル込みで割とエグイ貫通力を発揮している。ほんの数分もしない内に、対戦相手の装甲は穴だらけの有り様。
逆にコロ助の相手は、ハンマーの殴りを受けてペチャンコ状態に。さすがの難敵も、この両者の攻撃力に白旗を上げざるを得ずの結果となった。
そんな訳で、反撃を封じ込めての完勝を勝ち取る両者である。
「お疲れさま、みんなっ……頑張ったねぇ、怪我とかしてない? 叔父さんが力出なくてダウンしてるから、他のみんなで頑張らなくちゃね!
おっと……またカメさんが移動したみたい」
「歩く度に、割と結構な振動が来るよね、ここって。さて、皆ご苦労さまっ! これで塔の中が拝めるよ、宝物庫はどこかなぁ?
ツグミとルルンバちゃん、チェックお願い」
「あれっ、塔は扉が閉まってるかと思ってたけど、さっきと同じで扉無しの入り口だねぇ? って事は、中に鍵が必要な扉があるのかな?」
紗良の言葉に、確かにそうだねと入り口を眺める姫香。ツグミとルルンバちゃんが先行して入り込み、異常が無さそうなのを見てレイジー達が後に続く。
姫香も確認に入り込んで、塔の1階部分をじっくりと見回してみる。すると、がらんとしたフロアの中央に淡い光を放つワープ魔方陣が。ドロップ品を回収した香多奈や後衛陣も、ようやく前衛陣に続いて中に入って来る。
一緒に入って来た妖精ちゃんが、これは次の層へのワープ魔方陣だと保証してくれた。それは良いのだが、宝物庫はどこよとツッコミを入れる末妹の香多奈。
まだ上があるねと、紗良が外壁に沿って続く回廊を指差す。ツグミとルルンバちゃんは、そちらへと既に偵察に赴いている様子。慌てて姫香たちも、その後に続く。
先程の塔の2階は大フロアだったけど、ここはどうも違うらしい。壁で半分の仕切りが
こちらは1階への帰還用みたいで、先程の塔にも同じくあったモノ。ただしもう半分を仕切る壁には、重厚で頑丈そうな扉が窺えた。
もちろん鍵付きで、どうやらこれが噂の宝物庫らしい。
「やった、多分ここがそうだよっ……探してた秘薬素材もあるかもね! 姫香お姉ちゃんっ、鍵を早く開けてみてっ!
うわあっ、お宝部屋っていつ以来かなぁ!?」
「まだそうと決まった訳じゃないでしょ、慌てなさんな香多奈。護人叔父さん、罠も無さそうだし入っていいよね?」
「そうだな、慎重にな」
護人の許可も得て、ツグミとルルンバちゃんも安全を確認し終えての開錠を行う姫香。子供たちのワクワクした感情に釣られて、ペット勢もテンションは高め。
そして重々しい音を立てて開いた扉に、おおっとため息に似た歓声が。中は部屋の仕切りは無く、倉庫のような空間に色んなアイテムがいっぱい!
そのほとんどは魔法アイテムだったり、換金性の高い代物だったり、確かにここは宝物庫だ。テンション高くそれを見て回る子供たち、妖精ちゃんも珍しく興奮模様。
これは大当たりだぞと、小さな淑女はあちこち飛び回りながら並んだ品物を鑑定しまくっている。香多奈もそれを受けて、全部持って帰れるかなと変な心配をし始める始末。
それは大変かもねと、その品数と分量を眺めた姫香の相槌はごもっとも。紗良は上にも部屋があるねと、階段を見付けてそっちもチェックに向かっている。
レイジーが護衛についてくれて、護人も安心して入り口付近で休憩出来ると言うモノ。入り口近くにあった高級そうなソファは、鮮やかなオレンジ色で座っただけで疲労が回復して行きそう。
実際、良い香りも漂って来て魔法アイテムなのかも知れない。
そんな感じで護人が疲労でだらけている間にも、子供達は張り切ってアイテムを見て回っていた。そして妖精ちゃんと相談しつつ、持って帰る物の選別など。
ところが事態は、ある品物を発見してから思わぬ方向に。それはアンティーク家具の欄に紛れていて、一見すると重厚でやや古い木材性のタンスだった。
いざとなれば、ツグミと薔薇のマントに頼もうと思っていた空間収納だったけど。何とそれがこの古いタンスの引き出し4つに、備わっていると判明して。
これなら、家族の魔法の鞄以上の量が収納可能である。
「凄いスゴイ、この中に何でも入っちゃう! これなら全部持って帰れるかも、とにかく全部このコーナーまで運んじゃおう、ツグミ!
