第294話 2月も終わっていよいよ3月がやって来る件
前回の2つ目の“ダンジョン内ダンジョン”も、中途半端な攻略に終わってしまった。とは言え2日続けて半日近く探索を行うとなると、やっぱり子供達の体力が心配である。
そんな訳で、その次の休日はきちんと休みに割り当てる事に。香多奈などは平気だと言い張っていたが、護人から見ても疲労の色が濃い。
探索と言うのは、何もひっきりなしの戦闘がメインでは無い。ダンジョン内の移動も同じ位に必要で、その為の体力も当然必要になって来るのだ。
その点、昨日のダンジョンは必要以上に気を使う炎のエリアと、それから歩くのが大変な雪原のフロアのダブルパンチだった。子供でなくても、普通に疲労の溜まる探索業ではあった。
ただし、ハスキー軍団や茶々丸は普通に今日も元気だけど。
護人に関しても、レベルの恩恵があっても連続勤労は辛い所。そんな訳で、休日の今日は午前中を協会報告に
来栖家チーム的には、装備の変更や新スキルの取得でチーム力は向上している筈。そんなアップデートだが、実は探索に十全には発揮出来てない事態がチラホラ。
具体的には護人の薔薇のマントの吸収した能力だとか、萌の新スキルだとか。
ちなみに氷のフロアで最後に獲得した宝箱、中身は割とショボかった。鑑定の書が4枚にスキル書が1枚、それから魔結晶(小)が9個に魔玉(氷)が7個。
それから氷属性と思われる魔法の矢弾が40本に、同じく魔法アイテムと思われるクーラーボックスが1つ。あとは恒例の氷の鍵と、何故か業務用の大きなかき氷機が1台。
これには一同ビックリで、香多奈などは素直に喜んで食べようと
ちなみに、今回出たスキル書2枚は、チームの誰も覚えられずの結果に。そればっかりは、残念だけど仕方がない。そして魔法アイテムも、6層攻略ではそれほど集まらず。
仕方無い事とは言え、その結果にションボリな子供たち。
「今日は、凛香チームが近場に探索に行ってるんだっけ? 取り敢えず何かあれば、私のスマホに報告が来るだろうけど。
協会に換金に行くくらいなら、家を離れても問題は無いかな?」
「そうだねぇ、魔法アイテムは少なかったけど、相変わらず魔石(極小)は凄くたくさん回収出来ちゃったからねぇ。
さっさと換金して、手放した方がいいよねぇ」
「それじゃあみんなで協会に行こうか、ついでにキャンピングカーを家まで運転して持ち帰ろう。さすがにもう雪は降らないだろうし、家族で移動するにはあっちの方が良いからな。
そう言えば、異世界チームにキャンピングカーを買って渡すのってどうかな?」
香多奈はその護人の提案を耳にして、ケタケタと笑い出す始末。どうやら壮大なカルチャーショックを受ける猫娘を想像して、笑いのツボに
姫香はそこで3人(+1機)で生活するのは、大変なんじゃ無いかと意見を述べる。確かにおっさん1人と女性2人の共同生活は、キャンピングカーの密室では辛いかも?
それならまだ、お隣の4軒空き家の1軒を使って貰った方が良いだろう。ただし、麓やダンジョンへの移動の際には、何らかの交通手段があった方が良さそうだ。
とは言え、異世界チームの誰かに車の運転を覚えて貰うのも大変そうだ。その辺も、誰か運転手を付けるとか手段を講じないといけないかも。
異界のチームを迎え入れるにしても、考えるべき事は多い。
ムッターシャの話では、使節団を一緒に連れて来る予定であるとの事だったし。そうすると、二桁の団体さんをお世話する可能性も出て来る訳だ。
その辺の話し合いは、以前に広島の協会本部長の葛西と交わしはしたのだが。アレも言わば丸投げと言うか、大半はこちらの裁量に任されている気がする。
文句や意見があれば、この町の協会に残っている秘書の土屋にしてくれとは言ってくれていた。とは言え、彼女に幾ら愚痴をこぼしても出来る事は限られている。
例えば大金や別荘的な施設を、右から左にポンと用意などは彼女にはまず無理だろう。護人にも無理だが、最悪自宅に泊めたりとお持て成しは可能である。
ただまぁ、この先ずっととなると相当大変には違いない。
「叔父さんっ、そう言えば熊爺の所にお邪魔する話はどうなったの? この前、ちょこっと様子を見に行ったって話してたじゃん。
そんで、今度はみんなで一緒に行こうって言ってたよね?」
「ああっ、そうだったね……青空市の前日の、土曜日辺りに行こうか? 熊爺のところの卵や何やらも、ウチのブースで売っても良いって熊爺が言ってたし。
