第43話 HPと特殊スキルを確認する件
何とかダンジョンの帰路も無事に踏破して、車に乗りこみ我が家へと辿り着き。全員が安堵の表情を浮かべる中、入浴と夕食を滞りなく済ませて。
皆がリビングに集合して、恒例のアイテム鑑定会……の前に、今回はガッツリ反省会を行いますとの護人の提案に。それは大事ですねと、紗良の同意は簡単に得られ。
やや神妙な顔で、年少組もそれに加わる。
「えっと、反省って……7層の桟橋の事でいいのかな? 今まで探索してて、初めての本格的ピンチだったよね。
確かにアレは怖かったよ、護人叔父さんが急にいなくなるんだもん」
「そうだな、不意な襲撃に対する注意を怠ったのがまず1点。ダンジョンはチーム分散の罠もあるかも知れないし、これを機にサブリーダとか決めておこうか?」
反省会と聞いて、怒られるかなと身構えた年少組もこれには安堵。今後の方針決めならと、姫香と香多奈の口調も滑らかになって来る。
順当に紗良の名前が挙がって、多数決であっさりと決定に至るけど。本人は自信なさそうで、取り敢えずは頑張ってみるけどと不安げなコメント。
確かに、性格的には向いてないかも知れないが。
護人や姫香からの、普段からの評価が高いのも確かなので。この配役は順当だ、それよりあの左肩から生えていた黒い腕は何なのと、姫香は興味津々で訊ねて来る。
寸でのところで危機を回避出来たのは、確かにアレが発動したお陰である。恐らくはオーブ珠で取得した特殊スキル《奥の手》なのだろう。
アレが無ければ、最悪溺れ死んでいたかも。
そう思うとゾッとするが、説明を聞いた子供たちは満足げでどこか誇らしそう。やっとこさの護人のスキル開花に、もろ手を挙げて拍手する勢いである。
反省もするけど、ようやく特殊スキルが開眼したのも大きなメリットだ。今後は姫香の『圧縮』スキル共々、上手に活用出来るよう特訓するのも良いかも知れない。
そう話すと、姫香も超乗り気で賛成とご機嫌模様。
「後は……地上組の苦戦は、リーダー不在に加えてMP切れも主な理由だったのかな? 探索はやっぱり、余裕をもって潜らないと本当に危ないな。
今後はこまめな休憩と、それに合わせたMP管理も必要だな」
「それもあるけど、あの時は相性の悪さもあったかなぁ? 泥の腕には殴ったりするのが、あんまり効かなかったんだよね。そんな敵にくっ付かれて、みんな焦って冷静な判断が出来なくなってたし。
ルルンバちゃんも頑張ってくれてたけど、ネイルガンが弾切れしちゃったらしくって。そう言えば新しいスキルも覚えてたのに、誰も活用する手伝いしてあげて無かったよね?
そう言う事前準備も、今回は足りなかったと思うよ!」
手厳しい姫香の駄目出しに、そうだったねぇと香多奈はしょんぼり顔で応える。家畜やペットの世話は大変だけど、サボってしまうと相応のバツが待っている。
そういう環境で育って来たので、姉の指摘には参っている様子。護人も同じく、忙しさにかまけて家族サービスを怠ってしまったバツの悪さを感じつつ。
今後は事前準備にも、力を入れようと締めくくる。
他にも細々とした注意点や、危ない場面から学んだ教訓などもあるのだけれど。挙げて行っては
何よりも、護人の教育方針は褒めて伸ばすである。今回危なかったからと、叱り過ぎるのも宜しくは無い。そんな訳で、お小言はこれにて終了。
それを受けて、途端に香多奈が張り切り始めるのは毎度の事。仕切るのは姫香だが、ゲットした品々を弄り倒しては、どれを鑑定しようかと
今回得た鑑定の書は7枚で、前回の余りを足すと9枚になるらしい。その前にスキル書2枚のお試しタイムだと、張り切って家族に回している。
その結果、1枚が見事に紗良に反応!