香多奈、運んで来たのをタンスの引き出しにどんどん入れて行って!」
「いいけど、鎧とか重いのは私の力じゃ無理だよ、姫香お姉ちゃん! そっち関係はお姉ちゃんがやってよね、叔父さんのマントでも良いけど」
「みんなっ、上の階は軽い素材ばっかりみたいだよっ。ちょっと見た限りじゃ、目的の秘薬素材は無いみたいだったね。
それでも下に持って行って、みんなでチェックした方が良いかもね」
紗良の報告に、は~いと元気な返事の姫香と香多奈。ここは残念がる所なのだが、お宝に囲まれてる幸福感はそれに勝る喜びだったりして。
あまりに子供達が楽しそうなので、とうとう薔薇のマントが護人から離れて個人回収を始める始末。これはお手伝いを自ら買って出たのか、それとも個人欲に突き動かされたのか。
ちなみに薔薇のマントだが、子供達は叔父さんのマントみたいな呼び方しかしない。今も香多奈が、叔父さんのマントが手伝ってくれてると呑気に姉達に報告している。
これも収納能力と、自身で壁を這う能力のお陰ではある。そんなマントに、勝手に魔法スキル食べちゃダメだよと、姫香は釘を刺すのを忘れない。
何しろ向こうは常習犯、隙を与えたらマント類は全部食べられてしまうのだ。
そんな騒ぎの中、順調に宝物庫のアイテムは整理されて行く。妖精ちゃんは大忙しで、持って行く必要の無い者と価値のあるアイテムの選別を行ってくれている。
本当に有り難い存在だが、どうやらやっぱり目的の秘薬素材はこの中には無かった模様。それでも価値のある物は、幾つも発見されて空間収納行きとなった。
例えばミスリル装備&武器各種とか、ドラゴンの鱗装備一式とか。純金の置物だったり、銀の食器各種だったり。魔石も魔結晶も、大中小と各サイズ揃って小箱の中に収められていた。
移動大砲みたいなパペットだかゴーレムも、鎧と一緒に鎮座していた。勝手に移動してバンバン大砲を撃って来る敵は、対面すると恐ろしいかも。
香多奈が、ルルンバちゃんの新しいパーツ用に良いんじゃないかと言うので、それも何とかお持ち帰り品目入りに。そう言われると、魔導ゴーレムのズブガジと似た素材に見えるかも知れない。
まぁ、使うか使わないかはかなり微妙だけれど。何しろ砲弾がどこを探しても見付からないので、大砲と言ってもただのコケ脅しだったりするのだ。
とは言え、香多奈の我が儘は今に始まった事ではない。
それから紗良が上の階で見付けた、そこそこ高価な素材系が割とたくさん。中には希少素材もあったけど、目的の『熟した虹色の果実』では無かった。
他にも価値は良く分からないけど、異世界の絵画やら楽器やら魔法アイテムもそこそこ見付かった。しかもオーブ珠が3個に、宝珠も1個ゲット出来た。
護人がずっと座っていたソファも、やっぱり魔法アイテムだった様で。子供達に容赦なく回収され、近くにあった敷き物もどうやら幻獣の毛皮製らしい。
それから亀の形の香炉に、割と高価そうな香木のセットが棚の上に。それより一番価値が高いのは、やっぱり空間収納付きのタンスだろうか。
それを収納&お持ち帰り出来るのは、容量的にツグミだけみたい。
そんなアイテム確認中に、部屋の隅の立派な衣装棚の前で、薔薇のマントが何やら騒ぎを起こしていた。これは発見したモノを食べようとしてるなと、香多奈の報告に慌てて姫香が駆けつける。
その途端、衣装棚から飛んで来た白い布が、姫香の首筋に巻き付いて来てビックリ仰天。なおも襲い掛かろうとする薔薇のマントを
それは白い百合の意匠のされた、見事な意志あるマントだった模様。
――つまりは、来栖家の邸宅の壁がまた派手に
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