向こうの子供達に、接客をみんなで教えてあげればいいんじゃないか?」
それは面白そうだねと、出掛ける用意の出来た姫香が言って来た。紗良もアイテムの整理は出来たようで、魔法の鞄を背負いつつ戸締りやお出掛け前の火の元チェックに余念がない。
香多奈は今日からキャンピングカーなら、茶々丸と萌を連れてっていいよねと護人にお伺い。ルルンバちゃんも、当然の如くついて行く気満々の様子である。
相変わらず出掛ける前の騒がしさの中、護人は前もっての今から伺いますコールを協会に。能見さんが応対してくれて、待ってますねと温かい返事を貰った。
その勢いのまま、子供達を急かしてランクルへと乗り込んでいざ出発。やっぱり狭い車内に子供たちは文句を言いつつ、ようやく雪解けとなった峠道をそれなりの速度で降りて行く。
春はもうすぐだ、それが予知による波乱を含んでいたとしても。
協会に辿り着く前に、植松の爺婆の所に寄って軽く挨拶を済ませておく。それから来栖家愛用のキャンピングカーへと、家族全員で乗り込んでの再出発。
約束の時間に少々遅れたけど、協会の面々は温かく来栖家チームを迎えてくれた。例の土屋さんも同席していたが、挨拶以上のコンタクトは無い模様。
護人も特に用事は無いし、子供達がとにかく騒がしくて能見さんと喋りまくっている。何と言うか、局地的に物凄いコトになって仁志と土屋も引いている表情だ。
それでも持参した魔石とポーションを査定に出して、これで用事の半分は終わった感じ。護人も仁志支部長と世間話をしながら、例の異世界チームはまだ来ないと定期報告など行っている。
そんな事をしている間に、仲良し女子軍団は動画チェックを始めていた。今回は流せない内容は映ってないよねと、能見さんの事前確認の文句は洒落になって無い気も。
大丈夫な筈だよとの、姫香の返しも考えてみれば変なのかも。それでも最初の炎のエリアには、協会の面々も驚いた様子で画面を眺めている。
確かに傍目で見たら、かなり恐ろしいギミックかも。
「えっ、これも例の“ダンジョン内ダンジョン”なんですか、来栖さん……うわっ、こんなエリアもあるんですねぇ。さすが“鬼のダンジョン”だな、属性縛りとは。
これをクリアすれば、何らかの成長が得られる感が半端ないですね!」
「そ、そうかな……まぁ、与えられた試練と言われたらそうなのかもですが」
鬼のメシア強化計画を真に受けている仁志は、動画の内容にいたく感銘を受けた様子だ。護人からしてみれば、癖のあるダンジョンを探索したって程度の感想なのだけれど。
子供達もその点は同じで、熱かったよねとか探索の感想を口にするのに忙しい。特に香多奈のお喋りは、萌を抱きかかえた姿勢でとどまる所を知らず。
全ての来栖家チームの動画を、事前にチェックしていた秘書の土屋も、初めて直に見る仔ドラゴンや妖精の姿にビビり気味。来栖家チームのリアルは、破天荒を通り超してある意味異世界である。
そんな動画も、気付けば氷のエリアのシーンへと移行していた。雪の中の移動は大変だったよと、子供達は昨日のダンジョン探索を振り返って愚痴模様。
ハスキー軍団と茶々丸は、今も外で走り回っているけど。
彼女たちの元気さは、真似したくても人間には不可能なレベル。茶々丸も仔ヤギの姿に戻って、ご機嫌に駐車場を跳ね回っている。
良く分からないが、皆で一緒にお出掛けはそれだけで楽しいのだろう。これからの季節はキャンピングカー移動が可能なので、置いて行く真似はせずに済みそう。
その点に関しては良かったなどと思っている内に、動画の中では氷の魔人が倒されていた。能見さんに褒められて、子供達は必要以上にテンション高めをキープ。
そのままの勢いで、どうやら妖精ちゃんを交えて魔法アイテムのチェックを始める子供たち。今回も、魔法アイテムより鑑定の書の方が多いみたいでアレだけど。
内容的には、まずまずの良品が混じってそう。
【炎のランプ】使用効果:魔界の炎(赤の魔石使用)
【フレアストーン】使用効果:保温~燃焼・永続
【炎の扇子】装備効果:炎風&防御up・中
【魔法のクーラーボックス】使用効果:冷却(青の魔石使用)
【氷の大剣】装備効果:切断&鋭刃&凍結・大
特に『魔法のランプ』は、レイジーの眷属召喚スキルと相性が良さげ。今までは、わざわざ炎を起こしたり、魔玉(炎)を使ったりと前準備が大変だったのだ。