「やった、おめでとう紗良お姉ちゃん……妖精ちゃんの鑑定だと、光系のナニかだって! 回復に続いて、新しい魔法スキルをゲットだねっ!」
「あ、ありがとう香多奈ちゃん……そっか、私も2つ目のスキル覚えたんだ。ちょっと嬉しいかも、後は頑張ってどんな魔法か確認しなきゃね。
姫香ちゃん、また訓練一緒にしようね」
もちろんと元気に返事する姫香、ちなみにもう1枚はペット勢にも反応せず。残念だが仕方が無い、これは青空市で売りに出す事に決定して。
7層まで攻略しただけあって、今回はアイテムも豊富である。そう言えばと思い出して、護人は途中で生っている果実を食べちゃったなと子供たちに報告する。
似たようなのが、収穫した中に混ざっていたのだ。
それじゃあ一応、今回はそれも鑑定しようと香多奈の言葉に。木の実って、結構残ってたよねと姫香が続く。1ダース以上あるかなぁと、アイテム管理責任者の紗良。
香多奈が手に取った虹色の果実は、それらより群を抜いて存在感があった。どことなく甘酸っぱい匂いを放っていて、瑞々しさも感じさせる。
それを含めて、今回は6個のアイテムを鑑定する事に。
【河童の首飾り】装備効果:HPオート回復
【初級エリクサー】使用効果:状態全回復・小
【魔法の
【金魚の置物】設置効果:湿度調節・中
【虹色の果実】使用効果:レベルUP+1
【ルキルの苗】育成効果:ルキルの実収穫・中
「わっ、また魔法の鞄が入ってた……えっ、この古惚けたお魚入れる網籠がそうなの? 信じられないけど、鑑定の結果が言ってるんだもんね。
凄いや、私達ラッキーだねぇ!」
「本当だねぇ、他にも何だか凄いのが混じってる……魔法のアイテムが2つあるけど、金魚の置物は微妙かな? 首飾りは、怪我し易い前衛の人向けだね。
初級エリクサーは、これはかなり高価かも?」
「買い取り価格表によると、100mlで15万円だって、凄いよお姉ちゃん!」
それは確かに凄いと、高額商品の獲得に興奮模様の子供たち。どうやらエリクサーは、全ての異常状態もHPやMPの低下も、一瞬で癒す能力があるらしい。
それは確かに高額になるだろう、ただしこれは『初級』なので、治せない状態回復もあるのかも知れない。とにかくそれを含めて、売らずに取っておく事に決定。
そして魔法の
しばらくは香多奈が、色んなものを詰め込んで遊んでいたのだが。どうやら今回の魔法の鞄に関しては、ちっとも重さが増えないらしい。更には容量も、かなり詰め込めそうとの事で。
これはとんでもない拾い物、探索がもっと
そして残った4本の苗と木の実だが、ちょっとこれもトンデモない代物っぽい。ルキルの苗は、ダンジョン外で育成出来るかはトンと不明だけど。
虹の木の実は、恐らく食した者のレベルが上がるって意味だろう。とんだパワーUPアイテムが混ざっていたモノだ、誰か食べるか束の間の議論があって。
香多奈の挙手は、もちろん全員によって封殺される場面も。
「俺とレイジーは、探索中に1個ずつ食べたからな……順当にいけば、姫香か紗良なんだろうけど、ダンジョン産の食べ物を若い娘に簡単には勧められないしなぁ。
さて、どうしようか……こいつも、また俺とレイジーで処理しようか」
「私は別に、食べても良いけど……私とツグミで食べようか、護人叔父さん?」
結局はその2択で議論は紛糾、最終的に成長出来るのならと姫香が権利を勝ち取って。縁側の扉を開け放って、相棒のツグミを呼び寄せると。
2人で一緒に強くなるよと、絆を確認しながらの果実のパワー摂取。ツグミは何の
姫香も同じく、食べ切った後に甘くて美味しかったと感想まで語る余裕も。
「いいなぁ、お姉ちゃん……今度見付けたら、そしたら私の番だからねっ!」
「アンタは10年早いよ、それより残った鑑定の書はどうする、護人叔父さん? 久し振りに、誰がどのくらい成長したか見るのもいいかもね?」
それならと、護人は珍しく自分の鑑定をしてみたいと挙手する。どうも最後の戦いで、水中に引き摺り込まれた際の違和感が気になるらしいのだが。
ひょっとして、アレがHPを
もう1枚は、ついでに縁側に来ていたレイジーがハスキー軍団代表に。
【Name】来栖 護人/Age 37/Lv 07
体力 D+ 魔力 E
攻撃 D 防御 C
魔攻 E+ 魔防 D-
魔素 D- 幸運 E
【skill】《奥の手》『硬化』
【Name】稲葉 紗良/Age 18/Lv 04
体力 E+ 魔力 D
攻撃 F- 防御 F
魔攻 E+ 魔防 E+
魔素 E 幸運 D
【skill】『回復』『光紡』
【Name】レイジー/Age 5/Lv 08
体力 C+ 魔力 E-
攻撃 C 防御 D-
魔攻 D 魔防 E
魔素 D 幸運 E+
【skill】『魔炎』
「ううん、HPやMP関連の記載は全く無しか……レベルは順調に上がってるな、ステータスも前よりは良くなってるっぽいけど。
おかしいな、水中ではちっとも苦しくなかったから、ひょっとしてと思ったんだけど。協会の仁志さんにでも聞いてみようか、それとも明日にでも庭先で検証してみるかな?」
「あっ、それ面白い……一緒に実験しようよ、護人叔父さんっ! 後は苗を鉢に植え替えたりとか、やる事は色々ありそうだねっ。
明日は忙しくなりそう!」
「いいなぁ、私は学校があるのに……私が戻るまで、待っててよねお姉ちゃん!」
それは分からないと、意地悪を口にして妹をからかって遊ぶ姫香。まぁ、確かに明日は色々と雑用が立て込んでいる気配は感じるけれど。
『探査者支援協会』日馬桜町支部へと、報告と魔石を売りにも行かないと。そこで新しく獲得した、魔法の鞄の登録もしておいた方が良いだろうし。
畑の方もそろそろ、収穫物があるので怠る事は出来ないし。
去年の今と比較すれば、格段に雑多な行事は増えている気がする護人。それでもそれは嫌ではない、自分の目が行き届いて万事良好に事が進んでいる限りは。
どこかで破綻が出ないかが心配だが、今は紗良と姫香がフォロー役に日増しに成長を見せてくれている。それが全てだ、子供たちの成長を間近で見れる幸せが何より。
多忙で大変なんて、贅沢な悩み事である。
――まだまだ若い者には負けられないと、爺臭い事を思う護人だった。
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