第四話 〈ナインズ〉3

 ユミを探し始めて数時間ほど経った。が、未だに見つけられておらず、ぼくは途方に暮れていた。

 「はぁ、まったくどこへ行ったのやら」

 ただの木陰に座り、深呼吸をして空を見上げる。空はまるで真っ青な、綺麗な色をしているように見えるが、実際は違うことが今のぼくには見えてしまう。

 均等に区切られた透き通る青い空。ソレは確かな質量をもっており、まあ、わかりやすくするなら、水晶のようなものである。

 まったく、なんとも絶望的な状況だ。だって、ぼくらは簡単に言えば閉じ込められたわけなんだから。




 小休憩から再び捜索を開始する。が、ここは本で読んだジャングルのように広く複雑である。

 こんな所を何も情報もなく探し回るのはものすごく不効率である。ので、まずは同じく閉じ込められているであろう知的生命体を探すことにしよう。

 さて、今後の計画は決まったので、早速行動に移すとする。バックポーチから情報端末を取り出しアイちゃんに連絡を取る。

 『はいはい、呼ばれましたアイちゃんですよー』

 「今からぼくのいるところの座標を送るから、そこまで飛んできて」

 『りょーかいです』

 すると、ほんの数秒でぼくらの船はやってきた。

 『おまたせしましたー』

 「さっすがアイちゃん、はやいね」

 『そうでしょうそうでしょう。いいですから早く乗ってくださーい』

 「はいはい、わかりましたよー」

 空に留まっている船に向けて手持ちのワイヤーを飛ばす。それは入口のフックに上手く掛かり、そのタイミングで船は動き出した。

 ぼくの身体が宙に浮くそのタイミングで、ぼくもワイヤーを巻き上げ飛翔する。

 入口に辿り着いたぼくは、計画の実行のためにコントロールルームへと向かった。


 コントロールルームに到着し、計画を実行するため準備をする。

 目の前の情報端末をあれやこれやと弄りながら着々と準備を進める。

 ふと、使えそうなモノが目に映る。

 「アイちゃん。今から空からぼくら以外の知的生命体を探そうと思うんだけど、このセンサーって使えるの?」

 古き良き取説を見ながらアイちゃんに問う。

 『よゆーですが、なにか?』

 そう返答するアイちゃんはなんとも無機質めいていて、あたかも“当然出来ますが、なにか?てか、いちいちそんな当たり前のこときいてくんなよ”と言わんばかりの雰囲気を出していた。所詮雰囲気である。

 ······機械のくせに。

 「あらやだ、頼もしーわ」

 まあさておき、これでほぼ計画は実行可能。まあ後は見つけた時の対応だけ。そこはぼくの頑張り次第ってところかな。原住民(仮)といかに友好関係を築けるかが重要なこの計画において、ぼくの対応は最重要項目と言っても過言ではない。

 「じゃあ、ぼくはすぐ出られるようゲートにいるね。見つけた時の連絡よろしく」

 『あ、お待ちをお待ちを』

 「ん?どうしたの?アイちゃんから呼び止めるなんて珍しい」

 『念の為ですよ。いちおうアレ一式とは言いませんが、何かしらの武装はして行くべきではないかと······てか、そんなにワタシが呼び止めてはいけないんですか』

 「ふむ、それは確かに言われてみれば」

 実際、ぼくらは囚われの身であるし、何があるかわからないから準備は必要か。

 『ちょっと、聞いてますかぁ〜?あのぅ〜?ねぇ〜』

 この惑星の情報自体は理解しているが、それはあくまで外界から見ての情報。内側からの情報は未だ未知数、それならば──

 「じゃあ、Aの1をおねがい」

 『はぁ、結局無視ですか。ハイハイ、りょうかいです。ただいま持ってきますね』

 

 はいコチラとアイちゃんに武装を渡される。

 「ん、ありがと」

 『いえいえ。では気をつけてー』

 「いってきます」

 そうやってアイちゃんに見送られながら、ぼくは船を出た。

 知的生命体がいると推測される集落は落下地点から東の方角に存在する。距離は推定3km程度。それぐらいならば短期飛行ユニットでどうにかなる。

 自然の重力に身を任せながら、ユニットを起動させる。骨振動により起動完了のアナウンスを聞き、操作をマニュアルに切り替える。拡張現実により視覚可能のホログラム操作パネルでユニットを操作する。

 その速度はおよそ秒速75m。知的生命体がいるとされる集落に着くまでに40秒程度しかかからなかった。

 「なんですか、アレ······」

 着いたと同時に目に入ってきたのは、異形の怪物が逃げ惑う生物を食い荒らす光景だった。

 

 

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僕達の星空冒険記 巴奈々しろ @bananasiro

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