他のアイテムだが、『氷の大剣』以外は生活に便利な品みたい。『炎の扇子』に関しては、戦闘に使えるのかどうかは微妙なラインではある。
レイジーが欲しがれば、使ってみるのも良いかも知れない。ただし、これで死角が無くなると、本当にレイジー無双が始まりそうでちょっと怖いかも。
とにかくこのダンジョンで、属性系の魔法アイテムを集められる事も分かった。この“鬼のダンジョン”は、例えコアを壊しても再起動は他より早いとの事。
何かあれば、また取りに潜るなんて手法もアリかも知れない。
ちなみに動画鑑賞の途中で、魔石の換金の結果が報告されて来た。今回は150万円程度と、クリア階層の少なさの割には儲けはまずまずの結果に。
今回はスキル書や高価な薬品は売らず、取り敢えずキープの方向に。協会の方からも、今月のノルマをクリアせずとも既に良いみたいな雰囲気が。
何しろ先週は本部長もこの町に訪れて、ここは重要拠点との認識を持って貰えた感触も得た。それを受けて、この支部にも更なるテコ入れをしてくれそうな気配がチラホラ。
ここに残った秘書の土屋にしても、その必要性を認識しているに違いない。ただまぁ、専属で稼働している探索者チームの少なさが、唯一のネックと言った所か。
何しろエースの来栖家チームすら、農家との兼業探索者なのだ。
「あっ、ついでに私のステータス鑑定してもいい、叔父さんっ!? あとしてないのは誰だっけ、コロ助や茶々丸もしてないよねっ?」
「茶々丸と萌は1月にしてるじゃん、紗良姉さんはもう随分やってないよね? 今回は香多奈と一緒にすればいいよ、紗良姉さんも二つ名貰えてるかもよ?」
「そっ、そうね……二つ名は別に欲しいとは思わないけど、香多奈ちゃんと一緒に鑑定はしておこうかな?
自分の成長の具合も、一応は知っておかなきゃね」
動画の視聴会とアイテム鑑定会も無事に終わって、後は何があるかなと家族で話し合っていたら。香多奈がチームのステータス鑑定の事を思い出して、次は自分の番だと主張して来た。
そのお願いは何とか通じて、ついでに紗良とコロ助も行う流れに。随分と間が空いた気もするが、これでチームの今年最初の鑑定は揃った感じ。
【Name】稲葉 紗良/Age 19/Lv 19
HP 68/68 MP 82/95 SP 52/60
体力 D+ 魔力 B 器用 C- 俊敏 E+
攻撃 D- 防御 E+ 魔攻 C+ 魔防 B+
理力 D 適合 D 魔素 D+ 幸運 D
【Skill】『回復』『光紡』『解読』
【S.Skill】《結界》《氷雪》
【Title】《光の癒し手》
【Name】来栖 香多奈/Age 11/Lv 22
HP 42/48 MP 64/84 SP 41/59
体力 D- 魔力 C 器用 D 俊敏 D+
攻撃 D- 防御 D+ 魔攻 C- 魔防 E
理力 D 適合 E 魔素 C+ 幸運 B-
【skill】『友愛』『応援』『魔術の才』『天啓』『叱責』
【S.Skill】《精霊召喚》
【Title】《溢れる奇才》
【Name】コロ助/Age 3/Lv 25
HP 136/152 MP 39/42 SP 40/62
体力 A 魔力 C- 器用 D 俊敏 B
攻撃 C+ 防御 C 魔攻 C+ 魔防 C-
理力 C- 適合 C- 魔素 C+ 幸運 D
【skill】『牙突』『体力増』
【S.Skill】《韋駄天》
【Title】《放蕩護衛犬》
「あははっ、コロ助の称号は《
香多奈もレベル20を超えてるじゃん、凄いスゴイ」
「おざなりに褒めるのやめてよ、姫香お姉ちゃんっ! う~ん、数字はちゃんと成長してるのに、何で《精霊召喚》は未だに発動しないんだろう?
妖精ちゃんは、気長に構えてろって言ってたけど」
「先生の言う通りでいいんじゃない、香多奈ちゃん……私も魔力を中心に、一応はちゃんと成長してるかなぁ?
称号もいつの間にかついてるね、私のは《光の癒し手》だって」
ピッタリじゃんとはやし立てる妹たち、それに照れながら対応する紗良は少し嬉しそう。傍目からは普通の姉妹の遣り取りに、来たばかりの土屋は呆れたような表情。
何しろどう見ても、腕利きの探索者チームには見えないのだ。リーダーの男性からして、カリスマの欠片も見当たらない
こんなチームに、果たして“春先の異変”を任せて大丈夫なのか。
――B級探索者の看板の重さを、それは
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